2019年01月

2019年01月30日

線路規格ゲージ

 昔は線路用のゲージを売っていた。HO用なら、NMRAのも見た覚えがある。最近はあまり見ない。ほとんどの人が出来合いのポイントを買うからであろうか。それが正しく規格に基づいているかどうかなど分かりはしない。

 O scaleのNMRAの規格に則ったゲージは今でもある。昔買ったステンレス板打ち抜きのものである。建築限界全体も示す大型のゲージは、フロリダのメーカーがブラスの 1 mm強の板で作っていた。これはたくさんの板を重ねてボルトで締め、外形をフライス加工したものであった。ブラス製だから多少軟らかく、ポイント作成時に使うと磨り減る惧れがあった。

 13 mm や 24 mmゲージ、12 mmゲージの人たちは、身内でゲージの頒布を行っているだろうか。今ならステンレスの板をレーザで切り抜いたものを作るのは容易である。試作して実測寸法を調べて発注すれば良い。その程度の努力はするべきだ。

 ゲージ無しで正しいポイント作成は難しい。出来ないことは無いがやる気が失せる人も居るだろう。標準ゲージがあれば、市販品のポイントがいかにおかしいかも分かる。線路ゲージが狂っていることにも気が付く。

 枕木を切ってずらすくらい、訳はない。線路を中心で切って縦割りにし、打ち直せば良いのだ。直すのがポイント部だけなら、大した作業ではない。車輌工作に投入する手間の1/10で解決する。フログのウィングレールを太くする方法は簡単で効果が大きい。


2019年01月28日

よく走るためには

 たびたびこのブログで書いたことだが、走らなければ意味がない。みかけが多少良くできていても、脱線するようでは零点だ。 
 ポイントを滑らかに渡り、直線はまっすぐ走るだろうか。曲線を出て直線になっても首を振ったまま、斜めに走る機関車がたまにある。

 正しい規格に基づいて作られた線路であるなら、脱線は起こらない。もちろん、車輪も正しく作られているべきだ。
 
 こんな事は当たり前なのだが、実際に車輛を見るとそうでもないことが多い。先輪の厚みを見ればよく分かる。薄くする人の気が知れない。車輪のフランジが薄ければ、それは脱線機であって、脱線しないほうがおかしい。

 高性能な車輪を作ろうと思って、線路規格を読み込み、ある程度の試作品ができたので、吉岡精一氏のところに見せに行った。彼はこわい顔をして、
「新しい車輪を作るときは覚悟がいるぞ。万単位の車輪を作る自信があるか?そういう製造所はあるか?」
と問うた。
「あります。懇意の量産旋盤屋がやってくれます。」
と答えると、
「金が掛かるぞ。高級車が買えるほどの金を投資しなければならない。しかもそれをみんなが買ってくれなければ、何の意味もない。一挙にマジョリティになるしか方法はないのだ。」
「そのつもりです。私自身1千軸必要です。とりあえず3千軸の買い手はあります。アメリカにも2千軸ほど売れますし。」
と言うと、
「それなら良し。俺も500軸買おう。」
ということになった。

 それから、10年ほど経ち、
「2万軸を超えました。」と報告したところ、吉岡氏は満面の笑顔で、
「よくやった」
と褒めてくれた。既に日本ではde facto standard になったのだ。デファクトスタンダード(事実上の規格)になれたのはJORCのクラブ員が大量に買ってくれたからである。価格は安く、利益など無いも同然だ。その価格では模型店が手を出したくないからである。その後市場はほぼ飽和し、売れ行きは落ちたが、時々注文がある。アメリカからは「2000軸欲しい」などと言ってくる。
 祖父江氏の機関車にはこれが採用されている。

 その後売れ続けて3万軸を超えた。このLow-Dは新規格ではない既存の規格の中で、必要な条件を完全に満たす車輪だ。最高の性能を出すことができる。

 相も変わらず能天気な人たちは、筆者にProto48の車輪を作ってくれとか、タイヤの薄い車輪が欲しいと言ってくる。救いがたい人たちだ。

 新しい規格を話題にする方は、上記のことを思い出して戴きたい。覚悟が要るのである。たくさんの人が買わねばならない。


2019年01月26日

続 日本の”ファインスケール”という言葉

 たくさんの方からメイル、コメントを戴く。掲載不可とあるので、一部しか紹介できないのは残念だ。
 
 「それなら、軌間が縮尺通りというのを英語で何と言うか?」という質問が多い。それは、名詞なら ”correct gauge" 、文章なら "The gauge is true to protptype." であって、”fine” という言葉とは全く無縁である。

