2018年12月

2018年12月31日

続 活字金鋳造

 活字金は硬く、加工性が良い。フライスで削れるし、タップでネジも立つ。今野氏のブログにギヤボックスの蓋を鋳造で作られた件が紹介されている。うまい方法である。油が飛ぶから、ギヤボックスの底の部分には蓋が要るのだ。それを作るのは結構面倒だが、一つ作って型を取り、それを活字金で鋳物にすれば非常に良いものが簡単に大量にできる。採用したい。

 場合によっては、ギヤボックス全体を活字金で作っても問題ないだろう。そういう時には金型を作る方が良さそうだ。予熱しておかないと、最初のいくつかは失敗する可能性がある。冷えすぎるからだ。空気抜きの細孔もあると良いだろう。下手をすると押し湯で噴き出す可能性もあるから、理屈をよく考えて安全な構造の型を作るべきだ。

 人形とか、ストラクチュア関係の小物も活字金で作れば簡単だし、しかも丈夫である。シリコーン・ゴム型でも平気である。鉛では融解温度が高いので、壊れてしまう。3Dプリンタで原型を作ってゴム型を作り、それを活字金で複製するわけだ。かなり簡単にできそうである。
 今まで、活字金は比較的高価であった。しかし最近は値崩れしているから、いくらでも使える。この活字金の利用法をもっと考えるべきだ。

2018年12月29日

活字金鋳造

 友人から、活字金鋳造をやりたいと申し出があった。詳しく教えてくれとのことだったが、
「簡単なことだから一つだけ守れば良い」
と伝えた。

casting1 彼は ”とれいん” 464号の記事を見て心配になったという。
「うまく行かないような気がする」
と言うのだ。その記事では型は片面だけで反対側は板で押していると言う。薄い型では出来るわけがない。
「こちらの言うとおりにすればできる、くだらない記事は無視されたい。」と強く念を押した。
 その一つだけ守るべきことは、「押し湯を十分にする」である。

casting2 その号は博物館にあるので開いて見た。案の上、記事では融解した活字金をゴム型に板で押し付けている。粘土細工ではないのだから融けたのを押し込んでもダメだ。融けた金属の表面張力は極端に大きい。金属結合が強いからだ。水銀の粒がまん丸であるのを見ればわかる。シリコーン・ゴムの型は金属をぬらさないから、押し込んでも無駄な努力だ。10何回かの試作で台車枠2枚ができたそうだが、それでも奇跡に近い。写真2枚は、同号から転載した。

 二つの型の間に挟まれた空間に、融けた金属に圧力を掛けて押し込むしか方法はない。そのために遠心力を使ったり、水蒸気の圧力を使ったり、あるいは型を多孔質にして裏側を真空にしたりしている。大昔はそんな方法がなかったので、重力を使った。融けた金属の注ぎ口を高くするのだ。その分の圧力が、金属の表面張力に打ち克って、型の隅々まで押し込むのだ。高さは 10 cmほどでもかなり効く。金属は密度が大きいので、少し高くするだけで十分なのだ。活字金は固まるときに体積が縮まないので、高くしても問題が起きない。筆者は最高 30 cmほども、上げた。活字金を使う時は、まかり間違って湯口が先に固まっても、問題ないのだ。

 素晴らしいものができたと喜びの電話があった。指南した甲斐があった。同時に、この記事への不満を聞かされた。この筆者は一体何なのか。自称技師と言ってみたり、今回は「指導」と書いてあるではないか、と彼は怒る。確かに通読すると、そこには"サイエンス"が抜け落ちていると感じる。合金の性質、表面張力、ぬれなどの知見が全くない。これでは成功するのは困難だ。

 その号には、越後要介氏、佐野匡司郎氏、田野倉要介の素晴らしい工作法が紹介されているのに、あまりの落差に驚いてしまった。

2018年12月27日

続々 press

「16.5 mm軌間の車輪を 13 mmにするときのことをおっしゃっているのですか?」という質問を戴いた。その通りである。

 コンコン改軌という言葉があるそうで、叩いて目的の位置までずらすのだそうだ。叩いてずらすというのだから、それほど固く嵌まっているわけでもないようだが、出来れば避けたい。
 
