僕は核内タンパク質,特にDNAに結合タンパク質を集中的にやってきた.(専門的ではなく,集中的)
個人的には酵素は面白い.結合タンパク質だと,認識形態だけで終わってしまうので,それはそれで面白い部分はあるけれども,先が見えているので,基質認識,化学反応のステップのある酵素の方がやりがいがある.
mutationを入れて結合した,結合しなかったというものから,酵素だと基質特異性が変わったとか,阻害剤もいろいろあるので,いろいろ遊べる.基本はbiochemistryでその理解を助けるためにstructureがあるので,APO structureというのは全く興味がない.
例えば2003年にjbcに発表されたものはAPOのものだけれども,そこにsubstrateを入れたら(2012年なので10年かかった計算になる,10年放置されていた方が正しい表現)いろいろメカニズムがわかって面白い.2002年当時,DNAとの複合体結晶を作ろうと思ったけどできなかった形跡があった.
ちなみにチミンをsoakingした形跡があったけれども,根本的にbase, dTMPのsoakingで結果が得られても,絶対的なことが言えないで疑問が常に残る.しっかりDNAを結晶の中に入れないといけない.
それを色々実験ノートをみて,僕が適当に思いついたことをやったら1ヶ月で最初の結晶構造解析が終わった.それから色々改造をしていたので全てのデータが揃ったのは,6ヶ月後.レイジーなのでそれぐらい時間がかかってしまう.ま,10年掛かったことを考えれば,速いものだと思う...違う?
この結晶化のストーリーはどこかに書いてあると思うので省略.


これはいろいろ曰くありげだった5mCの脱メチル化シトシンをMBD4が塩基除去するという説を完全に否定してしまったもの.実際MBD4-/-のノックアウトマウスのフェのタイプのなさで業界は絶望したと思ったけれども,AID/MBD4のDKOや色々努力があった中で,衝撃的だったのは分生研の加藤茂明グループの2009年のNature論文.in vitroでMBD4の5mC Base excision 活性が再確認された.もちろん僕も再現性をチェック.全くそれっぽいものも出ない.全長も発現させて,精製させて,彼らの言う通りPKCで処理とかも...させられた.
こんな結果↓が出るとは絶対にありえないということ.ちなみにこの図は捏造認定されていないけれども,出るわけがない結果がだされている.結晶の結果が出る前はPKCを処理したわ...本当に時間とお金の無駄だった.あんなのは理論的におかしいと主張したけれども,とりあえずやれ.と言われてやらざるをえなかった.しつこく言われたので.
ちなみに,結果を言えば(見せればではなく,言う),一瞬で納得.当然だわな.
ど真ん中でやっている人間が,thymineの化学構造が頭に入っていないと終わっている.見せてもらわないと理解できないというのは失望する.
ちなみに僕がこの論文を目にしたのは2011年の5月ごろで,ちょうどプロジェクトを始める前.2009年の秋にon-lineになっているけれども,その当時はそれどころではなかったので,
いつも論文はそんな感じで軽く目を通すだけ.
僕は基本的にはコンペをしたくない.目的が変わってしまうので.先にやりたい人はやればいいと思う.流行を追うのがいかに意味がないかということ.テキサスのどこかのグループはMBD4をやると標榜していて結局僕が先にやってしまっていたりする.おそらく僕の論文を全て読んでくれているらしい白川グループもやっていたと思う.勝負は時の運だから仕方がない.
この後の捏造論文として撤回された論文を見つけてすぐさまXing先生と本当にこんなのはありうるのか?とdiscussionした.ラボ内の政治情勢から,Xing先生を味方につけておいた方が便利なので.

分生研のKグループが麻痺っていたのだと思うのだけれども,
なぜ理論的にこんな結果が出るはずがないのか?(ちなみに僕はこれをやる前におかしいと感じた.バイオケミストの勘みたいなもの.)
この捏造論文がnature論文であるゆえのキーワードは
『酵素ドメインとは異なるところにみつけたPKCサイトがリン酸化することで活性が上昇する.』
nature editorialだけではなく,研究者だと驚きがここに2つあるので,本当としたらnatureは確実になるセンテンス.他の部分は煌びやかな飾りにすぎない.
飛行石の前には全ての宝石の輝きは霞んで見える.