 各ゲージに規格は一つというのは賛否両論だ。先回の話は少々説明不足であったことは認めるが、全く筋違いの反論もあった。正直なところ、筆者はHOについての知識は少ない。しかし、O の1/48と1/45の違いがない話から、推測は出来る筈である。よく走る模型を作ろうと思えば、既存の規格を尊重すべきである。規格はmajority(大部分の利用者)が尊重しているものである。よりfineな規格を作ろうとしている人たちは、それがマジョリティではないし、多分マジョリティにはなりえないことを知っているにも拘わらず、こうあるべきだと説く。それはマジョリティの人から見れば、面倒なことをやっているとしか思われない。しかも車輪には熱心だが、線路を改良する人が少ない。線路をいじると、手持ちの車輛が走らなくなるからと言う。
 Low-Dは、既存の規格線路に完全に適合する最適値を導き出している。


 Empirebuilder氏が、「コメントの方は、何とかして日本向け規格を作りたいという意志が透けて見えます。非現実的な模型の話を持ち出しても仕方がありません。NEM規格も持ち出す必要はありません。無用な知識開示でしょう。」と書いてきた。

 
 さらに続く。

 日本のHOの車輪のことは、NMRA規格に準拠する規約がないことが問題ではなく、そういうつまらない車輪を流通させて、黙って見ている雑誌に大きな責任があると思います。製品を提供してもらって提灯紹介記事でやっている出版社に期待はできません。メーカーは客が欲しがる製品を作っているだけと思います。
 「
NMRA Standardに準拠したHOの線路とは規格が合わないので」とありますが、NMRA Standardに準拠したHOの線路がないことを知らないことにはびっくりします。TTのポイントが規格外とは気づいているようですが。 

 日本型12mmの経緯は知りませんが、TTの線路を使おうとしたことが、そもそもの間違いのもとのようです。羊頭狗肉のゲージですね。12mmゲージャーは、まんまと騙されているように思います。

 結論として筆者は、新しい規格を出される方は、車輪、線路を同時に、しかも大量に供給できるという前提で話を持ち出すべきであると思っている。そうでないと、線香花火のように消えて行ってしまう。
 
 様々な意見が飛び交っているが、稲葉氏が沈黙を保っているのは不思議である。



2019年01月24日

日本語の ”ファインスケール” という言葉

この題材を扱うようになってから、アクセス数が非常に増えて来た。コメント、メイルをたくさん戴いて、驚いている。

 先に結論を言おう。もう、「ファインスケール」という言葉を使うのをやめよう。理屈を理解している人にとっては迷惑千万である。「軌間が縮尺に近いとファインスケール」と言うべきかは、疑問が残る。「ファインである」という言い方は問題ない。コースに対するファインであることは疑いのない事実だ。

 ファインは細かいだ。美しいという意味もある。それにスケールを付ければ、なんとなく気分が良くなる人がいるのだろう。しかし、米語にはない使い方である。


 コメントを投稿して戴いたEmpirebuilder氏と意気投合したところは多々あるが、その中でも、「線路規格は縮尺を問わず一つである。」というところが大切である。

 HOでも16番でも、On30でも同じ規格であるべきなのだ。1/80の規格はNMRAの規格と異なるわけがないのだが、これらは違うと思っている人がたくさん居る。

 30年ほど前、JORC(Oゲージの団体)が発足するときに、1/45、32mmゲージの規格を決めようと言い出した人たちがいて、驚いた。筆者にも声が掛かって、規格委員になってしまった。
「冗談じゃないですよ。NMRAの規格と異なるものを作ったら、皆さんの持っているものは走らない可能性があります。」
と叫んだのだが、全く理解しない人が半分くらい居て、紛糾した。2年くらい訳の分からない事をやっていたようが、結局何も決まらず(当たり前である)流れた。この時、正しいことを言ったのは、筆者の他に吉岡精一氏だけである。議事録を見ると、とんでもないことがたくさん書いてあった。筆者は、ばかばかしいので、最初の一回しか出ていない。