 ゲージを決める断面がU字型のブロックを挟んで、プレスでぐーっと押し込むのが良い。衝撃を与えるということは、意外と大きな力で特定の部分を押すことだ。ジャーナル部(車軸の先端)が目に見えない程度潰れるだろうし、それが垂直であればまだしも、多少傾いているかもしれない。そうなると、走らせるとゴロゴロするだろう。叩く工具も問題だ。金槌を使う人が居るが、これは論外だ。銅のハンマを使うならまだ良い方だが、そんな人はまずいない。木槌で叩く人はいるだろうが、大きいから扱いが難しい。

 また、ピボット軸では深刻な問題だ。筆者はピボット軸を押す専用の先端工具を持っている。旋盤さえあれば作るのは簡単だ。尖端部を避けてテーパで受ける。テーパは完全に合っている必要はないから気楽だ。ギヤの押し込みにも便利である。軸にローレットを切って押し込めば、留めネジも要らず心が出て、楽である。ギヤをハンダ付けすると心は出にくい。

 この種のプレス機は高いものではない。昔アメリカで買ったものだが、最近は日本からでも簡単に買える。模型用として使うプレス機は、さすがにネコプレスでは大き過ぎるだろう。このギヤ式のプレスはとても使いやすい。


2018年12月25日

続 press

 プレス本来の使い道として、雌型に雄型を押し付けて、形を転写するということがある。この時雌型を作るのは面倒である。プロは雄型を作って焼き入れし、雌型の素材を焼きなまして押し付ける。凹んだものは硬くなっているので更に焼きなます。これを繰り返して雌型を作る。もちろん深いものは、ある程度まで機械で彫っておく。 

 雌型をこのような方法で作るのが面倒な場合は、ZAS(亜鉛を主体とした硬い合金)を流し込む方法がある。雄型を上向けにしてZASを融かして流し込むと雄型の通りに出来た雌型ができる。ブラス相手なら十分に成型できる。これをフライスで平らに切ると、抜き型さえできるほど硬い材料である。

rubber female die その昔、ある天才が雌型をゴムで作ってはどうか、と思い付いた。硬いゴムを敷いて、その上にワーク(材料)を置く。そこに雄型を押し付けるとかなりの成型ができる。ワークを焼きなましておくと綺麗に出来る。ゴムは天然ゴムで始まったが、現在は硬いウレタンゴムである。折り曲げもできるが、十分に角を出すのは、やはり溝を切った鋼製雌型が必要である。

 ブレーキ・ホィールはサラダ・ボウルのような形である。エッチングやレーザ・カットでできたものは平面であるから、これを整形して丸くしたい。こういう時にはとても便利な方法である。

2018年12月23日

press

PanaVice (3) 圧入、取り外しには不可欠の工具であるが、日本の模型人はあまり持っていないような気がする。
 叩いて嵌め込む、あるいは抜く、と書いてある記事をよく見るが、やめるべきである。曲がる可能性があるし、叩いたところが斜めに凹むことがある。

 筆者はこれと1トンのネコプレスを持っている。PanaPressは軽合金製で、250 kg重(2.5 kN)程度の軽作業用だ。車軸を抜いたりするのには十分な力がある。
PanaVice (2) 厚い木の板に取り付けてある。手前に出ているのがミソである。これがないと、てこを引いた時に力が入らない。補助具は熔接して作った。これも専用のを作っておかないと、水平が出ないから、軸が曲がる可能性がある。押すものはブラスの挽きものである。ある程度軟らかくないとワークに傷が付く。
 その取付けネジは、1/4インチのネジ(カメラの底にある三脚ネジ穴)である。旋盤上でダイスで切る。ブラスだから作るのは極めて楽である。たまに鋼製のピンを植え込むことがある。

Panavice (1) 専用の補助具(台)には裏に穴があいている。こうしておかないと抜けたものの行き場所がない。補助具を高くする手もあったが、低くしたかったので穴をあけた。