他のものは現象論.現象論ではなく原理こそ揺るぎない一般性を持たせる鍵.そこがいっちゃっているけれども,.
refereeも疑っていた形跡があって,TDGでは5mCが切れないことを敢えて確認させている.
これは基質が何かの理由によって問題があったということを否定させる実験なので,それがない2000年の論文とは違い,言い逃れが出来ない.2000年のNARのChicken MBD4の論文は基質の合成に問題があった可能性が否定できないもの.なぜあれが切れるのかもわからない.
ーーーど真ん中にいたバイオケミストとしてーーー
僕は基本的に論文を読まないので(論文は書くもので,読むものではないというのがあるので)原稿を書く前にいろいろ読むのだけれども,この2000年のNARの論文が彼らの中で亡霊としてあったのだろう.もちろん僕にも引きずられそうになった部分はある.
これがあったからこそ,MBD4が5mCを塩基除去するというのが再現されなければならなかったのだろう.sequence alignmentをみても重要なところは保存されているし,watson-click edgeを認識するGlnもばっちり,base flipperのArgも完璧に保存されている.
2000年のNARの論文を好意的にフォローするならば,当時5mCの合成に問題があったと思いたい.
この論文はやっている人の中で,再現性が取れない論文として扱われていたのだと思う.
Kグループが実際にこの実験を追試して出来たのか?出来なかったのか?わからないけれども,上から圧力があったのかもしれない.何をしているのかさっぱりわからないから意味がないことだけれども.
ただ,原稿を書く上で,過去にこのような論文があれば,5mCを切断するというのは魅力的な仮説である.ただ,追試をやって出来なかったら,それで終わりの話.G:Tミスマッチで見えて,5mC:Gペアで見えなかったらそれは実験はうまくいっているので,1回で話がつくこと.
さらにPKCがとかいうのは,2000年のNARの論文の範囲外だけれども,原理の説明として,MBD4が5mCを切断するだけではnatureには載らなかっただろう.
分生研の現場がどうなっていたのか知る余地もないけれども,
もし,現場がMBD4のG:T活性を見ていて,5mC:Gの活性を見ることが出来なければ,それで終わりの話.そこを捻じ曲げた上司の責任は大きい.サイエンティストとして問題がある.
ーーー
一方でnatureクラスの論文で出るはずもない結果が出てくることは,自分がreviewしたものでもあって,それが出てくれば通さざるをえない.
彼らのグループでnatureの好きそうなセンテンスを知り尽くしているところは
酵素ドメインとは関係ないところで活性が制御されているという新規性,しかもリン酸化.
もうひとつは活性が上昇する.基本活性を上げることは難しい.
という2段構えなところ.こういうのは絶対に必要なダブルパンチ.1つではダメだな.
これがなぜガセと感じたのか?結晶を得る前にすでに眉唾だった.
だから,直前に書いたencyclopediaのbook chapterには引用していない.
1つめ.リン酸化による制御.これはDNAに結合する酵素なので,リン酸化することと,DNAのリン酸との間で電荷が共にネガティブチャージされている.
よくあるDNA結合タンパク質でリン酸化されるとDNAと結合しなくなるというのと同じで,こんなのが結合するはずがないというもの.
ただ,これはturn overしない酵素なので,反応後.リン酸化することでproduct DNAがdissociationして,そのdissociationがreactionの後に必要というのであれば納得できたけれども,はじめにリン酸化させた酵素をブッコムと活性が上がるというのは理論的にありえない.リン酸化されていることを確認しているわけだからな.(もちろん全部本当としてもということで
これがユビキチン化,SUMO化であったら,軽く見逃していたかもしれない.
僕のやっているところ,直球ど真ん中のボールは見逃すはずがない.
しかもドメインの外のリン酸化でG:T mismatchの活性には影響がなく,5mCに特異的に酵素活性が上昇する.G:T mismatchも活性があがっていれば,overallの活性が上昇したと言えるけれども,5mCのみ上昇するというのは説明できない.しかもfully methylatedとhemi-methylated DNAとで比べると活性は同じように見える.基質DNAは片鎖のみにP32で標識しているのでFull methylだと確率的にhemi-methylの半分になるはずだけれども,活性は同じように見える.
こんなのは優秀なバイオケミスト,しかもターゲットが完全に被っている訳で,おかしいと気がつくのは当然の話.
もし,彼らがちゃんとしたbiochemistryの集団であって深い理解があるならば,騙されていただろうけれども,結晶構造が出たら,終わりになる.
