東京2020オリンピック・
パラリンピック&55競技

見どころ紹介

フォトグラファーインタビュー
竹見脩吾

東京2020オリンピック・パラリンピックでは主役であるアスリートに加え、現場の臨場感を切り取り伝えるフォトグラファーもまた重要な役割を担う。自身の使命をとりわけパラリンピックスポーツ撮影に見い出すスポーツフォトグラファーの竹見脩吾さんはパラリンピックの舞台に立つアスリートたちを数多く撮影してきた経験から、彼らの真の魅力を熟知する。ファインダーを通して竹見さんの目にはどんな景色が写るのか?そしてスポーツ写真の魅力をどこに感じているのか?国内外で活躍する若きフォトグラファーに話を聞いた。

衝撃を受けたバンクーバー2010冬季パラリンピック

— プロとしてスポーツ写真を撮りたいと思うようになったきっかけを聞かせて下さい。

写真を勉強していた大学時代、サッカーJリーグの選手で日本代表でもあった城彰二さんを撮影し、その写真が賞をいただいたのがきっかけです。当時はアマチュアフォトグラファーですから自分で観戦チケットを買ってスタジアムの開門と同時に猛ダッシュし、最前列を確保してフィールドに一番近い場所から選手を撮りました。試合の途中から突然豪雨になって機材を守るのに必死でしたけれども、容赦なく降り注ぐ雨が、かえって逆転ゴールを逃した城選手の心情と重なるような写真が撮れたんです。予期せぬハプニングが生んだ一枚と言えると思います。

写真を勉強していた大学時代、サッカーJリーグの選手で日本代表でもあった城彰二さんを撮影し、その写真が賞をいただいたのがきっかけです。当時はアマチュアフォトグラファーですから自分で観戦チケットを買ってスタジアムの開門と同時に猛ダッシュし、最前列を確保してフィールドに一番近い場所から選手を撮りました。試合の途中から突然豪雨になって機材を守るのに必死でしたけれども、容赦なく降り注ぐ雨が、かえって逆転ゴールを逃した城選手の心情と重なるような写真が撮れたんです。予期せぬハプニングが生んだ一枚と言えると思います。

— 大学卒業後はカナダへ渡ったそうですが、それも写真の勉強のためですか?

2008年の夏にカナダのバンクーバーへ留学しました。いつかオリンピックや、サッカーの国際大会を撮りたいという夢があったので、英語の習得が必要だと思ったのです。カナダでもサッカーのプロリーグを撮りました。ここでも一般席のチケットを買ってスタンドに入り、そこからフォトグラファー席にこっそり移動していました。本当はダメなんですよ。でも、当時はあまり大きなリーグじゃないのでそれほど規制が厳しくなかったし、腕はアマチュアレベルでも「スポーツ写真はオレに撮らせろ!」ぐらいの気概があったのです。

その時、たまたま隣にいた現地新聞社の編集長から「どこのメディアの人?」と声をかけられ、「写真が好きで撮っている学生なんです」と自前の名刺を渡したところ、後日、「うちでインターンシップをしないか?」と連絡が来て。それでウェブ記事の写真記者として広告営業もしながら1年間インターンをして、翌2009年は会社が就労ビザを取ってくれたので、もう1年バンクーバーに残りました。

— バンクーバーといえば2010年に冬季オリンピック・パラリンピックがありましたね。

そうなんです。バンクーバーに残ったのもそれが理由の一つでした。まず2月の冬季オリンピックでは街の盛り上がりをメインに撮り、3月の冬季パラリンピックで競技写真を撮りました。
当時はまだ僕もパラリンピック競技を知らなくて、最初に撮影に行ったアルペンスキーの滑降を見て「こんなスポーツがあるんだ!」と衝撃を受けました。だって、足に障がいのある選手がものすごいスピードで轟音を立てて急斜面を滑り降りて来るんですから。自分にはとても出来ない高度な技術だと感心したし、これはすごく格好いいスポーツ写真になるなと思いました。

オリンピックムードを盛り上げる街中の装飾

アスリートの表情はオリンピックもパラリンピックも同じ

— 具体的にパラリンピックスポーツ撮影のどこに魅力を感じるのでしょう?

