アイテム番号: SCP-977-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-977-JPはサイト-8188に存在する対現実改変設備を備えた専用収容室に収容されます。収容室内はカメラによって監視され、常に一般的な藁の縄とバランスボールを収容室内に設置してください。SCP-977-JP-1の呼びかけ以外でSCP-977-JPが自立的に行動を開始した場合、速やかに対現実改変設備を起動し、機動部隊によって鎮圧してください。また、実験目的でのSCP-977-JP-1を伴った起動はレベル3以上の職員3名の許可が必要となります。
SCP-977-JP-1はサイト-81██の託児施設にて保護してください。SCP-977-JP-1には朝、昼、夜に渡り3度、食事を配給されます。SCP-977-JP-1から要求されたものは、それが適切であると判断された限り与えて構いません。毎日、保育士の資格を持つ財団職員の手で発達過程に応じた保育を行ってください。SCP-977-JP-1はその経歴から感情の起伏が非常に小さいです。
説明: SCP-977-JPは全長1.0m、重さ2kgの置物です。金属用のペンキにより、全身に一般的なピエロの装飾が施されています。しかしながら一部の装飾は風化と腐食により剥がれ落ちており、主成分がブリキで構成された表面が露出しています。この表面のブリキで構成された金属のサンプルの採取は、SCP-977-JPが現実改変能力を有しているために成功していません。また、腹部には20目盛りのメーターが存在しており、収容当時、そのメーターは10目盛りの箇所まで黄色に発光していました。SCP-977-JPはネグレクトの通報を受けた児童相談所職員に扮したエージェントがSCP-977-JP-1の居住しているマンションに到着した際、地上50m以上と見られる屋上から落下したにも関わらず、全く破壊されていないSCP-977-JPを不審に思い、財団に報告した事でSCP-977-JP-1と共に収容に至りました。
SCP-977-JPは通常不活性状態であり、SCP-977-JP-1からの呼びかけにのみ反応を示し、起動します。起動したSCP-977-JPはその場にある道具や建造物を利用して、綱渡り等サーカスで行われるような曲芸を開始しようとします。この時、SCP-977-JPの周辺に曲芸を開始するのに適当な道具や建造物が存在しない場合、SCP-977-JPは不活性状態に戻ります。
曲芸に適当な道具や建造物が存在する場合、SCP-977-JPはそれらを利用して曲芸を開始します。しかし、どのような曲芸を行ったとしてもSCP-977-JPは必ず「失敗」し自身に損傷を負います。実験記録977-JP-Gを受け、現在調査中です。その後、SCP-977-JPは損傷個所に対して現実改変を行い、損傷を完全に回復します。この改変は曲芸の失敗以外での損傷に関しても行われ、あらゆる破壊行動に対して耐性を持っていると推測されます。また、腹部のメーターはSCP-977-JP-1の感情の振れ幅によって大きく変動すると推測されています。詳しくは実験記録SCP-977-JP-Aを参照にしてください。
SCP-977-JP-1は5歳の一般的な男性です。SCP-977-JP-1はSCP-977-JPを起動する事のできる唯一の人材のため、財団に保護されています。SCP-977-JP-1は██県の███市にて、マンションの屋上から飛び降りたSCP-977-JPを回収するために外に出たところを事情を聴くために確保されました。SCP-977-JP-1の親族にはカバーストーリー「未解決誘拐事件」が頒布されました。
付記: 200█/██/██、SCP-977-JPの腹部のメーターが0を示している所を職員が発見しました。その後、当該オブジェクトはSCP-977-JP-1の呼びかけで起動する事が不可能となり、現実改変能力も失われたため、200█/█/██に正式にNeutralizedアイテムとして登録されました。それによりSCP-977-JP-1を収容する意義は失われたとされ、尚且つSCP-977-JP-1の親族の家庭環境の改善が確認されたため、SCP-977-JP-1は記憶処理の後に、親族の元へと戻されました。
実験記録977-JP-A - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JP付近に藁の縄を用意した状態で起動する。
結果: 起動したSCP-977-JPはその藁の縄の両端を収容室内の四隅に存在する柱にくくりつけ、その上に登り綱渡りを始めた。しばらく縄の上を進んだ後、突如バランスを崩し転落。右腕に相当する箇所が破壊された事が確認されたが、二秒後に損傷は消失した。腹部のメーターが1目盛り低下した。