ちなみにここまで深くjournal clubですることは出来ない.だからこそ,表面的に文字面,図を追うだけのjournal clubはあまり意味がない.1つのFigをやり始めたら1時間とかで終わらない.こういうディスカッションは常にXing先生とやっていた.
基本的に僕が論文に目を通すのは時間的に遅いので,Did you read this paper? What do you think?ということで午前中2時間費やすとか良くしていた.
これにつづくPKCによる酵素活性が上がるシリーズがあって,PHF2のK9me3の脱メチル化活性がこれまたPHF2のjumonji domainから遠く離れたこんどはPKAサイトによって制御されているというものがあった.
これを最初に発見したのは論文が出るだいぶ前にネットで特許の資料(日本語)で発見した.
直前にPHF8, KIAA1718をラボでやっていたので(2009-2010),そのファミリーのPHF2もやっていたのだけれども,K9me3, me2, me1の活性を色々な条件で調べていたけど活性は見られなかった.が,これもリン酸化されると活性が出るというのがあったので,やったけれども...ARID5Bも基質になるとか書いてあったけれども(ペプタイドは高いのでやらなかった.$5000とかするので)...結局我々の方が構造をjmbに彼らより早く,PHD domainにはK4がついて,K9の脱メチル化活性がないことを出しているので,彼らはdomainで活性がないことを言っている.こんな歯切れの悪いものでは通常NCBに通るわけがないが通ってしまっている.この論文は捏造認定されていないけれども,要注意の論文である.残念ながら彼らの名前のあるの全ての論文は信用できない.
biochemistから見れば,誰が考えたのか知らないけれども,仮定は面白いけれども,よく考えなくても,無理がある.麻痺っているとしか言いようがない.
ちなみに僕の原稿も一度natureに投稿しているので,Alexは2011年12月の段階で知っている.
11月の頭に一旦コリゲが出て(サプリメントが読めたり読めなかったりした時があった),ちょうど僕の論文が出る1週間前にリトラクトされている.エディターは情報交換をしているからな.
構造があれば基質がわかるというものではないので,そのあたりのパワーが不足している.それは基質が構造の中にないためで,基質の有無は重要なファクターになる.
個人的にはSTAPよりもこっちの方が重要な問題であった.
こういう原理を追求した仕事はもっと評価されていいと思う.Kグループ関係なしに.
ま,Kグループはどっちでもいいことだけれども,このMBD4の仕事は全てが美しかった.
美しいものに触れるのは心地いい.最後のパズルのピースが綺麗にハマる感じ.
ちなみにMBD4はAsnを用いてGlycosidic bond(N1-C1')を切断する.pH依存性があって7以下は活性が下がる.完全不活性型mutantはAsn-to-Asp.一方同じglycosylaseのthymine dna glycosylaseではAspを用いている.これもpH依存性があってlower pHで活性が上がる.2つのグリコシラーゼは似ていても全く違うメカニズムでglycosidic bondを切断する.
すごい面白いと思った.
ーーーーーーーーーー
ちなみに,金さんが出てきていたので,彼女が,捏造防止セミナーか何かで言っていた
n(試行回数)をどれぐらいにすればいいのか?
n=4でダメならn=6だなとか,そんな感じのことが書かれていた.
これは全く正統な教育を受けていないことを表している.
「統計というのは,まず仮定があって,それを否定することで,有意差を検討すること」
結果があやふやだからnを増やそう!おー!
って人がほとんどだと思うけれども,これはやったらダメなこと.
サンプル数を検討して,この条件ではどれぐらいの差が出れば,有意差がある,それ以下であれば,有意差がないと決めてから行うもの.
IP-westernなら100回やって100回うまくいかなければならない.
彼らが普段からコントロールをおいて実験していないのが良くわかる.
controlをおいていれば,実験自体が動いているか動いていないかわかる.
実験が動いている中で,結果がどうだったか?評価すればいいだけの話.
実際Kグループの学生は不幸だと思うよ...金さんも被害者だとは思うけれども同情はできないな.
彼らは,仕事についたり,賞をもらったりしているからな.
(僕は賞とは全く無縁の人生だったな.別にいらんけど.自分でノミネートするのも面倒じゃない?)
結果を見て,nを増やして,なんとか無理やりp<0.05を出そうとするというのは,結果の操作で山川氏のチョコレート事件と本質的には変わらないです.
