その1:ニシチモからヒガチモへ

 
 インドネシアの首都・ジャカルタから、ティモール島への直行便はありません。
バリ島のデンパサールから、西ティモールのクパンと、東ティモールのディリに飛行機が飛んでいます。とはいえ、それぞれ週に何便かしかありません。
 もとからインドネシア領だった西ティモールの様子も比べて見たかったので、クパンから陸路でヒガモ入りすることにしました。

 島民にカモにされまくりの日本人観光客と、オールナイトでバカ騒ぎを続けるオーストラリア人観光客であふれた、いかがわしい喧騒の街・デンパサールから約2時間。ニシチモの州都・クパンはのどかというか、何もない小さな田舎の町です。町の中心にもまともなビルはありません。人影もまばらです。

 クパンも町の中心街はインドネシア名物「漢字のない中華街」です。インドネシアでは排華政策のため、漢字の看板は禁止されていますが、大きな店はほとんど華人(中国系)が経営しているようです。インドネシアの華人は、多くが福建省出身ですが、北京語がよく通じます。カンボジアやラオスもそうでしたが、不安定な情勢が続く国に住む華人は、いざとなれば他の国に逃げ出しても商売ができるように、しっかりと北京語を勉強しているようです。安定したタイの華人が、中国語がさっぱりなのとは対照的です。

 クパンの町の交通手段は、ペモと呼ばれるミニバスとタクシー、そしてバイクタクシー。ペモは市内600ルピア(約8円)均一で、どこでも乗り降りできます。
 夜、タクシーに乗ったら、運転手が「女はいらんか」と誘ってきました。連れていかれた「色街」は車で20分ほど行った山奥の村でした。斜面のドブ川を挟んで、両側に石造りの小屋が並んでいて、女の人が1人ずつ立っていました。灯はなくて真っ暗だし、なんだか古代ローマの娼館を連想させるような不気味な一角です。チモール人は肌が黒いので、暗がりでは顔が全くわかりません。
 そそられる雰囲気は全くなく、早々とタクシーに戻りましたが、運転手が行方不明です。どうやら私のことなど忘れて、自分が遊びに夢中となったようです。1時間ほど待っても運転手は帰って来ないし、チンピラにはからまれるしで、バイクタクシーを拾ってホテルに戻りました。おかげで行きのタクシー代(1万ルピア)は払わずに済みました(笑)。
 ちなみに1回の花代は6000ルピア(約100円)とか。バリ島やジャカルタでは、ポン引きが20万ルピアとか40万ルピアと声をかけていましたが…。

 クパンは東ティモールと違って、平和な町のようです。オーストラリアから直行便もあり、観光客も多いようです。海岸沿いの簡素なリゾートホテルに泊まりました。料金は1泊4万ルピア(約600円)で、クーラーは効いてるしバスタブにはお湯も出るしで、過ごしやすいホテルでした。
 

その2:チモール島縦断バスの旅

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