 その後、筆者の提供した車輪を大半の方が使って、何の問題も起こらなかった。線路はNMRA準拠のものを輸入したり作ったりしている。1/45 と 1/48 の線路が違う訳がないのだ。今でもおかしなことを言う人は、たまにいる。
 輪軸、線路の規格は足し算、引き算で理解できる、小学生の算数なのだ。これが分からない大人がいるというのは一体何なのだろう。

2019年01月22日

続 長文のコメント到来

 ファイン化について、HOの世界でも同じようなことが起こっています。車輪の厚さがだんだん薄くなり、ファイン規格よりファイン化してきました。あるメーカーの人に、HO規格から外れた車輪をどうして作るのか聞いたことがありますが、
「問題があるのは承知しているが、客の要望なので仕方がない。」
と言っていました。
 私はNMRA規格の車輪をできるだけ選んで使用しています。規格外れの車輪で問題がないのか気になっていましたが、やはり問題になっているようです。問題は車輪がファイン化しているにもかかわらず、線路は旧態依然していることです。フレキシブルレールが16.5 mmではなく17 mmであることは何とかなっても、ポイントはNMRA規格外(ファインと逆方向)です。あるブログのコメントに、車輌と線路の相性があり脱線する場合がある、と書いてありましたが、線路と車輪の物理的関係に相性があるとは笑止千万です。現在発売されているファイン形状に似た車輪は、バックゲージが変わっていないことを付け加えておきます。

 フログの欠線部については、NMRAの線路の規格でも”キモ”と言える部分で、結果としてハンドスパイク以外に対策はないと感じたところです。HOにおいても問題は同じで、既製品のポイント通過時は落ち込み、音がします。脱線の原因となることも多々あります。自作してフログを規格通りにすると、落ち込みもほどんどなく滑らかに走行します。OもHOも同じですね。ただ広いフランジウェイが当たり前になっているためか、バックゲージが狭い車輪が見かけられ、ガードレールにぶつかることがあります。入線前の車輪チェックは必須です。薄い車輪を何とか通過させるために、既製品はフランジウェイを埋めています。何十万円もする超精密機関車がフランジの先端で走行するわけです。プラレールと同じです。私にはまったく妥協できないところです。脱線にもつながります。私のレイアウトでは、ハンドスパイクのポイントでの脱線はほぼゼロになりました。既製品のポイントも使っていますが、いいろいろ調整しても安心できません。余談ですが、自作のポイントをヨーロッパのハイフランジが問題なく通過したのには、驚きました。フランジウェイを埋めていない成果?です。 

 貴ブログは、私の知っている限りでは、唯一、線路と車輪の関係を正しく理解して書かれていると思います。実際にやってみて得た私なりの結論が、こちらで理論的に証明されています。車輌偏重の日本の鉄道模型の弊害が、線路についての無理解となっているようです。
 ”フランジウェイを狭くすると、走行性能に犠牲云々”とウィキペディアにありますが、私の場合狭くしたので問題がなくなりました。

               <おわり>  



2019年01月20日

長文のコメント到来

 時々コメントを戴くEmpirebuilder氏から、長文のコメントを4つに分けて戴いた。それを、二回に分けて掲載する。ハイライト部は筆者(dda40x)による。 


 正縮尺だ、ファインスケールだ、と唱えられる方の多くは、縮尺や軌間といった判りやすい数字だけをうんぬんされていて、車輪の厚さやバックゲージといった走らせるための基本に無頓着なのは残念です。一度でも自分でポイントをスパイクしてみれば判る事なのですが…。
 HOn3のレイアウトを全線ハンドスパイクで作ったことがありますが、線路と車輪をNMRAゲージに合わせて作れば脱線皆無で、なるほど模型を走らせている国の規格だな、と感心しました。それに比べるとHOn2-1/2は、Nゲージの車輪寸法がメーカー毎にバラバラなので苦労します。車体寸法の1/80と1/87の差以前に車輪寸法の差が大問題なのですがね。
 
