第2話
次第に恋心を抱いたと言いましたが、その始まりは私が加美崎町に来てから初めてのお祭りの時だったでしょう。おばさんの家族は加美崎町という田舎町に住んでいました。母親がこの世を去るまで都会育ちだった私にとって自然豊かな加美崎は新鮮でした。
加美崎町では、毎年の夏に神を祀るお祭りが行われました。とは言うものの、祭りのメインは神様の方ではなく、一番最後に打ち上げられる花火でした。
私が加美崎のおばさんの家に住み始めたのがその祭りの少し前でした。学校も夏休み期間中で、一緒に祭りに行ける友人は
おばさんは遥に私を祭りに連れて行くように言いました。遥は快く承諾し、私を案内してくれました。その時の私は、遥に申し訳なさを感じていました。というのも、彼女は加美崎にずっと住んでいて、一緒に祭りに行きたい友人が他にもいただろうからです。
しかし、彼女とお祭りを一緒に回り、話をするにつれて、私は申し訳なさと同時に親近感を覚えました。おそらく彼女も私に対して同様であったでしょう。
祭りも終わりに近づき、花火を見に行きました。少し湿った野原に隣合わせで座りました。花火自体はありきたりなものでした。しかし、同い年の異性と二人きりで花火をみるような経験がなかった私は緊張していました。その時にすでに恋に落ちていたのかもしれません。私は横顔が見たくなりました。私は両目を限りなく右に寄せ、ちょっとずつ首を右に曲げていきました。彼女の顔のぼやけた輪郭が見えました。しかし、暗すぎて彼女がどこを見ているのかわかりませんでした。私は彼女を凝視しました。その時、大きな花火が上がったのです。少し明るくなった刹那、私は彼女の目が見えました。彼女は私を見ていました。
彼女がなぜ私を見ていたのか考えました。もしかすると、私が彼女の顔に目を据えていたことに気づいて、その仕返しとしてこっちを見たのかもしれない、と結論付けました。