 車輪、動力機構を作るときにはプレスの出番が多い。

2018年12月21日

ロストワックス部品 出来

DSC_0216 正確にはインヴェストメント鋳造というべきである。ワックスは使っていないからだ。

 3Dプリンタで作った原型を埋没材 (investment) 中に埋めて焼成し、生じた空間に融解したブラスを流し込んで鋳造したものだ。拡大してあるので、3Dプリンタの積層面が見える。よく出来ている。六角ナットの角度はすべて違えてある。

 積層面は少し削れば見えなくなる。裏を少し削らねばならない。形成時に必要があって、厚みを少し増しているからだ。 丸棒に紙やすりを巻き付けて磨れば良い。この写真は積層面を目立たせる角度から光を当てている。

 さてこの機関車は何であろうか?実現しなかった機関車であるが、ある程度の設計は進んでいた。機関車の模型が完成したら、その写真をModel Railroader に送ってやると、たちまち載るだろう。注目を集めた機関車だったのだ。この機種には4という数字が付くはずであった。 

2018年12月19日

ブレーキ

 brake とは制動機のことではない。金属板を曲げる機械である。もちろん手動で曲げるものである。筆者は大きなものから小さなものまで4台持っている。

 一番良く使うのは、先回紹介したこの小さなベンダである。 何をするかというと、細いアングルを作るのである。市販品のアングルはろくでもないものが多いからだ。曲げ易いようにエッチングで筋を彫ってあったりする。
 エッチングはなました材料を使っているので、製品がくたくたである。腰がないので使えない。こんなものを貨車に使うと、連結した瞬間にめり込むだろう。

 ベンダで曲げると加工硬化して腰が強くなる。曲げてから切り落とす。先日ジャンク箱から見つけたアングルは曲がり方が甘い。虫眼鏡で曲がり角を見てみると、型が良くないことに気が付いた。メス型は単に直角ではいけないということを知らない人が作ったのだ。
h3244-f4ca2749af14ee6e7682644b12431d2e メス型はこんな形であるべきだ。溝の底に深い溝がなければならないのだが、それを知らない人が多い。この型を使えば、製品には独特の痕がつく。

 このブレーキは万力に吸い付かせて使う。便利なものだ。2 mmの板でも曲げられるから、モータ・ブラケットを作るときには便利だ。これはカタログ上の写真であって、筆者のはアゴの側面にネジで締める。両面テープで仮留めすると、ずれない。

2018年12月17日

Kleinschmidt氏の死去

 クラインシュミット氏が亡くなったとお知らせ戴いた。この二年ほど会っていなかったので、驚いた。
 かれこれ30年ほど、いろいろな形で接触のあった方だ。当初の10年は、筆者は睨まれていた。3条ウォームの真価についての理解をして貰えなかったのだ。
 筆者が現物を見せると驚嘆し、その後は非常に良い関係になった。部品のやり取りをし、訪問すれば歓待してくれた。鋭い批評も戴き、互いに助け合う関係になったのだ。

 彼は真の意味で技術者であり、たぐいまれな技能者でもあった。日本では技術と技能を分けることが少ないが、彼は山の向こうを見通す技術力があった。工学のエキスパートであり、熟練工でもあったのだ。彼に匹敵する人はPFMの Longnecker 氏くらいのものだ。 

2018年12月15日

将来のscratch building

 今、蒸気機関車の部品を、3Dプリンタで作成してもらっている。 ロストワックスの原型を3Dプリンタで作ったので、わけなく新しい模型ができる。小さな部品にも文字が入った製品ができる。凄い時代になったものだ。

 レーザ加工、3Dプリンタの組み合わせで上廻りは非常に楽にできる。下廻りは、やはり旋盤とフライス盤がないと出来ないだろう。

 TMSで200号くらいまでのスクラッチビルトの機関車で、素晴らしくよく走るのには、あまり遭遇しない。車輪の心が出ていない(偏心している)のだ。旋盤の無い時代のものは、それで仕方がなかった。ドリルレースという怪しい技法が今でも残っているが、動力部分に応用するのは良いとは言えまい。