 私はHOゲージャーですが、ファインスケールをNMRA規格で知りました。よりスケールに近く、スタンダードと比べると実物に近く見えました。ただあまりに繊細で、見かけはいいのですが、採用を躊躇しました。その後、proto がさらにスケールを意識して出てきましたが、ファインを採用した模型を見かけることがない状態で、proto は鉄道模型としては居直りのように感じました。もはや鉄道模型ではなく博物館模型ですね。モーターを搭載してますけど。
 そのためか、写真で見ると実物と間違えます。またいずれの作例も、ディテール付きの線路上に車輌が置いてありました。したがって、私の理解ではファインは「縮尺に近い」という意味です。 

 12 mmが出てきたときファインスケールを名乗っていましたが、ファインスケールと名乗っていながら、レールはメーターゲージ、TT用を流用すると書かれており、NMRA規格のファインスケールの定義からすると、”新幹線車輌を作ってとりあえず京急の線路上を走らせること”と同じレベルと思いました。ただ1/87 だからファインと名乗ったようですね。NMRAの規格を知らなかったのでしょうか。同じ用語を違う意味で使われると混乱します。レールメーカーの社長が、
「『12 mmの線路を作れ』と言われるが規格が、出てこない」
と言って困惑していました。さすがにこの社長は規格を理解しているな、と感心しました。12 mmが12.5 mmにしなかった理由が線路の流用にあるとしたら、ファインをどういう意味で使ったのでしょうか。 


2019年01月18日

Finescale Railroader

Finescale Railroader 日本では、ほとんど知られていない雑誌である。 雑誌名が
Finescale であるから、正確に縮尺された軌間の模型ばかりかと思えば、そうでもない。
 手元に40冊ほどあるので、正月にパラパラと読んでみた。”縮尺と軌間が一致しているものをfinescaleと呼ぶ”、という記述には遭遇しなかった
「お前の英語力はあてにならないから、信じられない」
とおっしゃる方には御貸しするので、丹念に解読されたい。往復の送料はご負担願う。汚したり折ったりしないよう、お願いする。

 先日RM Modelsの10年ほど前の記事を見ていたら、13 mmゲージの秀作を紹介していた。
 確かによくできているのだが、フランジ、タイヤがまだ厚い。完全な縮尺模型ではない。その記事にはファインスケールと書いてある。これは単なる無知であろう。

 あるウェブサイトでは、自分の商品を売らんがために、そういうことを書いている。これは公正取引員会の仕事を増やすことにもなりかねない。優良誤認と言われても仕方がない。さすがにそれは一回きりで、続きがない。おそらく誰かに何か言われたに違いない。
 これは教養の問題である。その言葉がどういう場所に使ってあったかをよく検証してから、日本語に入れるべきだ。

 このアメリカの雑誌は、ひたすら細かく作り、なおかつ時代考証を正確にして、躍動感のある模型を作ろうという姿勢を保っている。一番多く出てくるのは、1/20.3サイズ、45 mmゲージである。これは縮尺と軌間が完全一致だ。とにかく大きい。博物館には15輌ほどある。 

2019年01月16日

続々 finescale とは

 ゲージは縮尺値に正確でなくても、筆者はあまり拘らない。ただ、広い場合には、蒸気機関車の設計で困ることが多い。タイヤ厚も本物より大きいので、ロッドの収まりが良くない。クロスヘッドを外に動かして、ピストンロッドの中心からわずか外に出す例が多い。そうしないと走らない。Oスケールは、実物より6%強広い。

 車輪の厚さについてこだわる人が多い。薄くなければファインではないと信じているのだろう。ポイントさえなければそれでも良いのだ。実際にはポイントがあるから、フログの欠線部のことを考えねばならない。

 Low-Dの設計では、欠線部で落ちないことが優先順序のかなり高いところにあった。だから、車輪厚さはやや厚い。既製品の中には意外と薄いものもある。それらは、ことごとくフログの欠線部にはまる。フログは削れて凹み、ますます落ち込む。それは、Oスケールでは決して無視できない。通過頻度の高い本線では深刻な問題だ。筆者のダブルスリップを滑らかに通過する動画を見て、
「ありえない静かさだ。」
と言った人は多いが、
「なぜか?」
と問うた人は少ない。

