FGOのマスターの一人 作:sognathus
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実に暖かい良い日差しだった。
草も程よく茂って柔らかく、良い寝心地で土で汚れることもなかった。
そんな彼に頭上から話しかける声がした。
「何をやっていると思ったら」
「……こんにちは」
珍しく緩んだ顔に優しい目をしたマスターの顔だった。
邪ンヌはそんな彼の顔を見てちょっと吃驚する。
(え、こんな穏やかな顔初めて見るわね)
「……あんたが外に出るのを見たって聞いたからちょっと探してたの」
「そっかぁ」
「別に用事ってわけでもないんどね」
「ふーん……」
「……」(ほんと、緩みきってるわね)
「あの……」
「ん?」
「隣、良いかしら」
「好きにしなよ」
そう言いつつマスターは邪ンヌが座れる場所を寝返りを打って空けてくれた。
なんかそのまま見ていたら転がって丘を下って行きそうに思えたが、特にそんなこともなくマスターは寝返りを打ったところで止まり、そのまま横になってまた穏やかな呼吸を始めた。
「お邪魔するわね」
「うー……ん……」
「……気持ち良いわね」
「いや、ほんと……毎日こうだったら良いのになぁ……」
「ふふっ、そうなったら何かあんたそのまま溶けてバターになりそうな気がする」
「今の心地的に否定できないな……」
「……わ」
「ん?」
「わ、私も……ね、寝ようかしら」
「鎧で痛くない?」
「脱いでるわよ。ていうか私服よ。話しかけたとき見たでしょ?」
「……?」
マスターはぼんやりとした頭でその時のことを思い出す。
(そういえばそうだった気がする。何かスカート履いてて……)
黒いレースのショーツも見えた気がしたが、スカートくらいしかまともに映像として思い出せなかったので、取り敢えずマスターはその事は考えないようにした。
下手に思い出してつい口を滑らせるとまたどんな怒声が飛んでくるか分かったものではなかった。
「呆れた。そこまで気が抜けてたわけね」
「……申し訳ない」
「別にいいわ。ん……」
皮肉そうな笑みを浮かべた後、ようやく邪ンヌもマスターの横で上半身を倒して日光浴を始めた。
「……」
マスターの気が緩むのも解る気がした。
肌に当たる日差しは丁度良いくらいに暖かく、太陽の眩しさにも不思議と眠気を誘うような心地良さを感じた。
草の良い香りが風に乗って鼻孔に入る。
ちょっとこの環境は反則に思えた。
「これ、本当に寝ちゃいそうね」
「……」
「マスター?」
仰向けになったまま首だけマスターの方に向けてみると、そこには完全に熟睡モードに入ったマスターの顔があった。
いくら気を許しているとはいえ、アヴェンジャーたる自分のようなサーヴァントの隣りにいるにしてはあまりにも気が抜けた、彼女なりに言うと間抜けな顔だった。
「マスター……?」
邪ンヌはまた彼を呼んでみるが、今度の声は先ほどと比べて本当に寝ているのか確認するような少し静かな声だった。
「……」
やはり完全に寝ているようだった。
その証拠に不意にこちらに寝返りをして彼女の腕にぶつかっても一瞬眉を寄せただけで寝息はそのまま続いた。
「……」
邪ンヌは一度上体を起こして周りに誰もいないことを入念に確かめると、再び体を寝かせて人差し指でマスターの頬を突いた。
「ん……む……」
意外に柔らかい感触だった。
頬を突かれたマスターから自然に漏れた声に邪ンヌは思わず小さく吹き出す。
(ぷっ、く……間抜けな顔。本当にこれあいつなのかしら?)
そのまま5分ほど邪ンヌはマスターの頬を突いて遊んだ。
「ほ、本当に起きないわね」
つい夢中になって遊んでしまった自分も大概だったが、それでも起きないマスターはある意味凄かった。
熟睡した人間はここまで起きないものなのか、邪ンヌはちょっと興味が湧いた、と心の中で言い訳をして次にちょっと大胆な行動を始めた。
「……」
マスターの力無く地面に触れている腕を掴んで抱きしめてみる。
特に心地が良いというわけではなかったが、何となく独占めたい満足感を感じた。
「ん……」
今度は軽くその腕に頬ずりをしてみる。
これはちょっと心地良かった。
服越しでも生地がある程度薄かったおかげでマスターの体温を感じる事ができた。
それは何とも言えない安心感のように思えた。
(もうちょっと……)
自分なりの大胆な行動が連続して成功してしまった事もあって、調子に乗ってしまい少し自重の
次に行ったのはマスターの腕を抱きしめたまま手の部分を膝を曲げて脚で挟むというものだった。
「はぁ……」
自分でやった事でありながら、子供のような格好に思わず赤面する邪ンヌ。
しかしそこからくる背徳的な開放感は間違いなく彼女には得も言われぬ快感であった。
(くっ……今こいつが起きたら殺すしかないわね……)
本気でそうするつもりなどなかったが、どうにかして記憶を飛ばすくらいの事はしなければならないと邪ンヌは考えた。
だったら行為はそこで終わりにすれば済む話だったのだが、そうしなかったのは今その時の状態が完全に彼女の
それくらい邪ンヌはこの時、マスターに対して今まで感じたことがない優越感を感じていた。
しかし流石にそこまでマスターの腕を固定していては、彼も無意識とはいえ抵抗の動きをせざるを得なかった。
「ひうっ?!」
不意に下半身の方から何かの感触を感じて思わず小さな悲鳴を漏らす邪ンヌ。
赤い顔をして感触を感じた方を見ると、そこには膝で挟んだマスターの手が手首のところで曲がってその指が丁度……。
「……ん」
目覚めた時マスターは一人だった。
辺りは既に夕方の日暮れによってオレンジ色に染まっていた。
マスターは上半身を起こしてぼんやりする頭で周りを見渡したが、どこにも既に邪ンヌの姿はなかった。
(寝てる間に先に帰ったか)
そう思って立ち上がろうとした時だった。
「やっと目が覚めたわね」
と、背後から声がした。
「え?」
と、マスターが振り向くと、そこには夕日の色に染まった邪ンヌが何処か不機嫌そうな顔で自分を見ていたのだった。
余談だが、その時マスターは、夕日の色とは別に何となく邪ンヌの頬が赤く染まっているように見えた気がした。
かなり懐かしいフリーゲームのBGMに癒やされたら浮かんだ話でした。
初の同キャラの2話目となりましたが、ネタを放棄するのも勿体なかったし、浮かんだものは仕方ないので形としました。