FGOのマスターの一人 作:sognathus
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マスターはあの日から一部のサーヴァントから向けられる視線に何かしらプレッシャーを感じるようになった。
言うまでもなくその中で、清姫や静謐、頼光に代表されるちょっとアレなサーヴァント達の反応は顕著であった。
「いやぁ、流石はマスター! まさか神を利用して女の関心を集めようとは、私では一生かかっても浮かばない秘策だ!」
本人は褒めているようでも当の本人にとっては侮辱にしか聞こえない言葉にマスターは眉を潜めて苦言を呈した。
「ちょっと滅多な事を言わないでください。大体どうしてそんな風に考えられるんですか?」
「ん? 強い子を生んでもらう為には正に上策だと思うのですが?」
「……」
マスターはスパルタ王のこの発想に心の中でドン引きした。
「確かスパルタには一夫多妻の習慣はあまりなかった気がするんですけど」
「本妻との間に子供が長期間生まれなかった場合は、本人の意思で側室を娶る事もありました。まぁ、マスターはスパルタ人ではないので問題無いかと」
「僕の倫理観的に問題大有りです」
「ふむ?」
レオニダスはマスターの真剣に悩む様子に首を傾げる。
スパルタ人にとって強く健康な子というのは至宝と言っても差し支えの無いものだった。
だというのに自分のマスターはそんな至宝を得る好機を喜んでいないのだ。
これはレオニダスには些か理解し難い事だった。
「先ず僕が誰かと子供を作るという発想から間違っています」
「確かに。サーヴァントと人間との間に子ができるとは思えません。しかしそれも日々挑戦し続ければ何か得るものがあるはずです。訓練と同じですよ」
「子作りを訓練と同一視するのはどうかと思いますが、というより気にしてるのはそこじゃないんですけど……」
「? 好意を寄せられているのであれば、行為に及ぶのも難しくないと思うのですがね?」
「いや、だからそうじゃなくてね?!」
レオニダスの純粋な直線的な思考にマスターはつい悲鳴を上げる。
彼の思考パターンのブレなさは本当にレールの上を脱線せずにひたすら走る電車の様だった。
「……なるほど。想い人は自分で決めたいと」
「そういう事です」
「では言い寄る女性から決めれば良いではありませんか?」
「僕はもっと落ち着いた日常の中で決めたいんですよ」
「ふむ。私はどちらかというと戦場で即断即決をよくしてきたので、どうやらマスターとは許容できる環境に大きな差がありそうですな」
「流石に生きていた世界が違い過ぎますからね」
レオニダスはそんなマスターの言葉を聞いているのかいないのか、虚空を見上げて「ふむ」と一人考えに耽るような様子を見せると、ものの1秒でそれがまとまったらしく、マスターの方を向いて言った。
「いや、やはり私は善は急げだと思います」
「え?」
「マスターに、その貴方が言う日常というものが訪れた時には最早今のような好機は訪れない可能性もありますからね」
「いや、でも……」
「まぁ聞いてください。ですから今深い仲になる相手を決めずとも、将来これからも関係が続けていけそうな者を決めるくらいは良いのでは?」
「……」
特に反論が思い付かないレオニダスらしくないといえば失礼だが、そんな柔軟な発想だった。
マスターは彼の言葉につい口ごもる。
「ふむ。どうやらマスターもこの進言には一理あると思われたようですな。では早速行動しましょう!」
「……は? え、ちょ? ま、ま……」
「戦場で敵は待ってくれませんし、好機を逃すのは愚行の極みです! さぁ、征きましょう!」
「ま、待って! 行くって、何処に?!」
急にレオニダスに手を掴まれて立ち上がらされたマスターは目を白黒させて彼に訊く。
即断即決の行動の先に何を行おうとしているのか、先ずそれを確認しないと流石に動けないというものだ。
「誰でも良いので先ずは一人良い仲を築けそうな者の所に行って同意を求めるのです」
「は……つまり、何処へ?」
「私の判断が的外れでなければ、やはりその最有力候補はマシュ殿ですね」
「ん……」
「マシュ殿は私から見ても間違いなくマスターを慕っていると思います」
「そう面と向かって肯定されると恥ずかしいものがありますね……」
「何を仰る! 寧ろ誇るべきです! マスターは自分から行動せずとも、他者に慕われ、好かれているのですぞ! この優秀さは誇ってしかるべきです!」
「あ、いや……」
何だか凄くモラルにズーンと響く褒められ方だった。
マスターは正直あまり嬉しくなかった。
「行ってもいいですけど、彼女にかける言葉は僕に決めさせてもらいますよ」
「勿論! 私はマスターの成功を確信しておりますので、助言の必要はないでしょう」
「あと、恥ずかしいので着いて来ないでもらえますか?」
「む……それは……できればマスターの背中をお守りしたかったのですが……」
途端に残念そうな顔をするレオニダス。
一体彼はただ人に会いに行くだけの行動に対して何を警戒していたのだろうか。
(いや……)
その時マスターの頭に数人サーヴァントの顔が浮かんだ。
(タイミングによっては現場を見られて大変な事になるという可能性も……)
「マスター?」
「……すいません、レオニダスさん。やはり今日はやめましょう」
「え? 何故ですか?」
「今日は……日が悪い気がします」
「……! 成る程! マスターの戦略眼たる勘がそう言うのですね!」
流石は
レオニダスは勝手にマスターに非常に都合の良い解釈をして、それに加えて何故かマスターに深く感心しだした。
「まぁそういう事です。助力が欲しい時は頼みますので」
「承知しました! いつでもお呼びください!」
力強くそう請け負うレオニダスを前にしてマスターはこれからの事を少し考えた。
それは殆ど共感することができなかった彼の言葉の一部にマスターが理解を示した結果だった。
レオニダスの宝具にはこれまでの幾つもの窮地を救われました。
彼は星の数以上の性能を持ったサーヴァントだと思います。