自分ではパラリンピックスポーツを撮っているという意識はあまりなくて、シンプルにスポーツで勝負するアスリートの表情に魅力を感じています。アスリートは手や足に欠損があったり車いすに乗っていたりするんだけれども、競技中の表情はオリンピックもパラリンピックも一緒なんですね。僕も初めのうちはパラリンピックの写真だとわかるように選手の障がいをあえて写真に収めたほうがいいのかなと思ったりもしましたけど、それは結局どっちでも良くて、スポーツ写真として格好いい、競技やアスリートの迫力が伝わる写真を撮りたいと思うようになりました。

— 特に面白いと感じるパラリンピック競技はどれですか?

どれも面白いけれど、陸上競技の100メートルかな。足を欠損した選手が義足をつけて全力疾走する花形種目ですけれども、ひとくちに義足と言っても欠損の度合いや程度は十人十色なのでいろんな義足があるし、それを履きこなす選手の筋肉や技術など目には見えない要素も大きく絡んでくるんです。そういった諸々が詰まったレースをファインダー越しに見ているとゾクゾクすることがあります。義足のかっこよさに興奮しちゃうんです。
写真として一番画(え)になるホットスポットは通常ゴールだといわれますけれども、それより僕はスタートの瞬間だと思います。選手がスタートラインに並んだところを横から狙うと、義足のシルエットの違いが出てすごく面白いんです。

フォトグラファーとしての幅が広がった招致活動

— 竹見さんは東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の公式フォトグラファー、そして現在は同競技大会組織委員会のフォトグラファーでもあるという大変貴重な経験もお持ちですが、ご自身にとってどんな財産になっていますか?

以前は競技を撮ることだけに意識が向いていたのですが、招致活動の記録撮影を通じてアスリートを支えるコーチや家族、競技運営に携わる皆さん、観戦に訪れる観客やボランティアなど、スポーツにはこんなにもたくさんの人が携わっていて、その数だけ笑顔だったり真剣な眼差しだったりがあるんだというのを肌で感じて、スポーツフォトグラファーとしての幅が広がったように思います。

また組織委員会では、とりわけリオ2016オリンピック閉会式で行われた、小池百合子東京都知事とトーマス・バッハIOC会長によるフラッグ・ハンドオーバー・セレモニーの撮影が大きな財産になりました。あのシーンをフィールドに降りて撮影できた日本人は通信社と新聞社、僕の3人だけで、代表フォトグラファーとしてのプレッシャーも正直かなりありましたけれども、自分の納得のいく写真が撮れたこと、かつて見たことのない景色をこの目で見られたことがずいぶん自信になりました。

撮影の原点に帰りパラリンピック競技の魅力を伝えたい

— 東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツ写真を通じ、何を伝えていきたいですか?

僕のミッションはやはりパラリンピック競技の面白さや選手の魅力が伝わる写真を撮って、一人でも多くの人に見てもらい、パラリンピックスポーツを身近に感じてもらうことだと思っています。そして東京2020パラリンピック本番には競技会場を大勢の観客で埋めたいし、パラリンピックの出場選手たちを「パラリンピックアスリート」と呼ぶのではなく、オリンピックもひっくるめてみんな「アスリート」と呼ぶ、そんな感覚になってほしいと強く望んでいます。

僕自身はフォトグラファーとして原点に帰りたいという思いがあります。今は駆け出しの頃と違い性能の良い機材が使えて、フォトグラファー席にも当たり前のように入れるけれども、ふと気がつくとそういうポジションに慣れてしまっている自分がいて、撮る写真、撮る写真、みんなアングルが似てきていると危機感を覚えることがあるんです。仕事で撮っているのでクライアントの要望に応えるのが優先ですが、その中で自分が撮りたい写真、足で稼ぐ写真というのを、それこそバンクーバーにいた頃のように、もう一度精力的に撮っていきたいですね。

2018ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会

竹見脩吾

1985年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。祖父、父も写真家。大学卒業後、カナダ・バンクーバーに渡り現地新聞社にて働く。その後、米国通信社「ZUMA PRESS」フォトグラファーを経てフリーランスに。帰国後はスポーツ写真撮影を中心に写真教室や講演会でも活動中。2010年以降、障がい者スポーツを追い続けることをライフワークとし世界各国で撮影。パラリンピックスポーツ写真を新聞や雑誌に提供する。ラジオやテレビ出演も。「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」公式フォトグラファーを務めた後、現在は「(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」フォトグラファー。日本大学芸術学部写真学科、非常勤講師。

インタビュアー:高樹ミナ