FGOのマスターの一人   作:sognathus
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カルデアのサーヴァントの中でも特に性格に注意しなけければならない人物の一人であるエウリュアレ。
彼女にはドライなコミュニケーションを取りがちだった以前のマスターでも、相対した時は警戒心を維持するのに心労がかかっていた。


エウリュアレ

「あ……」

 

「あらぁ、ごきげんようマスター」

 

「ええ、こんにちは」

 

「丁度よ――」

 

「それじゃ」

 

「待ちなさい」

 

目を合わせたのは一瞬、そして交わした言葉も簡素。

マスターは何とかその場はこれで終わらせたかったのだが、残念な事にそれは彼女が許さなかった。

 

「……なんでしょう」

 

「貴方、ちょっと私を警戒し過ぎじゃない?」

 

「まぁ、十分に警戒する理由がありますからね」

 

「酷いのねぇ。碌に甘えさせてもくれないし」

 

「なるべく全部自分だけか身内で何とかしてください」

 

「む……」

 

マスターの硬質な態度に流石のエウリュアレも少し頬を膨らませた。

 

(そこまで嫌わなくてもいいじゃない……)

 

 

「女神様には結構苦労させられた事がありますからね。こうなっても仕方ないじゃないですか」

 

「ええ、そうね。おかげで妹くらいしか弄る相手がいなくてすっごく物足りないの」

 

(メドゥーサさん……)

 

マスターは心の中で女神の妹に心から同情した。

今度気落ちしているようなところを見掛けたら、ジュースくらい差し入れても良い気すらした。

 

「そう言われてもですね。人間が困り果てる様を見るのも快楽の一つとする人になんて、普通の感覚の人間なら近付きたくないですよ」

 

「貴方は私の美に本当に靡かないわね」

 

「いや、綺麗だとは思ってますよ」

 

「えっ?」

 

「ただその気持ちを警戒心が上回っているだけです」

 

「……度し難い。美を理解しているのにその体現である私自身は受け入れないなんて……」

 

エウリュアレは幾分頑丈なだけで戦闘力については乏しい自身のサーヴァントとしての身体を憎らしく思った。

 

「悔しい……。私の身体に多少でも力があれば……」

 

 

(ヤバイ。自分もいくらかハッキリ言い過ぎた)

 

いくら非力といってもサーヴァント。

人間と比べたら非戦闘タイプでも基礎能力に大きな差がある事も十分に考えられた。

マスターは、自分の言葉がエウリュアレにとって大分挑発になっているらしい雰囲気を察して危機回避の為に思考を巡らせる。

 

 

「んんっ、まぁ落ち着いてください。美の化身の女神様が蛮行を望む様はその……」

 

「……そうね。今の私は忘れなさい。絶対に」

 

「勿論です」

 

「とは言え、この不快感は未だ払拭に至っていないのも事実。これは、どうしたものかしら……?」

 

 

冷たくも美しさは損なっていない反則的な誘惑の流し目でマスターを見るエウリュアレ。

マスターは再び自分の頭の中で女性に対する上手い対応の方法を必死で考えた。

 

「具体的にどうしたいんです?」

 

「私を愛し、私に愛されなさい。特別に、この不満を晴らす為だけの一時で許してあげる」

 

「……分かりました。えっとじゃぁ……」

 

「?」

 

エウリュアレは自分に差し出してきたマスターの手を見て首を傾げる。

 

「先ずは手を……」

 

「ふっ」

 

それはあまりにも可愛らしく思える第一歩であり、そのおかげでエウリュアレはつい小さく吹き出してしまった。

目の前の男の私に対する愛情表現の初歩は自分の手に触れる事からだと言うのだ。

 

「歯痒いわね。手を取るならそのまま抱き上げてくれるかしら?」

 

「……分かりました」

 

彼女がとても軽い事もあり、マスターは難なく女神を抱き上げる。

その仕草は優雅とは程遠かったが、抱き上げるまでに自分に負担をかけないように気を付けるマスターの配慮はエウリュアレにも解った。

 

「良い子ね。ねぇ?貴方の首に手を回しても良いかしら?」

 

「どうぞ」

 

マスターはなるべく彼女と目を合わさないようにしながら首肯した。

その不器用な気の逸らし方をエウリュアレは愛らしく感じ、それと同時に自分の中でふつふつと加虐心という名の悪戯心が沸き上がり、台頭して来るのを感じた。

 

「ん……良い気分♪ 次はどうしてやろうかしら♪」

 

「……人目もあるんで」

 

「誰が人が居る所に行って良いと言ったの? 駄目よ。そんな事すれば絶対にこの楽しい時を邪魔されちゃうじゃない」

 

「……」

 

実はそれが狙いだったマスターは、エウリュアレの慧眼に無念の溜息を心の中で吐いた。

 

「さぁ、このまま……うーんと、そうね。あっ、なら私が許す所なら、人が居ても行っても良いわよ」

 

「……というと?」

 

「先ずはあの地味な眼鏡の娘の所に行きなさい」

 

「……マシュですか?」

 

「そんな名前だったわね。ほら」

 

「了解」

 

マスターは溜息を吐いてエウリュアレの指示に従う。

その間彼女はといえば、無意味にマスターの首に顔を近づけたり、少し自分から寄ってきてより身体を密着させるなど、実に心に来る悪戯を続けた。

そして……。

 

 

「せ、先輩?! そ、あ……ど、どうしたんですか?!」

 

「……察して」

 

「こんにちはマシュ~♪ 見ての通り今マスターは私のなの。それを言いたくてね♪」

 

「な?! ちゃ、チャーム(魅了)ですか?! エウリュアレさん! 先輩にそんな事……!」

 

「悪いけど、マシュ。それは違うわ。こ・れ・は、彼の意思なのよ」

 

「な?! せ、先輩! 説明してください!」

 

「あはは、ダメよマスター。ここは暫くこの子の動揺振りを楽しませなさい。可愛い♪」

 

「んな?! ちょっと、先輩! 先輩! 黙ってないでちゃんと説明を!」

 

「……勘弁して」

 

やはり自分はエウリュアレが苦手で、警戒するなら遭遇自体しないように細心の注意を払う必要があると結論するマスターだった。




エウリュアレは次女ですね。
結構前から持っているのに未だにどちらが長女で次女なのかクラスも含めて混同してしまいます。





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