分析: SCP-977-JPは起動時に、付近に適した道具があれば曲芸を開始する事がわかった。更にSCP-977-JPは何らかの方法で損傷を回復しており、現在の状態を維持している。なお、この後同様の実験を三度ほど行ったが、三度とも綱渡りを試み、全て失敗に終わっている。結果として腹部のメーターが合計で3目盛り低下した。現在の所、腹部のメーターの増減理由は不明。
実験記録977-JP-B - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JP付近に何も置かない状態で起動する。
結果: 起動後、辺りを見回すような仕草を行い、十秒後に不活性状態となった。腹部のメーターは変化しなかった。
分析: SCP-977-JPは起動時に、付近に適した道具がなければ曲芸を行う事なく不活性状態に戻るようだ。
実験記録977-JP-C - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JPが不活性状態の時に、表面の金属を削り取る。
結果: SCP-977-JPの表面は二秒後に損傷を回復し、削り取った金属はその場から消失した。腹部のメーターは変化しなかった。
分析: この結果よりSCP-977-JPは何らかの改変能力、或いは自己回復能力を有している事が推測され、後に同様の実験をカント計測機を用いて行った所、現実改変能力を有している事がわかったため、収容プロトコルの変更が行われた。
実験記録977-JP-D - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JPの付近に一般的なバランスボールを設置して起動する。
結果: 起動したSCP-977-JPはバランスボールの上に乗り、玉乗りを始めた。しかし、すぐにバランスを崩し転倒。左腕付近を負傷した。しかしその後、SCP-977-JPは不活性状態になる事はなく、起き上がり、SCP-977-JP-1に向けて一度お辞儀のような動作を行った後、不活性状態となった。腹部のメーターの目盛りが1上昇した。
分析: SCP-977-JPが何故そのような動作を行ったのかは分かっていないが、もしSCP-977-JPが自我を持ち始めているのだとしたら、非常に危険な事であり、今後の実験に関しても注意が必要である。
実験記録977-JP-E - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JPの付近にリンゴ、オレンジ、バナナ等の果物を設置して実験を開始する。収容室内では数人の鎮圧部隊による監視が行われる。
結果: 起動したSCP-977-JPはリンゴ、オレンジ、バナナを手に取り、しばらく静止した後、その果物でジャグリングを始めた。ジャグリングをしている最中は常にSCP-977-JP-1の方向を向いており、数秒後にリンゴ、オレンジ、バナナの順で果物を高く放り投げ、全てを自らの頭部に命中させ倒れた。暫くしてSCP-977-JPは起き上がり、SCP-977-JP-1の方向にお辞儀のような動作を見せた後、不活性状態となった。腹部のメーターの目盛りが2上昇した。
分析: 今回の「失敗」はとても故意的なものに見える。そのため、SCP-977-JPは自我を持っている事が推測されるが、我々に対して敵意を向けるといった様子は見えないため、収容を続ける。なお、SCP-977-JP-1は当該オブジェクトの挙動に笑ったような表情を浮かべていた事が確認されている事から、SCP-977-JPの腹部のメーターはSCP-977-JP-1の感情によって変動するものと推測される。
実験記録977-JP-F - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JPの付近に一輪車と藁の縄を設置して実験を開始する。収容室内では数人の鎮圧部隊による監視が行われる。
結果: 起動したSCP-977-JPは藁の縄と一輪車とを見比べるように認識し、藁の縄の両端を収容室の四隅に存在する柱にくくりつけ、その上で一輪車に乗った。その後、一輪車に乗った状態で数メートルジャンプし、藁の縄の上に着地した。当該オブジェクトは暫く縄の上で静止していたが、20秒後に前進を開始。2m程進んだ所でバランスを崩し地面に落下した。10秒後にSCP-977-JPは起き上がり、SCP-977-JP-1に対してお辞儀をして不活性状態となった。
分析: 今回の「失敗」も故意的なものに見える。今回の結果にSCP-977-JP-1は不満と訴えており、SCP-977-JPの腹部のメーターは2目盛り減少していた事から、SCP-977-JP-1の感情によってメーターが変動する事は間違いないだろう。
実験記録977-JP-G - 日付200█/██/██