 3軸のフライスを使えば、ややこしいフレームもプログラムするだけで出来てしまう。4軸の機械(x,y,z軸に沿った移動 + x軸の回転)が使えれば、超絶設計のものができるが、これはまだアマチュアには手が届かないだろう。

 こういう仕事を引き受ける人が増えてくるだろう。しかし残る問題はハンダ付けである。これには熟練が要る。正しい指導者から学べば、すぐできるようになるのだが、実際には難しいようだ。炭素棒ハンダ付けは簡単だが、その機械がまだまだ少ない。筆者が頒布したが、一体何%が稼働しているのだろう。中には買ったまま組まずに置いてあるという人までいる。この人は筆者の頒布目的を妨害している。
”組まずに取っておくと価値が出る”そうである。お気の毒な人である。

 もうあと一つは、ヤスリ掛けである。ヤスリ掛けを軽視する人が多い。プロのヤスリ掛けを見るチャンスがないからだ。姿勢も動かし方も、でたらめな人が多い。ヤスリの選び方から間違っている場合も多い。また、その準備もしていない。
 しかし、この種の仕事さえできればスクラッチビルディングができる時代になるだろう。楽に自作を楽しめる時代になるのだ。

2018年12月13日

covered hopper cars

 最初に住んでいたところがUP沿線であったことも大きな要因だが、このカヴァード・ホッパが好きである。一体何輌あるのか数えたことは無いが、おそらく80輌以上あるだろう。ブラス製、木製、プラスティック製の混合である。博物館が開業したら、すべての roster(在籍表)を作らねばならない。

 先回の大捜索で、ブラス製とエポキシ鋳物製がいくつか発掘された。その話をすると、友人が、
「dda40xさんのところには埋蔵金がありそうだね。」
と冷やかす。確かに、もうないと思っていても、再調査で数輌ずつ発掘される。
 ブラスの定尺板の使い掛けもかなり出てきた。何枚か買ってきて一部を使い、それをどこかにしまって、忘れるのだ。戸棚の後ろの隙間から3枚も出て来たのには、さすがに驚いた。埋蔵金属は、確かにある。
 
 さて、発掘されたホッパは時代がやや古い。1960年代の車輛だ。それらは、Locomotive Workshopの半製品、破損品である。アメリカで安く買ったものばかりである。
 Car Cyclopediaを見ても見つからないタイプもある。そうなると、ごく適当にごまかして作るしかない。塗装して編成に紛れ込ませれば、誰も気が付かないものだ。手持ちのディカルの使える形にまとめてしまおう。

 塗装するだけの生地完成の状態になったものが40輌ほどある。1日に10輌は塗れないので、かなりの日時を要する。これから天気が良い日を選んで、順に塗っていきたい。

2018年12月11日

華奢に作る

 先回の通風扉を友人たちに見せたところ、針金が細くて実感的だと言われた。久し振りに褒められて、嬉しかった。細い線を等間隔に張るところが見せ場だったからだ。
 華奢(きゃしゃ)に作るのは難しいものだ。太いものはオモチャ的で気持ちが良くない。なるべく細く仕上げたい。

 プラスティックの貨車はハシゴ等が太くて実感がない。これを薄く、細くしたい。切り外してブラス製にするとかなり良くなる。さらに細くすると、強度がないので触ると、曲がって壊れてしまう。針金類は、リン青銅かステンレスのバネ線にする。

freight car detail 10年前にアメリカで買ったプラスティックの真空成型の貨車は、そのような部品が薄鋼板で出来ている。鋼板は堅いから細くできるし、壊れない。
 写真の左から、
① 木製キットにブラス製ディテイルを付けたもの、
② 真空成型に鋼板部品を付けたもの、
③ エポキシ鋳物の貨車、
④ プラスティックのインジェクション・モールドの太い部分を切り離したもの
の順である。

①はこれ以上細くできない。
②は十分細く、塗装しても実感的である。
③は未加工である。細い鋼板製アングルを作ってみよう。
④は、ハシゴの横桟を切り取った。細いステンレス・バネ線を貼るつもりだ。

