まもなく平成の時代が終わろうとしていますが、この30年で私たちの生活を大きく変えたのが「インターネットの普及」です。通信機器の進化と共にSNSの登場で今や写真1枚で私生活が丸裸になる時代に。人の私生活を探る仕事=「探偵」に密着すると、現代が抱えるネット社会の闇が見えてきました。
まもなく平成の時代が終わろうとしていますが、この30年で私たちの生活を大きく変えたのが「インターネットの普及」です。通信機器の進化とともにSNSの登場で、今や写真1枚で私生活が丸裸になる時代に…。人の私生活を探る仕事=「探偵」に密着すると、現代が抱えるネット社会の闇が見えてきました。
写真1枚で私生活が丸裸に!?
大阪市内にある雑居ビルの一室。パソコン画面を食い入るように見つめる彼らの職業は「探偵」だ。探偵といえば、浮気調査や人探しなど依頼を受けて現場に飛び出し、聞き込みや尾行、徹底的な張り込みで対象者の情報を収集するプロフェッショナル。ところが、いつまでたっても彼らは事務所から出ようとしない。
「我々の初動としましては、インターネットの検索をかけたり、ここ数年で画期的になったSNS、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、そういったSNS内での検索ですね」(日本総合探偵事務所 柳川博成調査員)
今のご時世、素行調査の基本はSNSに書き込まれた情報をくまなく調べること。この日の依頼主は30代の女性で、「300万円を貸した元交際相手と連絡が取れなくなった」という。
「名前・生年月日・過去に住んでいたマンション、このあたりが情報として提供されています。フェイスブックのアカウントであるとか、インスタグラムのアカウントはすぐに見つかりました」(柳川博成調査員)
行方がわからなくなった男性のフェイスブックには、顔写真や出身地など多くの個人情報が記されている。100枚以上の写真を1枚1枚確認していると、ある1枚に目がとまった。
「壁の文字に施設名が入っていますので、この施設名を検索する。この施設名に関しては全国的に数あるチェーン店」(柳川博成調査員)
スポーツジムで撮影されたとみられる男性の写真。全国に点在するチェーン店の店内写真と細かく照らし合わせながら、どの店かを絞り込んでいくのだ。
「ここじゃないかと。同じような形でブラインドが写りこんでいる。この店舗だけ他の店舗と違って器具に赤い色が使われていましたので」(柳川博成調査員)
探偵が見つけた画像と男性が写っていた写真を見比べてみると、確かに赤い器具の色やブラインドの形状がよく似ている。検索を始めてから約5時間ほどで立ち寄り先の1つがわかった。
「しらみつぶしに過去の記事を手分けして分析しました。元の奥さんの職業が判明しました」(柳川博成調査員)
男性に離婚歴があることが判明。今度は元妻の情報を調べるのだという。
「元奥さまの写真で言いますと、薬指にはこの段階で結婚指輪の確認はないです。これが昔にさかのぼることによって…ありました」(柳川博成調査員)
Q.結婚指輪してる?
