FGOのマスターの一人 作:sognathus
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何やら一部のサーヴァントがマスターを見る目から不穏な感じがするのだ。
それは敵意のように命に危険を感じさせるようなものではなかったが、別の危うさを感じさせるものだった。
「マスター、ちょっとよろしいですか?」
声をかけてきたのはナイチンゲール。
今ではカルデア内第二の診療室と呼ばれている自室から、彼女はひょこんと顔を出してマスターに手招きをしていた。
「何ですか? 特に体調に問題はないと思うのですが」
「確かに。マスターは問題はないでしょうね」
「?」
「マスター、今貴方はカルデア内の雰囲気に違和感を感じていませんか?」
「えっ、よく分かりましたね」
「実はそれが私がマスターをお呼びした理由なんです」
ナイチンゲールは何やら問診票らしき用紙を挟んだバインダーを取り出し、これから幾つか質問させて欲しいと言ってきた。
それが今マスターが感じている雰囲気を解決する緒になるかもしれないと言うのだ。
「いいですけど……。本当に何も心当たりが無いんですよね」
「それを判断するのは私の役目です。マスターはどうか私の質問に正直に答えて頂ければ結構」
「はぁ、分かりました」
「では先ず、マスターは先日オルタの方のジャンヌさんと一緒に寝たそうですね」
「え? はい」
この時マスターはナイチンゲールの質問に特に抵抗や疑問を感じることなく答えた。
何故なら彼はナイチンゲールの質問に対して単純に『外で一緒に並んで寝た』事の事実確認だと思っていたからだ。
こう思ってしまったのはナイチンゲールが使った言葉にも若干原因があった。
もしこの時彼女が『一緒に』ではなく、『ジャンヌさんと寝た』と訊いていれば、マスターも流石に男女の情事の事を言っていると捉え、多少動揺したかもしれない。
しかしそこで『一緒に』という言葉を入れてしまった事で、彼女が本来伝えたかった意味が異なるニュアンスとして捉えられてしまったのだ。
ナイチンゲールも最初の質問でマスターが多少でも質問の意味を理解しかねたり、動揺する素振りを見せていれば「性交したか確認したい」とぼかすことなくはっきりと補足したかもしれない。
しかしそこでマスターが質問の意味を勘違いして動揺することなくあっさりと肯定してしまったので、結果として彼女とマスターとの間に致命的な会話の齟齬が生じてしまったのであった。
「……なるほど事実なのですね。でしたらやはりそれが原因ですね」
「え、一緒に寝たのが?」
「はい。仲睦まじいのは良いことだと思いますが」
「仲睦まじいですか? まぁ悪くなかったと思いますけど。それが原因というのは……。考え難いですけどそれが嫉妬だとしてもあれくらいでああなるかなぁ……」
「悪くなかった? アレくらいで?」
完全に運が悪い失言だった。
ナイチンゲールは思わず険のある瞳でマスターを睨む。
「マスター、今の言葉は少し行き過ぎていると思います」
「え」
「それはあまりにも彼女に対して失礼が過ぎるかと」
「あ……いや……。す、すいません」(な、何がいけなかったんだ?)
「まだ謝罪するだけ倫理観はまともなようですね。いいでしょう、しかし二度とそんな事を口にしてはいけませんよ?」
「あ、はい」
「しかし、ならば……」
ナイチンゲールは用紙に何やら書き込みながらボードをペンでトントンと叩いて呟く。
「これが事実なら単純に皆さんにこの事を受け入れて頂くしかありませんね」
「はぁ」(え、それだけ?)
「しかしいくら仲が良いと言っても外で行うのは衛生的にどうかとも思います。いえ、開放感とか、そこからくるものも解りますけどね?」
「すいません。暖かくて気持ち良さそうだったのでつい」
マスターは反省している様子ではあったが、ナイチンゲールはそこで何ら恥じる様子もなく『気持ちよさそう』と言った彼に内心少々驚いた。
目だけを少し丸くさせ、頬をどこか僅かに赤く染めながら軽く咳払いをして気を持ち直した。
「こほん……しかし意外なものですね。マスターとあの方がこんな仲になるなんて」
「そんなに良く見えます?」
「ええ、それはもう。何と言っても本人が認めているところですから」
「と言いますと?」
『私とマスターはイクとこまで行ってるから。もうあいつは私のモノなの。いい? 分かった?』
「という感じに明らかに嬉しそうに皆に話してましたね」
「えぇ……」(俺は寝ていただけだぞ?)
「まぁ、マスターもこれからそういう感じで他の方とも仲良くするかもしれませんが? ある程度の節度は守ってくださいね?」
「え? は? はい……?」
「では問診はこれで終わりです。マスターがそこまで事実を認めているのでしたら皆さんの理性に訴える説明もできるかと思います」
「結局自分で解決しないといけないんですね。えーと……僕と邪ンヌが草原で寝たことをちゃんと話せばいいんですよね?」
「そうですね。下手に話を偽るよりはその方が良いでしょう」
「分かりました。ありがとうございます」
マスターはナイチンゲールに取り敢えず問診という名の相談をしてくれた事にお礼を言うと、部屋を出ようとした。
だがその時、彼の後ろから初めて聞くようなナイチンゲールの声が掛かった。
「振り向かずに聞いてください。これは純粋な興味からの質問なんですが」
「え? はい」
「マスターはその……私ともジャンヌさんと同じような事ができますか? したいと思いますか?」
「え? いや、したいというか、まぁナイチンゲールさんが望むのなら拒否する理由とか無い限りは、はい」
「……そうですか。よく分かりました。ではどうぞご退室を」
「? はい、それじゃあ」
扉が閉まってマスターが部屋から完全にいなくなったその場には、先程のマスターの言葉に僅かに頬を染めた時より、より明確に頬を染めたナイチンゲールがいた。
「……まぁ、いうなればこれも治療の一環です。サーヴァントとしてもメリットがありますし。タイミングを図るくらいの事は考えても良いでしょう」
と、誰にともなくナイチンゲールは呟くのだった。
持ってないキャラを自分の話にキャラとして起すのは難しいですね。
割とそれだけのせいで間が空きました。
もはやヒロインを決めた単なるラブコメの方が良いかも……と、近頃は考えたり。