 実物は実に細い。普段模型しか見ていないので、たまに実物を見るとドキッとする。ハシゴなど透けて見えないくらいだ。 


2018年12月09日

反応速度

 寒くなってきた。暖房を入れるのだが、経費節減で、一人で作業している時はエアコンを作動させない。木工作業など、体を動かす時は、多少寒いくらいの方が効率が良いこともある。

 接着剤の硬化速度が明らかに小さくなる。エポキシはもちろんのこと、木工用の接着剤も固まるのが遅くなる。木工用は夏なら、3時間で接着完了であるが、5時間は見なければならない。スーパーXも固まりにくい。

 二液エポキシ接着剤は多用しているが、5分間型でも10分ほどは固まらない。working time (ずらしたりすることができる時間)が長いので、一度に作業する量を二倍程度にすることができる。 ある意味では都合が良い。
 ワーキング・タイムが長いものは木材には適する。繊維の間に浸み込んで硬化するので、非常に強く付く。

 反応速度は常温付近では、10度違うと2倍程度になるというのが化学の常識である。今日は 13 ℃であった。いつもは 24 ℃ほどであるから、ちょうど2倍程度の時間が掛るということだ。

 エポキシ接着剤を塗り、ワークを置いてテープで仮留めをする。ゆがんでいないことを確認して、重しを載せたり、クランプ締める。戸締りと電源Offを確認して帰宅する。翌朝になれば固まっている。


2018年12月07日

続 watermelon car 

 通風扉(ventilation door) を作らねばならない。それらしく作るだけだが、部品数が多く大変である。なるべく簡単に作る工夫をした。
 まずt0.6快削ブラス板を固定して、Φ0.5のエンドミルで溝を掘った。間隔はインチサイズだから、DRO表示をインチに切替えて削った。こういうことは楽になったと思う。それを短冊に切り、型紙の上に並べる。 

ventilation door1 Φ0.5のリン青銅線を入れるのだから、深さを0.25 mmにするのが普通なのだが、経験上浅くする。0.15 mmである。こうすると二枚合わせた時、底衝きしているのである。板は多少は反っているので、厚さ方向に一定の深さに削れる訳ではないのだ。線が中で踊るよりも、底衝きしていた方が揃って見える、というのが筆者の意見である。
ventilation door2 手前側の一枚にリン青銅線をコテでハンダ付けする。ハンダは多めにする。この写真はそれを表から見たところである。そしてフラックスを薄く塗った二枚目を重ね、炭素棒の太いピンセットでつまんで通電すると、1秒で完了である。冷えるまでそのまま3秒ほど待つ。

 最初のハンダ付けで、線の配置が多少ばらついても、重ねて挟むと有無を言わさず、揃った位置に落ち着く。隙間にはハンダが埋まる。

ventilation door 針金が留まったら、横桟の端を仕上げて縦桟を付ける。ハンダ付けはアッという間に終わる。あとはラッチとか小さな金具を付ければ、塗装への準備が整う。
 塗装後に、ドアをはめて下のレールに外れ留めを接着すれば完成だ。  

2018年12月05日

続々 ユニヴァーサル・ジョイントの問題

 もう一つ気になるのは「軸の曲がりの角度」で2軸が一直線なら不等速伝達は起こらない。(当たり前だが、それなら自在継手は要らない)。速度の変動率は軸の曲がり角度でも変化する。もしかするとオーバー修正などしないか?(図3)モーター軸より台車側の角度が大きいですね。そこで”ゴー式”珍案。モータも床板に載せず、反対側の台車に載せたらどうでしょうね。これなら両方の継手がほぼ同一角度に曲がりますよ(図4)。何、「床下器具がなぎ払われる?」私なら当たるほうの床下ユニットを、曲線外側にスライドさせて押し出してしまうんですけどねぇ。
universal joint 2
 

