大迫町ワイン紀行(再)

――観光と生活圏内での小旅行と地場産業についての覚書――

 

長山雅幸

 

 はじめに

 

 昨年度より本学付属の地域経済文化研究所の所員となり、花巻市近隣の市町村を調査するようになって、各役所に「商工観光課」といった部署があることを知った。花巻市近隣、あるいは岩手県と言えば、農業が主たる産業であることは言うまでもない。そうすると、「商工観光」というのは、農業以外のすべての産業を意味すると言って差し支えなさそうである。農業以外の産業、すなわち商業、工業、これは自明のことである。ここで注目すべきなのは、農業、商業、工業と並んで観光が位置づけられているということである。

 調査したことがないのではっきりしたことは言えないが、花巻市も宮澤賢治と温泉に由来する観光業が市の産業に占める割合は相当高いものと思われる。昨年調査した湯田町もまた、温泉観光の町であった。そして、今年の研究所のフォーラムの対象は大迫町である。そこで、今回「大迫町ワイン紀行(再)」となった次第である。

 大迫町近隣の人々は、大迫町と言った場合に何をイメージするであろうか。こう問うた際に、本学地域経済文化研究所は、「早池峰山を活かした町づくり」というテーマを大迫町に対して提案した。煎じて言えば、早池峰山を観光資源として活かして、地域の活性化をはかるということである。また、目を町のキャッチフレーズに転ずれば、「ワインと神楽の町」ということになる。大迫町の神楽は、比較的早くから研究者によって注目されたため、その保存状態がよいと言われている。

 私見では、大迫町は、早池峰山を観光資源とするよりも、農業に特色を出し、その上で、創設40年を向かえる株式会社エーデルワインと提携して、農産物であるぶどうを高付加価値工業生産品とするのが、本流であるように思われる。私も昨年から稗貫郡石鳥谷町に住むようになった。これ程の田舎に住むのは初めてである。そして、そこで実感するのは、自然が豊かである所ほど、自然の逃げ足は早いということである。もう少し分かりやすく表現すれば、自然破壊の進行が目に見えて早いということである。そこで、敢えて研究所のテーマ設定に従わず、早池峰山の自然はそのままにしておきたいと考えたのである。しかし、人間は「自然」だけでは食べてゆけない。J.-J. ルソーが「自然に帰れ」と言ったというのも、思想史上の伝説的な大嘘である。そこで、大迫町にすでにある自然とともに生きる産業、すなわち農業、しかも環境への負荷をより軽くしたエコ・ファームこそが、早池峰山の町・大迫町にふさわしいと考える次第なのである。そして、これもまた既存のものであるワイン工場。これによって、農産物をより高付加価値な商品として出荷することによって、大迫町の産業の基盤とすべきではないかと提案したいと思うのである。

 このように考えた上で、今回は、《農業→ワイン(工業)→観光》という図式を頭の中に描いて、昨年同様、大迫町の「ワイン祭り」に行った次第である。ただ、今回は、同様に、「酒」という強力な観光資源を持ちながらも、大迫町とは異なった発想で「酒まつり」を行っている南部杜氏の里・石鳥谷町をも取り上げ、比較を試みたいと思う。

 

 1.大迫町「ワインまつり」

 

 a. カントリープラザとギャルソンレース

 

 大迫町の「ワイン祭り」は、正確には「ぶどうが丘フェスティバル おおはさま ワインまつり」である。ワイン祭りとしては33回目を数えるが、「ぶどうが丘フェスティバル」として「ぶどうが丘」に集積して一大イベントにしたのは今年で2回目である。今年の開催日は9月15日(日)であった。イベント内容は、注にある拙稿(以下、これを「旧稿」と呼ぶことにする)とほぼ変わらないので、そちらを参照していただきたい。ただ、今年は、昨年のものに、更に「町指定八木巻神楽上演」や「ポニー馬車の運行」といった内容が付加され、より豊富な内容となっていた。メイン会場の前の広場の様子は写真1にある通りである。かなりの賑わいである。写真の右側がメイン会場である「カントリープラザ」であり、そこには「ワイン早飲み」などの競技が行われるステージが用意されている。その様子は旧稿を参照していただきたい。また、この「カントリープラザ」前の左右にに見えるテント群は、焼き鳥、たこ焼き、焼きそばといったオーソドックスな出店であり、これらは特に見るべきものはなかった。イワナなどの渓流魚の焼き魚が売られており、これが特色と言えば特色と言えるかもしれないが、せっかく「ぶどうが丘」という比較的狭い場所にイベント・出店を集積したのであるから、もう少し工夫が欲しかったかもしれない。「ワインに合う」という意味では、ステーキの出店が出ており、これは昨年はなかったように記憶している。また、ぶどうの即売も行われており、これは大迫町の特色を出した良い企画であったと言えるであろう。私は、一通り見てからぶどうを買おうかと思っていたが、その頃にはすでに完売であった。やはり「特色を出す」ということは重要であろう。そしてまた、地元の人々の間では自明視されている「特色」を掘り起こすことが、我々外部の人間の仕事であろう。

