FGOのマスターの一人 作:sognathus
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いやなに、別にほのぼのとした日常でも危険な戦いの中、マスターを支える我が雄姿(応援と言う名の気分転換)でも、どんなシチュエーションでも良かったのですがね。
しかしやはり、今回のような場こそ吾輩の魅力が光る絶好の機会と言えるでしょう!
「同人誌作成?」
「そうです! 吾輩、今新たな境地の開拓に非常に魅入られておりまして」
「それが同人誌?」
「いかにも!」
シェイクスピアは彼らしい芝居がかった動きでマスターに熱く語った。
廊下を歩いていたところを呼び止められたと思ったら予想だにしない話にマスターは若干困惑の表情を浮かべている。
「まぁ……好きにやれば良いと……あ、宝具の効果で騒ぎを起こすとかはしないで下さいね?」
「分かっていますとも!」
「ならいいですけど……ん? なら何故一々僕に話を?」
マスターは頭によぎった疑問を質したい欲求に素直に従った。
確かに問題さえ起こさなければシェイクスピアの話は態々彼に話す必要が無いものと思えた。
その問いかけに対し、シェイクスピアは待ってましたとばかりに芝居がかった動作に更に拍車をかけて満面の笑みで答える。
「それはマスターにも我々に協力して欲しいからですよ」
「え?」(自分に? それに今『我々』と言った?)
「マスターには是非我々の同人誌作成を手伝って頂きたいのです!」
「え、いや、ちょっと待って? 先ず我々って? 僕を誘う前に言いましたよね? 他に誰かいるんですか?」
「アンデルセン殿ですよ」
「アンデ……へぇ……」
意外と言えば意外。
しかし文字を扱うクリエイターという点では共通するので解るといえば解る。
マスターはある意味世界的な夢のタッグともいうべき組み合わせに興味深そうな声を漏らす。
しかしだからこそ即座に新たな疑問も浮かぶ。
作家と言うカテゴリーなら世界最高潮とも言える知名度を誇る二人に対する自分の必要性である。
正直全くマスターには分からなかった。
「でも何故僕を?」
「我々、今回は『漫画』を作ってみたいと思いまして」
「ああ、小説じゃないんだ」
「左様です。まぁ小説でも個人活動なら『ドウジン』と言えるみたいですが、だとしても我々は既に飽きるほどやってますかなぁ。いえ、全く飽きてはいませんが、やはりここは、最もポピュラーなやり方で挑戦してみたいという芸術家としての向上心と申しますか」
「なるほどぉ……」
「マスターは少なくとも我々よりはこの事に関して知識をお持ちでしょうからね」
「つまり僕はアドバイザーに徹すれば?」
「んー……一応絵もお願いしたいところです。いえ、完璧など鼻から求めてはいません。如何にも稚拙で素人な画であったとしても、それをまた如何に魅力的に見せるかという難問にもとても心惹かれますので」
「は、はは……」
恐らく本人には全く悪気のないただの無配慮な言葉だったのだろうが、彼が英国出身ということもあり、自然に皮肉に感じてしまう事にマスターは引きつった笑みを浮かべた。
「それで如何です? 協力して頂けないでしょうか?」
ずずいと迫る自分にシェイクスピアには若干気押されながらも、それでもマスターは意外にも彼からは強制力のようなものは感じなかった。
確かに心から協力を求められている気はするが、それでもそれは、単に楽しそうだから一緒にやらないかという、同人活動に対して純粋に期待する気持ちのように感じられた。
それはまるで仲の良い友人から遊びに誘われているような感覚で、だからこそマスターは変に勘ぐる事も悩む事も無く、自然と自分から手を差し出して答える事ができた。
「分かりました。二人の力にどれだけなれるか凄く不安ですけど、僕で良かったら」
「おお、感謝致しますぞ!」
マスターの協力する証として差し出された手をシェイクスピアは両手で堅く握り返す。
正直協力して欲しいという気持ちに偽りはなかったとはいえ、実は本心では協力は仰げないと踏んでいた彼は嬉しい予想外の展開に心の中で自分で拍手喝采しながら小躍りした。
(これは行ける! 吾輩はついに『ドウジン』なる業界においても歴史的な足跡を残すぞ!)
まだ企画の流れ的には打ち合わせにすらなっていないというのに、シェイクスピアは早くも自分の同人活動に絶対の自信と成功を確信するのだった。
そしてこれはまだ僅かに先の事だが、マスターが彼らとの活動で最初に行った事は、不機嫌そうなアンデルセンに角砂糖を三個もいれたコーヒーの差し入れだった。
短いです。
そして間が空く事が続いてます。
閃きはしてるんですけどね。
だらしなくなったなぁ……申し訳ないです。