Wheelsets この写真をご覧戴きたい。NWSL や ATLASと、Low-Dとの違いである。アメリカ人は薄い車輪が好きな人が多い。それがどういう結果をもたらすか、は考えない人が多いようだ。説明してやっても、半分は上の空だ。しかし、現実にLow-Dだけの車輛群を走らせてやると、仰天する。あまりにも静かで、ポイントで動揺しないからだ。この写真を撮るとき、手前から向こうに並べたものを望遠レンズで斜めに撮っているので、上の方はより狭く見える。手前の三つは同じゲージである。

Proto48 vs HO wheel Proto48の車輪が少し見つかった。こんな感じである。右はHOの13.5 mm径車輪だ。フランジはHOより薄い。
 これが間違いなく走る線路を用意するのはなかなか大変なようだ。先日ポイントのフログは8番と書いたが、それは標準軌の場合である。狭軌ではもっと大きな番手が必要になる。作図して確かめられると良い。作図をしない人が多いらしく、この質問は多い。作図は必要最小限のことである。

 ファインスケールという言葉を持ち出す人は、自分の提唱している車輪規格を売り込みたいのだろう。それは他より優れている、と信じているのだろう。決してそうではないのだが気が付いていない。売り込みたいがゆえに、禁じ手に手を出している。ファインを考えるなら、線路規格と同時に考えねばならないのだが、そこまで頭は廻っていないとみえる。

 車輪の形状は長年の積み重ねで、このような状態に決まってきたわけだ。「よく走る」ということを考えると、ファインな車輪というのは、様々な点で問題が大きくなる。その点、大阪合運でお会いするHOJCのグループの方達は、よくやっていらっしゃると思う。筆者は、そこまではとてもできない。
 すべてをゼロから始めたからこそできるのだ。Oスケールには100年以上の歴史があり、ある程度形が決まってからの数十年の遺産があるので、それらとの共存を考えると Low-D しか方法がなかった。当博物館の線路はRP25が来ても通るようになっている。そこに Low-D を通している。非常に静かである。大きな軸重の機関車が来ると、ドスドスという音がするが、落ち込んでいるのではない。
 Proto48の連中はあまり深く考えずに、実物の完全縮尺をしたので、問題が噴出している。 

2019年01月14日

続 finescale とは

 早速いくつかコメントとメイルを戴いている。そのすべてが筆者が予想していた方達からであった。HOスケールとは何かという計算方法を教えてくださった方もあるが、その程度のことはわきまえている。
 3.5 / 304.8=1 / 87.08 である。有効数字という概念を理解していれば、同じことであるのは自明だ。

 森井氏は非常にいいところを突いて来られた。今回書こうと思ったところだ。先回は、筆者は意図的にフランジ高について書いた。そうすれば、それについてきっとたくさん書き込みがあるだろうと思っていたのだ。
 実は、ファインか否かはフランジ高にはあまり関係がない。フランジ厚さを論じなければならないのだ。厚さを決めると高さは必然的に決まる。この事は殆どの方が気が付いていない。NMRAのおかしなフランジ形状でなければすぐ決まってしまう。

 フランジ厚さが薄くなって、フランジウェイが狭くなるとファイン化するのである。back to back バックゲージは広くなる。Low-Dの形状を決める時は、そこで吉岡氏と意見が一致した。
「そこに気付いている模型人に会ったのは、君が初めてだ。」
と言われた。
 既存の車輪との整合性を保ちつつ、よりフログを狭めることができる。非対称フランジウェイを採用すれば、もっと良くなる。タイヤの厚さは、この際あまり関係がない。

 先回の写真をご覧になった方から、
「ATLASはファインなのですか?」
と聞かれた。ファインではないのだが、横のとんでもない車輪を見ると、ファインに見えてしまう。実はその比較が大切なのだ。
 鉄道模型が進歩してきた過程の中で、コースから脱却してより実感的な車輛、線路へと舵を切ったのだ。現在ほとんどの皆さんが楽しんでいる鉄道模型は、かなりファイン化しているのである。もちろん、Low-Dはファイン化しているが、いわゆるファインではない。走行性能向上を第一目的としているので、譲れないところもあるからだ。
 十分にファインであると感じるのは、コースとの対比をしているからである。
 