 

              写真1

 

 写真2は、「センター広場」で行われたイベントのひとつである「ギャルソンレース」である。トレーに液体(本物のワインではないと思われる)の入ったワイングラスを乗せ、それを片手で運ぶという競技であり、昨年も行われていたものである。いわばメインのイベントと言ってもよりものである。ただし、最高に盛り上がるメインイベントは、やはり後述するワイン娘のぶどう踏みということにはなるだろうか。この「ギャルソンレース」、写真にもあるように、今年はなぜか女性の参加者が多かった。

 

          写真2

 

 b. 観光(学)と統計――大迫町の場合――

 

 ところで、「観光学」と言われるものは、そもそも統計的作業から始まったと言える。すなわち、1899年にイタリア政府統計局のボディーオ(L. Bodio)が雑誌に発表した論文「イタリアにおける外国人の移動およびそこで消費される金銭について」(Sul movimento dei forestieri in Italia e sul denaro che vi spendono)が最古の観光研究であるとされている。これに続くものとしては、やはり同じくイタリアのニーチェフォーロー(A. Niceforo)の論文「イタリアにおける外国人移動」(Il movimento dei forestieri in Italia, 1923)およびベニーニ(R. Benini)の論文「観光客移動の計算方法の改良について」(Sulla riforma dei metodi calcolo dei movimento turistico, 1926)が挙げられる。これは、相対的安定期に入ったアメリカ合衆国からの観光客の動態を把握し、分析し、そしてそれをさらに今後の観光政策に役立てようとした国策の反映でもあった。このように観光研究は実用を目的とした観光統計から始まったのである。このような研究も1920年代後半になると蓄積を増し、体系的な観光論が現れるようになる。その先駆が、やはりイタリアのマリオッティ(A. Mariotti)の『観光経済講義』(Lezioni di economia turistica, 1927)である。マリオッティは、この著作の中で、イタリアで積み上げられてきた観光研究を踏まえて、実例によりつつ、体系的な説明を試み、いくつかの理論を構成しようとしている。

 さて、話がやや横道にそれたが、ここでも統計数値を見てみようと思う。大迫町役場の調べでは、「平成13年度大迫町観光レクリエーション客入込状況」は次の通りであった。

 

表1 平成13年度大迫町観光レクリエーション客入込状況

 

早池峰

その他

1月

63

536

2月

37

773

3月

58

789

4月

152

357

5月

2,577

2,548

6月

18,614

4,277

7月

19,315

10,733

8月

19,013

15,551

9月

12,188

22,639

10

2,387

8,189

11

537

5,431

12

174

3,240

     

合計

75,115

75,063

注)大迫町役場・企画情報観光課 伊藤浩之氏作成

 

 ここで「その他」に分類されているものの主となるものはやはりワインである。ワイン工場では試飲販売も行っているし、写真3の「道の駅」では有料(1,000円)でオーストリアワインが飲み放題で試飲できる。写真の左側がワインの貯蔵室である。ただし、この「道の駅」は、早池峰ダムの散策拠点としては良い場所であろうが、大迫町中心部ないしは「ぶどうの丘」からは車で20分弱かかる。およそ20kmというところであろうか。写真は閉店の5時に撮影したものであるが、レストランも、「道の駅」によくある産直所もなく、閑散としたものであった。これが、大迫観光にどの程度寄与しているのかは疑問なしとなしえない。また、肝心のワインも、試飲のために一旦コルクを抜いたものを何日間も使いまわし、保存状態が悪くなるせいか、少なくとも私の口にはほとんどのワインが合わなかった。

 

              写真3

 

 さて、話を戻せば、早池峰山観光客が75,115人、その他の観光客が75,063人である。両者とも、数値的に大きな差はない。そうであるとするならば、大迫町の観光資源としては、ワインも半数の観光客を集客しているということになる。また、早池峰山は、小学校の遠足でも登る山ではあるが、いわば「通のための山」であり、少なくとも現在は観光の山ではない。このことが意味するのは、早池峰山に登りに来る人々は本格的なワンダーフォーゲルないし登山を楽しみに来る人々であって、大迫町の長年の経験から言っても、こういった人々は地元にお金を落とすことはほとんどない。つまり、観光産業論の観点から言えば、早池峰山はほとんど機能していないと言えるのである。