対象: SCP-977-JP
実施方法: SCP-977-JPの収容室内に階段のある高台と空中ブランコ一対を設置した上で実験を開始する。収容室内では数人の鎮圧部隊による監視が行われる。
結果: 起動したSCP-977-JPは高台と空中ブランコを見渡すと、高台に登り空中ブランコを掴み曲芸を開始した。片方の空中ブランコからもう片方の空中ブランコに飛び移る、背を向けたまま一回転して飛び移るなどの曲芸を成功させ、高台に着地すると、SCP-977-JP-1に向けてお辞儀を行い不活性状態となった。
分析: SCP-977-JPは今回初めて「成功」と呼ぶ事のできる結果を出した。その結果、SCP-977-JP-1は笑顔を浮かべ、当該オブジェクトの腹部のメーターが2目盛り上昇していた。
補遺1: 200█/██/██、SCP-977-JPの腹部のメーターが実験を行っていないにも関わらず、1目盛り減少している事が確認されました。このメーターが現在何を表しているのか、このメーターが0となった時に何が発生するのかは調査中のため、メーターを上昇させる試みとして実験回数の増加が進言されています。
補遺2: SCP-977-JPの無力化後、保育士に扮していたエージェント██の通報により、記憶処理を施したにも関わらず、SCP-977-JP-1が当該オブジェクトを記憶している可能性があるとして、SCP-977-JP-1にインタビューを行いました。その後、より強力な記憶処理を施しましたがSCP-977-JP-1の記憶に変化は見られませんでした。
対象: SCP-977-JP-1(本名████)
インタビュアー: エージェント███
付記: このインタビューではSCP-977-JP-1は既に収容を解除した一般人であり、当該オブジェクトの記憶を刺激しないように識別番号ではなく本名で呼称しています。
日付: 200█/██/██
<録音開始>
エージェント███: ██ちゃん、先生に、この前お話してくれた事、もう一回聞かせてくれる?
SCP-977-JP-1: うん。いいよ。先生ってわすれんぼだね。
エージェント███: あはは。ごめんね。
SCP-977-JP-1: あのね。おれ、サーカスの人になりたいんだ。
エージェント███: ……どうして?
SCP-977-JP-1: パパとママが忙しかった時、いつも、"ともだち"が玉乗りとかしてて、あと、ええと、縄の上を歩いたりもしてて。
エージェント███: 落ちついて。ゆっくり話してくれれば大丈夫だから。
SCP-977-JP-1: えっと……おれ、小さい頃、一度だけ、パパとママと一緒にお出かけした事があって。そのときに、サーカスを見たんだ。そのサーカスと、そっくりな事を、"ともだち"はやってて。
エージェント███: ……いつも失敗してた?
SCP-977-JP-1: うん。だめなやつだな、って思ってた。なんも話さないし。けれど、本当は凄く嬉しかった。
エージェント███: だから貴方はサーカスの人になりたいの?
SCP-977-JP-1: うん!だってあいつ、本当は凄いんだよ!見たんだ!練習してるとこ!
エージェント███: 練習?
SCP-977-JP-1: いつかは覚えてないけれど、あいつ、一人でボールに乗って練習してて。
エージェント███: ……自律的に活動する事もできたのね……
SCP-977-JP-1: その時あいつ、ちゃんとボールにも乗れてて。その上で逆立ちとかもしてて、どうして失敗ばかりしてるんだろうって思った。
エージェント███: そう……ありがとう。話してくれて。
SCP-977-JP-1: あのね、明日、おれ、またパパとママと一緒にサーカスに行くんだ!そこで、サーカス見て……いっぱい、勉強して……
[インタビュー終了]
終了報告書: この後、SCP-977-JP-1に記憶処理を行い、再び同様のインタビューを行いましたが、内容等に変化は見られなかったため、当該オブジェクトの記憶を完全に消去する事は不可能であると推測されます。
補遺3: 無力化後の当該オブジェクトの管理、及び調査を行っていた██管理員によって、当該オブジェクトの腹部が開き、内部に以下の文章が掘られている事が確認されました。収容時の定期調査では、腹部の開閉の有無は確認されていませんでした。以下がその文章となります。
お元気ですか? こちらでは厳しい寒さが続いています。
そんな場所でも、私達は笑顔です。貴方も笑顔ですか?
そちらにいつも私たちを笑顔にしてくれる彼を送りました。笑顔になってくれるといいな。
笑う事のできない、そんな人生はきっとつまらないでしょう。
どうか貴方も誰かを笑顔にできる人になってください。
酩酊街より 愛を込めて
ページリビジョン: 6, 最終更新日時: 21 Mar 2018, 13:58 (327 days 前)