「はい」
SNSをたどるだけで、男性がだいたいいつ頃まで結婚していたのかわかってしまった。後日、探偵がようやく現場へと足を運んだ。立ち寄り先のスポーツジムから男性を尾行し、自宅を割り出した。依頼者の女性と男性を引き合わせ、貸した300万円について必ず分割で返済するという約束を取り付けた。
尾行にもスマホ機能 便利さの一方で新たな犯罪が
インターネット、とりわけSNSの普及で変わる人探しの現場。張り込みや尾行の際には、進化したスマートフォンのある通信機能を活用していた。
「写真を送信というところで『AirDrop(エアドロップ)』を選択したら、近くにいる操作中のiPhoneがあれば(画面に)名前が出てきますね」(日本総合探偵事務所 柳川博成調査員)
探偵が使っていたのは「エアドロップ」という機能。これはiPhone同士で画像を交換する際に近くで操作されているiPhoneを勝手に認識し、ユーザー名などを表示する機能だ。表示されたユーザー名を選択すると、たちまち相手のiPhoneに画像が送られる。これを使えば簡単に対象人物が近くにいるかどうかを確認できるというわけだ。
「活用してうまくいったことは、混雑してる電車の車内で本人が見えない状況になったときに、エアドロップを立ち上げて端末に名前が出てたので、自分の位置からは見えないけど近くに乗ってるんだなと」(柳川博成調査員)
しかし、こうした活用法とは別に去年、電車内でエアドロップを使い不特定多数の乗客にわいせつ画像を送ったとして、45歳の男が書類送検された。便利さの一方で、新たなネット犯罪を生み出す一面も浮かび上がった。
復縁願う女性が40万円!?高額契約結ぶ“〇〇屋”も…
ネット社会の今、探偵の仕事はより複雑化している。この日、事務所に新たな依頼者の女性がやって来た。女性は30代で、依頼の内容は「春先まで同棲していた元婚約者と復縁したい」というものだった。
(女性)「とりあえず、元婚約者に彼女がいてるのかを」
(調査員)「交際相手がいてるのかどうかですね?」
(女性)「いてそうな感じ」
元婚約者に交際相手がいるのかどうかを調べてほしいと頼む女性。ネットで見つけた「ある業者」と怪しげな契約を結んでいることがわかった。
(女性)「無料無料ってうたってるやつなんですけど」
(調査員)「基本的には無料でやりますと?」
(女性)「お金を払っていうのがそれやったんです。一応、設定目標は『婚約』って形で決めてる」
(調査員)「それはすぐに即決されたんですか?」
(女性)「しちゃいました。悩んでたから…。40何万円、40万円ちょっと…」
女性は「復縁屋」と呼ばれる業者と契約を結んでしまったのだという。女性が年間40万円もの大金を支払った復縁屋とは一体どんな業者なのだろうか?
「『復縁屋』とか検索したら出てくるようになってました。サービスは電話でのコーチングとLINE相談です。お金のことを言われるまでは優しく丁寧に聞いてくれたので、この人やったら信用できるかなという感じで」(復縁屋と契約した女性)
女性と復縁屋のメッセージのやり取りの一部を見ると…
(復縁屋)「1人で悩んで不安を抱えていたと思いますが、これからは、私が背後に居ますから、この復縁を乗り越えていきましょうね!」
(女性)「彼へのLINEの返信は彼が午前(仕事中)午後(お昼休憩くらい又は仕事中)いつ頃送るのがベストでしょうか?」
(復縁屋)「今日の夜に送る形で問題ないと思います」
復縁屋は契約を結ぶまでは丁寧に相談に応じてくれたというが、契約を結んだあとはやり取りが減り、最後は電話をかけても素っ気ない対応になったという。
「周りの人は聞いてくれても聞くだけで終わるじゃないですか。専門にしている業者に依頼する方がって思ってしまう」(復縁屋と契約した女性)
Q.お金を払うっていうのは一線だと思うが?
「そうなんです…。でもやっぱり助けてほしいとか、何とかしてほしい。自分が悪かったって言ったら悪かったんですけど」
こうした「復縁屋」や「別れさせ屋」など、“達成が困難な依頼”にもかかわらず高額な契約を結ぶ業者にまつわるトラブルは数年前から相次いでいるという。
「別れさせるとか復縁させるとかいう超難問題。人の気持ちをいじってっていうのは私らにはできない。警察庁からの通達で、(復縁工作などを)しない・させないと」(日本総合探偵事務所 淡野茂夫代表)
探偵は再びSNSなどの調査で、女性からの依頼だった元婚約者の様々な情報を入手した。ただ、復縁工作に手を貸すことはできない。どこの誰が見ているかわからないネットの世界に気軽に情報発信できるようになった社会。便利さの裏側にその危うさが見え隠れしている。
閉じる