 そういえば、トラック(台車ではなく貨物自動車)の推進軸はスプラインで伸縮しているので、事故で外れたのを、よく知らぬ人が位相を考えずにはめ戻したところ、猛烈な振動で、2次事故を起こしてしまったなんて、戦時中よく聞きましたよ。
 ともかく、「中間軸のフォークエンドは、『同じ位相』でなければならない」というのを覚えていただいただけでも、性能が上がると思います。お試し下さい。

                              (2009.1.23)
 コメントを戴いている。二つのジョイントは完全に等角にならなくても、不等速は十分に打ち消されて、調子が良くなる。曲線の入り口に緩和曲線が使われている時は効果が顕著である。
 伊藤 剛氏のアイデアは筆者も使おうと思ったが、軸箱の上にモータが直接載ってしまうと、バネ下質量が大きくなる。さりとてモータを浮かせると、その部分が等速でなくなるので、諦めたことがある。
 天賞堂の模型には使われていたというのは、指摘されて思い出した。確かにそうである。1960年ころ”子供の科学”、”模型とラジオ”で見た覚えがある。当時としては、高級な伝導装置として紹介されていた。バネはない。お知らせ戴いたように、位相は見事に間違っている。大人になってから見て、こりゃ駄目だと思ったのは、そこだ。平ギヤが無潤滑でむき出しというのもアウトである。平ギヤはウォームの後に使うべきものであろうが、この場合は応用不可だ。


2018年12月03日

続 ユニヴァーサル・ジョイントの問題

 この模型大学の記事は発表前に筆者のところにも送られてきた。
「dda40x君も登場するからね。」
ということであった。一部を紹介する。

UV joint by GO Ito
 Aのモーター軸からBの中間軸を廻し、さらにこの軸で動力を伝えるとしましょう(図1)。A軸は当然等速で廻ります。ところがB軸はこれを受け取って「不等速」で廻る。いわゆるビリビリ振動のようなことになります。それがさらに次の自在継手で同じ事をされて、C軸はビリビリがさらに増幅された形で廻りますから、大変に大きな音まですることになります。困りますね。どうしましょう。 
 簡単なことです。自在継手の付いた中間軸では、中間軸の両側にあるヨーク(二股)は、必ず同じ位相に揃えること(図2)。そうすれば、2つ目の継手は「不等速」運動を受け取って、不等速が発生した時の逆順で回転を伝達するから、C軸はモーターと同じ等速運動に戻るのです。中間軸は不等速のままですが、質量が小さいので振動してもほとんど気にならないでしょう。
 
 NMRC(名古屋模型鉄道クラブ)例会でD君
(dda40x) が、友人が「私の電車はカーブに入ると凄い音がするのだが・・・」というのを聞いて、「中間軸の位相を変えてごらん」とアドバイスしたところ、「まったく静かになった」と喜ばれたそうです。それ以来、私も大いに気にしています。
(引用続く) 

2018年12月01日

ユニヴァーサル・ジョイントの問題

 阿里山のシェイの問題が明らかになって、多くの方から連絡を受けた。1960年代から様々の媒体でシェイの存在、運行状況が紹介されてきた。どの写真も位相が間違っているとのことである。それに気付かなかった日本の鉄道趣味界の底の浅さを残念に思う、という内容のものが多い。全くその通りなのである。自称技術者の人たちがどうしてそれに気付けなかったのかは、全くもって不思議である。

 それを受けて、northerns484氏が、数学的な証明を紹介されている。数学に自信のある方はじっくり取り組まれると良い。結論は単純である。機構学の教科書にも証明方法が載っている。この種の証明は図が勝負である。うまい絵が描いてあると一発でわかる。

 最近の記事は、「ユニヴァーサル・ジョイントの角度を同じにすれば等速になるので、ジョイントの位置を考える」ところまで来ている。ここまでは筆者も考えた。
 しばらく前の伊藤剛氏のアイデアが面白いので、紹介する。この記事は「模型大学」の2009年2月号に載っている。そこには筆者も登場しているのだ。

universal joint 2 二つのジョイントのなす角が等しくなるようにするのは難しいので、モータを動かすのだ。”えへへ冗談ですよ”と書いてあるが、無視できないアイデアである。
 モータはもう一つの台車の上に載せるとある。


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