 ”fine” と ”ファイン”の違いについては意外な質問を戴いた。これについて、他意はない。お気づきの方もいらっしゃるだろうが、当ブログでは、話題になる概念について最初はローマ字綴りを書き、あとはカタカナで近い発音を示している。

2019年01月12日

finescale とは

 最近、表題の表現が気になる。何かおかしい。

 筆者はゲージ論には興味があるが、議論はしたくない。ルールを決めずに議論しても無駄だからだ。あちこちで罵り合いに近い論争を見聞きするが、不毛である。

 あるサイトで、こういう表記を見た。
「縮尺通りの軌間を持つ模型をファインスケールと呼ぶ。」
 一瞬、何を言っているかわからず、数秒経ってから、
「ああ、そういうことなのか。」
ということになった。そういうこと、というのは肯定ではない。自分の言いたいことを他に押し付けるための、洗脳の手段だということに気付いたのである。
 HOスケールの12 mmゲージについて言えば、
 1067 ÷ 87.08 = 12.25
であるからもう破綻している。この0.25 mm は実物なら、21 mm以上である。そしてフランジ高は実物の2倍弱だ。

 そういうことを言うなら、アメリカの1番ゲージの方が良い。1/32 で 44.85 mmゲージだ。
 1435 ÷ 32 = 44.84 mmとなる。しかし、これをファインスケールモデルだという人には、会ったことがない。フランジは高く、2.5 mm以上あるものが多い。実物なら0.8 mm程度だ。

coarse wheel sets "fine" という言葉は "coarse" の対語である。コースは荒っぽい、図太いなどと言う意味である。ライオネルなどの車輪を見ればわかる。イギリスのコース車輪の現物があるから写真をお見せする。これはOゲージなのだが、Nゲージの車輪を4倍に拡大するよりも、タイヤが厚いような車輪である。念のために申し上げるが、これらはすべて32 mmゲージを走る。しかし、コースの車輪は博物館の線路は走れない。フランジが高過ぎて枕木の上を走る。もちろん、ポイントも通れない。ライオネルの線路ならば、かろうじて通るが、フランジが当たっている。
 
 対する "fine" は実物を模したもので、フランジが薄く、低い。タイヤ厚もはるかに薄い。NMRA推奨値の車輪は、当然のことながら、"fine"ではない。コースとファインの中間よりも少しファイン側に寄っていると感じている。

 ファインの模型でなければならない、という人はたまに居る。これは非常によく整備されたレイアウトを持っていないと走行させられない。サスペンション(懸架装置)もよく工夫されていなければならないだろう。曲線半径は実物の縮尺通りでないと難しい。筆者の友人でProto48に凝っている人もいるが、小型機しか走らせられないとぼやく。アメリカでさえ、大型機の走るレイアウトが難しいということだ。半径3 m以上、フログは8番以上が必要だからだ。

 日本で一般人が楽しんでいる模型は、ほとんどの場合、ファインではないのだ。最近のウィキぺディアには、”広すぎる軌間を縮尺に近づける作業を含む場合もある。”と書いてある。誰が書いたのかはわからないが、早々に修正されることを望む。


2019年01月10日

鉛合金の鋳物

 コメントを戴いている。

 既存の模型雑誌に出ていた「ホワイトメタル」は、やはりソフトメタルのようですね。 
なんであんなに形が甘いのかと思ったら、収縮が第一要因なのですね。 
この一連の流れだとメーカーと言えど、押し湯を理解せずに作っていたのか、と思いました。 
遠心力や重力を使っていたら、ソフトメタルでもだいぶ出来栄えは違っていたのかもしれません。

 内容が、いま一つ掴み切れないが、おっしゃりたいことは分かる。鋳物の中に形が良くないものがあり、それが収縮によって角が出ていないということなのだろう。筆者は現代の日本製の部品を知らないので何とも言えないが、そういうものもあるのだろう。昔のことを言えば、床下器具のぼてっとした部品は押し湯が足りなかったのは明白だ。材料は活字金ではない安価な鉛合金を用いている。柔らかく、ニッパーで切ると、ねちっとする。活字金はぱちんと音が出て切れる。
 