個人的には酵素は面白い.結合タンパク質だと,認識形態だけで終わってしまうので,それはそれで面白い部分はあるけれども,先が見えているので,基質認識,化学反応のステップのある酵素の方がやりがいがある.
mutationを入れて結合した,結合しなかったというものから,酵素だと基質特異性が変わったとか,阻害剤もいろいろあるので,いろいろ遊べる.基本はbiochemistryでその理解を助けるためにstructureがあるので,APO structureというのは全く興味がない.
例えば2003年にjbcに発表されたものはAPOのものだけれども,そこにsubstrateを入れたら(2012年なので10年かかった計算になる,10年放置されていた方が正しい表現)いろいろメカニズムがわかって面白い.2002年当時,DNAとの複合体結晶を作ろうと思ったけどできなかった形跡があった.
ちなみにチミンをsoakingした形跡があったけれども,根本的にbase, dTMPのsoakingで結果が得られても,絶対的なことが言えないで疑問が常に残る.しっかりDNAを結晶の中に入れないといけない.
それを色々実験ノートをみて,僕が適当に思いついたことをやったら1ヶ月で最初の結晶構造解析が終わった.それから色々改造をしていたので全てのデータが揃ったのは,6ヶ月後.レイジーなのでそれぐらい時間がかかってしまう.ま,10年掛かったことを考えれば,速いものだと思う...違う?
この結晶化のストーリーはどこかに書いてあると思うので省略.
これはいろいろ曰くありげだった5mCの脱メチル化シトシンをMBD4が塩基除去するという説を完全に否定してしまったもの.実際MBD4-/-のノックアウトマウスのフェのタイプのなさで業界は絶望したと思ったけれども,AID/MBD4のDKOや色々努力があった中で,衝撃的だったのは分生研の加藤茂明グループの2009年のNature論文.in vitroでMBD4の5mC Base excision 活性が再確認された.もちろん僕も再現性をチェック.全くそれっぽいものも出ない.全長も発現させて,精製させて,彼らの言う通りPKCで処理とかも...させられた.
こんな結果↓が出るとは絶対にありえないということ.ちなみにこの図は捏造認定されていないけれども,出るわけがない結果がだされている.結晶の結果が出る前はPKCを処理したわ...本当に時間とお金の無駄だった.あんなのは理論的におかしいと主張したけれども,とりあえずやれ.と言われてやらざるをえなかった.しつこく言われたので.
ちなみに,結果を言えば(見せればではなく,言う),一瞬で納得.当然だわな.
ど真ん中でやっている人間が,thymineの化学構造が頭に入っていないと終わっている.見せてもらわないと理解できないというのは失望する.
ちなみに僕がこの論文を目にしたのは2011年の5月ごろで,ちょうどプロジェクトを始める前.2009年の秋にon-lineになっているけれども,その当時はそれどころではなかったので,
いつも論文はそんな感じで軽く目を通すだけ.
僕は基本的にはコンペをしたくない.目的が変わってしまうので.先にやりたい人はやればいいと思う.流行を追うのがいかに意味がないかということ.テキサスのどこかのグループはMBD4をやると標榜していて結局僕が先にやってしまっていたりする.おそらく僕の論文を全て読んでくれているらしい白川グループもやっていたと思う.勝負は時の運だから仕方がない.
この後の捏造論文として撤回された論文を見つけてすぐさまXing先生と本当にこんなのはありうるのか?とdiscussionした.ラボ内の政治情勢から,Xing先生を味方につけておいた方が便利なので.
分生研のKグループが麻痺っていたのだと思うのだけれども,
なぜ理論的にこんな結果が出るはずがないのか?(ちなみに僕はこれをやる前におかしいと感じた.バイオケミストの勘みたいなもの.)
この捏造論文がnature論文であるゆえのキーワードは
『酵素ドメインとは異なるところにみつけたPKCサイトがリン酸化することで活性が上昇する.』
nature editorialだけではなく,研究者だと驚きがここに2つあるので,本当としたらnatureは確実になるセンテンス.他の部分は煌びやかな飾りにすぎない.
飛行石の前には全ての宝石の輝きは霞んで見える.
他のものは現象論.現象論ではなく原理こそ揺るぎない一般性を持たせる鍵.そこがいっちゃっているけれども,.
refereeも疑っていた形跡があって,TDGでは5mCが切れないことを敢えて確認させている.