 次に、月別の観光客数に注目してみよう。早池峰山の観光客は、やはりその性格からして、夏山登山が多いことがわかる(6~8月が多い)。これに対して、「その他」は、やはり冬の寒さと雪の影響は受けるものの、早池峰山の観光に比べれば、月別の極端な観光客数の落ち込みがないことがわかる。また、この統計数値は昨年のものであり、昨年もワイン祭りを9月に行っていることを考えると、9月と8月あるいは10月の観光客数の差が、ワイン祭りの集客数であるということになる。8月と比較すれば7,088人、10月と比較すれば14,450人ということになる。この二つの数値を平均しても10,769人ということになる。この数字が、ワイン祭りの観光客数であると仮定できるであろう。先にも指摘したように、早池峰山の観光客(登山客)は地元にお金を落とさないと言われる。確かに早池峰山は観光スポットというよりもかなり本格的なワンダーフォーゲル、登山の対象であり、そうした愛好家たちはむやみにお土産を買い込むという典型的な日本人観光客の行動様式をとらない。私の知る『山と渓流』の愛読者でもある登山愛好家の行動様式を思い起こせば、彼女は名産のワイン1本すらも買ってはいかないのではないだろうか。では、ワイン祭りはどうであろうか。最小限に見積もっても、ワインチケットが1,000円であり、おつまみの焼き鳥などは2~3品買われることになるであろうか。あるいは、バーベキュー・コーナーでビールとバーベキューを楽しむ人もいるであろうし、レストハウスで上等な食事を味わう人もいるであろう。そうすると、概算で、1人当たり3,000円はワイン祭りでお金を使うことになると見てよいのではなかろうか。そうすると、上の平均値をあてはめてみれば、ワイン祭り一日で32,307,000円が地元に落ちる計算になる。これは、大迫町の「その他」の観光の中の第3セクター・早池峰観光の年間売上(表  参照)の約60%を占めるものである。

 

表 2                               単位)千円

 

施設名

金額

ワインハウス早池峰

55,180

ワインハウス湖畔

15,311

ホテルスティヒル

27,506

体験工房森のくに

17,888

七折茶房

3,843

エーデルワイン(「道の駅」、ワインシャトーを含む)

387,745

 

507,473

注)大迫町役場・企画情報観光課 伊藤浩之氏作成

 

 私は社会調査の専門家でもないし、私自身、ワインを飲むことを目的にこのワイン祭りに参加したのであるが、なんとか聞き取りを行うことができたのは、以下の10名の方々であった。一覧表にして示そう。

 

  表 3

 

どこから来たのか

交通手段は何か

所要時間はどのくらいか

年齢は

グループの人数は

この企画を何で知ったか

江刺市

自家用車

約40分

46歳

4人

ラジオ番組

東京

新幹線(ツアー)

70歳

3人

JRの広告

石鳥谷町

シャトルバス

約20分

55歳

7人

パンフレット

大迫町

徒歩

56歳

4人

昔から来ている

田老町

貸し切りマイクロバス

約3時間

35歳

13人

インターネット

花巻市

自家用車

約15分

26歳

3人

新聞

石鳥谷町

自家用車

約20分

30歳

2人

『アキュート』

盛岡市

シャトルバス

約1時間

59歳

13名

地元の知り合いに誘われた

花巻市

自家用車

約30分

32歳

11人

チラシ

花巻市

自家用車

約30分

39歳

5人

毎年来ている

 

 サンプル数がわずか10では統計も何もないが、それでもある程度の傾向は見て取れる。確かに会場の「ぶどうが丘」は十分に賑わってはいたが、せいぜい2030キロ圏内からの観光客であろうと予想していたが、実際に、地元や花巻市などの近隣は、10個のサンプルのうち6個に過ぎない。また、アクティブに地元で観光を楽しんでいることがうかがえるのが田老町から来たグループである。交通手段、人数、情報の収集の仕方からもそう言えるであろう。また、新聞紙上では知っていたが、前日からの宿泊で東京からのツアーが企画されており、そのツアー客が10個のサンプルに入っていたのには多少驚いた。このツアーに何人が参加したのかは分からないが、早池峰山散策、神楽、そしてワイン祭りという三重の組み合わせになれば、東京からの観光客も十分に呼び込めることが今回明らかとなったわけである(このツアーは今年が最初である)。