 最近の部品は非常に細かくできているものが多い。それは遠心鋳造による。ホワイトメタルの部品はほとんどこの方法による。ゴム型を作る。円盤に放射状に作った原型をゴムに埋没し、ゴムを二つに分ける。原型を取り去り、その放射状の空洞部に遠心力で熔湯を流し込むと数秒で固まる。それをゴム型から取り出して、枝を切れば良い。枝の部分は融かして再利用している。
 この方法では圧力が大きくなるので、ゴム型の隅々まで湯が廻り、部品の角が完璧に出る。この遠心鋳造による方法は、ロストワックスによるブラス鋳物に比べ、はるかに安価である。


2019年01月08日

続 角倉彬夫氏の鋳造法 

 ほとんどの金属による鋳造では、湯口の円錐形の中に、大きな凹みができている。それが見えると、多分成功である。
 活字金ではそれが全くない。場合によっては少し膨れ上がる。ということは、湯口を無理やり急冷すると、圧力が鋳型の中に生じるわけだ。膨れると言っても大したことは無い。縮まないと表現したほうが間違いがないだろう。型の中に隅々まで注入されれば、何の心配もなく、素晴らしいものができる。

 角倉氏のは石膏型だが、シリコーンゴムを使えば、アンダーカット(Fig.1のB)があっても良いのだ。二回に分けてシリコーンを注型しなくても、一回でシリコーンゴムの中に埋没し、横からナイフでギザギザに切って、型を二つに分ければ良い。ギザギザが型のずれを防ぐだろう。空気抜きは、よく切れるナイフでV溝を付けても良いが、シリコーンゴム型を圧迫して隙間を無くすときに、何かのパウダを合わせ目に軽く塗るだけでも用は足りるだろう。

 実は今、上廻りがそれほど細かくできているわけではないイギリス型客車の台車を作ることを頼まれている。現状の台車はかなりひどいので、多少は良いものを作りたい。簡単に作れて線路追随性の良いものにする。暇を見て実行したい。

 台車枠にはネジを切って、枕梁を付ける。タップを立てるわけだが、うまく行くだろう。コメントの中に棒台枠を作りたいという話もあった。理論的には出来るだろうが、たくさん作るわけではないので、レーザカット、ワイヤカットを使うべきだろう。 

2019年01月06日

角倉彬夫氏の鋳造法

 先日のコメントでrailtruck氏からご指摘戴いた角倉氏の記事を開いて見た。昔読んだ覚えがあるが、忘れていた。
 角倉氏は活字金を使った鋳造の話をしているのだが、副題はどういう訳か、
石膏型とソフトメタルで” 
とある。編集部は活字金とソフトメタルが同じものだと思っていたのだ。これは記事の価値を損なっている。ひどい話だ。きっと角倉氏は怒っていたに違いない。

 ソフトメタルは鉛を主体とする低融合金で、スズ、アンチモン、ビスマスなどを添加している。その後、スズを主体とするものもたくさん出てきたが、それは装飾に使うものが大半で、模型用は鉛主体のものが多い。名前通り、それほど硬くないことはご存じだろう。凝固に際して体積変化は大きい。ほとんどが縮む。

casting1 角倉氏の記事は石膏型で、draft angle(抜き勾配)がないと不可能である。二つの石膏型の合わせ目に、剥がれるようにススを付けるところなど、時代を感じさせる。この記事では活字金で鋳込む他に、
”ルツボなどの便がある方は真鍮等でも構いません。”
とまで書いてある。すごい話である。できるだろうが、型の温度の設定などが難しい。簡単な型でなければ、遠心鋳造をしないと入らないかもしれない。

casting2 押し湯の件は間違いなく書いてある。空気抜き穴も紹介してあり、素人ではない。しかし活字金は縮まないということをもう少し大きく書くべきである。
一般論で言うと、押し湯ではその湯口の部分が最後に固まるようにするのである。そうすると凝固時の収縮が、その湯口の内部で融けている金属が湯口を通って鋳型内に注入されて補償されることが、期待される。


2019年01月04日

蒸気機関車の音の再生

618_0131 正月に音楽家の友人に招かれて、演奏を聞いた。彼は仕事をやめた後、専用の建物でジャズの教室、演奏会を開いている。設備は相当なものである。各種のオーディオ装置を完備し、レコードは1万枚弱を持っている。彼はもともと電気工学出身で、オーディオは専門家であった。
 レコード再生には非接触のレーザ光によるプレイヤを用い、 特殊な真空管アンプを通して聴く。スピーカはイギリス製の何とかという珍しいブランドだ。巨大な超低音再生スピーカもある。それを入れたり切ったりして、効果を確かめながら聞いた。