これは基質が何かの理由によって問題があったということを否定させる実験なので,それがない2000年の論文とは違い,言い逃れが出来ない.2000年のNARのChicken MBD4の論文は基質の合成に問題があった可能性が否定できないもの.なぜあれが切れるのかもわからない.
ーーーど真ん中にいたバイオケミストとしてーーー
僕は基本的に論文を読まないので(論文は書くもので,読むものではないというのがあるので)原稿を書く前にいろいろ読むのだけれども,この2000年のNARの論文が彼らの中で亡霊としてあったのだろう.もちろん僕にも引きずられそうになった部分はある.
これがあったからこそ,MBD4が5mCを塩基除去するというのが再現されなければならなかったのだろう.sequence alignmentをみても重要なところは保存されているし,watson-click edgeを認識するGlnもばっちり,base flipperのArgも完璧に保存されている.
2000年のNARの論文を好意的にフォローするならば,当時5mCの合成に問題があったと思いたい.
この論文はやっている人の中で,再現性が取れない論文として扱われていたのだと思う.
Kグループが実際にこの実験を追試して出来たのか?出来なかったのか?わからないけれども,上から圧力があったのかもしれない.何をしているのかさっぱりわからないから意味がないことだけれども.
ただ,原稿を書く上で,過去にこのような論文があれば,5mCを切断するというのは魅力的な仮説である.ただ,追試をやって出来なかったら,それで終わりの話.G:Tミスマッチで見えて,5mC:Gペアで見えなかったらそれは実験はうまくいっているので,1回で話がつくこと.
さらにPKCがとかいうのは,2000年のNARの論文の範囲外だけれども,原理の説明として,MBD4が5mCを切断するだけではnatureには載らなかっただろう.
分生研の現場がどうなっていたのか知る余地もないけれども,
もし,現場がMBD4のG:T活性を見ていて,5mC:Gの活性を見ることが出来なければ,それで終わりの話.そこを捻じ曲げた上司の責任は大きい.サイエンティストとして問題がある.
ーーー
一方でnatureクラスの論文で出るはずもない結果が出てくることは,自分がreviewしたものでもあって,それが出てくれば通さざるをえない.
彼らのグループでnatureの好きそうなセンテンスを知り尽くしているところは
酵素ドメインとは関係ないところで活性が制御されているという新規性,しかもリン酸化.
もうひとつは活性が上昇する.基本活性を上げることは難しい.
という2段構えなところ.こういうのは絶対に必要なダブルパンチ.1つではダメだな.
これがなぜガセと感じたのか?結晶を得る前にすでに眉唾だった.
だから,直前に書いたencyclopediaのbook chapterには引用していない.
1つめ.リン酸化による制御.これはDNAに結合する酵素なので,リン酸化することと,DNAのリン酸との間で電荷が共にネガティブチャージされている.
よくあるDNA結合タンパク質でリン酸化されるとDNAと結合しなくなるというのと同じで,こんなのが結合するはずがないというもの.
ただ,これはturn overしない酵素なので,反応後.リン酸化することでproduct DNAがdissociationして,そのdissociationがreactionの後に必要というのであれば納得できたけれども,はじめにリン酸化させた酵素をブッコムと活性が上がるというのは理論的にありえない.リン酸化されていることを確認しているわけだからな.(もちろん全部本当としてもということで
これがユビキチン化,SUMO化であったら,軽く見逃していたかもしれない.
僕のやっているところ,直球ど真ん中のボールは見逃すはずがない.
しかもドメインの外のリン酸化でG:T mismatchの活性には影響がなく,5mCに特異的に酵素活性が上昇する.G:T mismatchも活性があがっていれば,overallの活性が上昇したと言えるけれども,5mCのみ上昇するというのは説明できない.しかもfully methylatedとhemi-methylated DNAとで比べると活性は同じように見える.基質DNAは片鎖のみにP32で標識しているのでFull methylだと確率的にhemi-methylの半分になるはずだけれども,活性は同じように見える.
こんなのは優秀なバイオケミスト,しかもターゲットが完全に被っている訳で,おかしいと気がつくのは当然の話.
もし,彼らがちゃんとしたbiochemistryの集団であって深い理解があるならば,騙されていただろうけれども,結晶構造が出たら,終わりになる.