 筆者は、アンプはFETがベストという結論を持っているので、真空管アンプ至上主義者からは睨まれている。それは物理学的な考察の結果であり、情緒的なものではない。少なくともFETは安い。安くていい音がすれば良いではないかということだ。
 それはともかく、今回は彼のオーディオ装置を通して聞かせて貰うことになった。真空管アンプ特有の音がし、それはそれで楽しめた。

618_0129 筆者を招待したので、友人は蒸気機関車の音を収録したレコードを特別に用意して、待っていた。全員の前でそれを再生した。素晴らしい臨場感で、感動した。
 Santa Feの最終蒸気運転のレコードで、4-8-4がロスアンジェルスからパサディナを抜け、カホン峠を行く様子が収められている。B面にはデイライトとキャブ・フォワードの音も入っている。後者はスリップして、音がずれていく様子が分かる。
 我が家でいつも聞いているCD再生音とは、根本的に違うと感じた。ここからは彼の講釈である。

 CDは20,000 Hz以上の周波数をカットしている。しかしレコードはそうではない。極端な低周波も高周波も一応、物理的に可能な範囲を収録している。その部分はHi-Fiではないかもしれないが、ゼロではない。
 音響効果が考えてある部屋でそれを再生すると、様々なものに当り、共振させ、耳に入る。共振は倍音、半音その他いろいろな成分を持っている。それが総合されて耳に入るので、臨場感が生まれる。この音をヘッドフォンで聴くと、面白くない。反響、共鳴がほとんど期待できないからだ。


 臨場感は本物と同じという意味ではない。本物ではないが、聞いた人に「そうかもしれないという感じ」を与えるような響きを生じることらしい。彼の意見に完全に同意はできないが、かなり説得力のある説明であった。ちなみに筆者は聴力試験の結果、12,000Hz以上はほとんど聞こえていないらしいが、違いは感じた。

 帰宅後、手持ちの蒸気機関車の録音を全部聞いた。頭の中は排気音と汽笛で満たされた。DCCの再生音とは違う。もちろんPFM方式とも根本的に違う。
 
 余韻に浸っているうちに、様々なことが頭の中を巡り、しばらく前のMRに載っていたオーディオ方式を試してみたくなってきた。それは、車載DCC以外に、固定されたDCCからの音声のうち、重低音部分を重低音専用スピーカを経て、レイアウト全体にばらまくというアイデアだ。低音は指向性がないので、一箇所あれば有効だ。
 ディーゼル・エンジンの腹の皮がぶるぶると共振するような重低音を味わうことができる筈だが、隣の家のガラス戸が震えるかもしれない。面白そうだ。

2019年01月02日

謹賀新年

 また正月になってしまった。今年こそは開業するぞと張り切っても、何年もかかっている。先日来た友人は、
「ゼロから始めたにしては早いね。普通、レイアウト建設はもっと時間が掛るものだ。」
と言う。確かに最初のうちはとても進行速度が大きかった。だんだんと速度が低下している。やらねばならないことを一部先送りしてきたが、もうそういうわけにはいかない。

 あと、せねばならないことは、
① 信号機
② 転車台のコントロール
③ レイアウト周囲に取り付ける有機ガラスのシールド
である。これらが完成すれば開業できる。

 ① については、現在鋭意工事中である。光検知システムのセンサの保護をする必要がある。ブラスのパイプを斜めに切って、赤外ビームの送受装置ホルダを作った。軽微な脱線で衝突しても何とか持つ程度の強度にしている。あまり頑丈にすると、二次被害が大きくなるからだ。
 ② はディジタルのコントロールの完成待ちである。もうすぐできるだろう。
 ③ はかなり大変な作業である。アクリル板を取り付ける土台はようやく完成した。取り付け作業は3人がかりである。水平部分から勾配に差し掛かるところは微妙な調整が要り、その下準備だけでも大変だ。計算はしてあるが、大きなもので、さらに柔らかいものだから、どうやって保持して切り落とすかを考えねばならない。


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