ちなみにここまで深くjournal clubですることは出来ない.だからこそ,表面的に文字面,図を追うだけのjournal clubはあまり意味がない.1つのFigをやり始めたら1時間とかで終わらない.こういうディスカッションは常にXing先生とやっていた.
基本的に僕が論文に目を通すのは時間的に遅いので,Did you read this paper? What do you think?ということで午前中2時間費やすとか良くしていた.
これにつづくPKCによる酵素活性が上がるシリーズがあって,PHF2のK9me3の脱メチル化活性がこれまたPHF2のjumonji domainから遠く離れたこんどはPKAサイトによって制御されているというものがあった.
これを最初に発見したのは論文が出るだいぶ前にネットで特許の資料(日本語)で発見した.
直前にPHF8, KIAA1718をラボでやっていたので(2009-2010),そのファミリーのPHF2もやっていたのだけれども,K9me3, me2, me1の活性を色々な条件で調べていたけど活性は見られなかった.が,これもリン酸化されると活性が出るというのがあったので,やったけれども...ARID5Bも基質になるとか書いてあったけれども(ペプタイドは高いのでやらなかった.$5000とかするので)...結局我々の方が構造をjmbに彼らより早く,PHD domainにはK4がついて,K9の脱メチル化活性がないことを出しているので,彼らはdomainで活性がないことを言っている.こんな歯切れの悪いものでは通常NCBに通るわけがないが通ってしまっている.この論文は捏造認定されていないけれども,要注意の論文である.残念ながら彼らの名前のあるの全ての論文は信用できない.
biochemistから見れば,誰が考えたのか知らないけれども,仮定は面白いけれども,よく考えなくても,無理がある.麻痺っているとしか言いようがない.
ちなみに僕の原稿も一度natureに投稿しているので,Alexは2011年12月の段階で知っている.
11月の頭に一旦コリゲが出て(サプリメントが読めたり読めなかったりした時があった),ちょうど僕の論文が出る1週間前にリトラクトされている.エディターは情報交換をしているからな.
構造があれば基質がわかるというものではないので,そのあたりのパワーが不足している.それは基質が構造の中にないためで,基質の有無は重要なファクターになる.
個人的にはSTAPよりもこっちの方が重要な問題であった.
こういう原理を追求した仕事はもっと評価されていいと思う.Kグループ関係なしに.
ま,Kグループはどっちでもいいことだけれども,このMBD4の仕事は全てが美しかった.
美しいものに触れるのは心地いい.最後のパズルのピースが綺麗にハマる感じ.
ちなみにMBD4はAsnを用いてGlycosidic bond(N1-C1')を切断する.pH依存性があって7以下は活性が下がる.完全不活性型mutantはAsn-to-Asp.一方同じglycosylaseのthymine dna glycosylaseではAspを用いている.これもpH依存性があってlower pHで活性が上がる.2つのグリコシラーゼは似ていても全く違うメカニズムでglycosidic bondを切断する.
すごい面白いと思った.
ーーーーーーーーーー
ちなみに,金さんが出てきていたので,彼女が,捏造防止セミナーか何かで言っていた
n(試行回数)をどれぐらいにすればいいのか?
n=4でダメならn=6だなとか,そんな感じのことが書かれていた.
これは全く正統な教育を受けていないことを表している.
「統計というのは,まず仮定があって,それを否定することで,有意差を検討すること」
結果があやふやだからnを増やそう!おー!
って人がほとんどだと思うけれども,これはやったらダメなこと.
サンプル数を検討して,この条件ではどれぐらいの差が出れば,有意差がある,それ以下であれば,有意差がないと決めてから行うもの.
IP-westernなら100回やって100回うまくいかなければならない.
彼らが普段からコントロールをおいて実験していないのが良くわかる.
controlをおいていれば,実験自体が動いているか動いていないかわかる.
実験が動いている中で,結果がどうだったか?評価すればいいだけの話.
実際Kグループの学生は不幸だと思うよ...金さんも被害者だとは思うけれども同情はできないな.
彼らは,仕事についたり,賞をもらったりしているからな.
(僕は賞とは全く無縁の人生だったな.別にいらんけど.自分でノミネートするのも面倒じゃない?)
結果を見て,nを増やして,なんとか無理やりp<0.05を出そうとするというのは,結果の操作で山川氏のチョコレート事件と本質的には変わらないです.
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