 また、グループの人数をいま少し子細に見れば、2人、3~5人、6~13人のグループに大別できそうである。すなわち、これは、カップル(必ずしも男女の組み合わせを意味しない)、家族、地縁あるいは血縁のグループ(当面、これを「グループ」と呼ぶ)というように対応しそうである。そのように考えれば、10個のサンプルのうち、カップルは1組、家族が5組、グループが4組ということになる。無論、10個のサンプルから確定的なことは何も言えないことは承知しており、また、男女のカップルは近寄りがたくてアンケートの対象としなかったということは、私自身がよく知っている。それゆえ、カップル、家族、グループの比率が1:5:4であると断言はできない。しかし、目測では、この3つの形態のうち、カップルというのが一番少なかったのは確かであったような印象を受けた。一時期から「ワインブーム」ということが言われ、やや下火にはなったもののまだワインの人気は高いように思われる。あるいは、酒屋の1升瓶の安ワインの陳列から推察するに、テーブルワインなるものが日本にも定着しつつあるとも言えるかもしれない。そして、そのワインを日本文化に採り入れているのは比較的若い世代ではないかと推測される。そう考えてみると、若いカップルが少ないということは、むしろ逆に特徴的なことなのかもしれない。「ワイン祭り」というよりは「酒飲み祭り」と言った方が適切なのかもしれない。上述の、特に縁日と代わり映えのしない屋台しかなく、それでも十分繁盛しているというところがそれを示しているのかもしれない。そうであるとするならば、今後の「ワイン祭り」のターゲットの絞り方として、従来通り、家族やグループを狙った「酒飲み祭り」で発展させてゆくのか、酒類の中でもワインという一定の記号と化したものを、その記号にふさわしい若い層に訴えてゆくのかという二通りの道が見えてくるであろう。

 

 c. 「ワインまつり」の華・ワイン娘

 

 さて、ワイン祭りそのものに話を戻そう。上にも述べたように、このワイン祭りの最大のイベントはワイン娘によるぶどう踏みである。その様子が写真4である。ワイン娘をメインに撮っているので縦位置になってしまい、周囲の様子があまりよくわからないかもしれないが、それでも、背景にたくさんの見物人が見えることと思う。カントリープラザでは、早食い、早飲みなどの競技が行われており、それが終了してからぶどう踏みが行われる予定であったが、早くから観客が舞台のまわりに集まってしまったことと、カントリープラザでの競技の時間が少々おしてしまい、ぶどうの桶の周りに集まった人達の拍手をもって、早めにぶどう踏みが開始された次第であった。やはり、この「ワイン祭り」の華、メインイベントである。

 

          写真4

 

 それでは、恒例(?)のワイン娘のみなさんに勢揃いしていただこう。それが写真5である。左から、高橋尚子さん、佐々木香奈恵さん、平舘明日香さんである。旧稿でのワイン娘の小田桐さんは、盛岡在住で、ホームページでワイン娘のことを知って応募したのであるが、今回の方々は、大迫町の工場で働いている方たちだそうである。平舘さんにお話をうかがった。今回ワイン娘の役をつとめて下さったお三方は、今春、新卒で大迫町の誘致企業(縫製会社)に入社し、研修で仲良しになった三人組なのだそうである。ワイン娘の話は、大迫町役場に友人を持つ佐々木さんのお母さんからのお声がかりなのだそうである。役場のてこ入れかもしれないが、平舘さんにはそれは関知しない話である。それにしても、今年のワイン娘はよく働かされたと思う。昨年はぶどう踏み以外にはあまりすることがなく、会場内を所在なさげに散歩するワイン娘であったが、今年はイベントの節々で活躍していた。お客さんとのじゃんけん大会のようなものもあった。やはり、旧稿でも述べたように、こうしたワイン娘のような存在はイベントの華となるものである。そして、今年もたくさんのお客さんから写真撮影を頼まれたそうである。感想は「恥ずかしかった」だそうである。平舘さんが勤める会社には約90名の女子社員がいるそうであり、なかにはワイン娘OGもいるのかもしれない。

 

               写真5

 

 d. 大迫町の住民意向調査から見えてくるもの

 

 さて、このように昨年同様ワイン祭りを心ゆくまで楽しんだのであるが、少なからず気になる統計がある。大迫町が平成14年9月7日に行った「大迫町の未来を語る会」(以下「未来を語る会」と略す)の為に作成した基礎資料のアンケート調査結果である。この調査は、「未来を語る会」の基礎資料でもあるが、より大きくは「第三次大迫町総合開発計画・後期基本計画」の為の住民意向調査という性格を持っている。調査にあたっては、20歳以上の町民の中から無作為抽出で600名を取り出し、対象にしたものである。回収状況は54.3.%であった。「未来を語る会」では調査からの抜粋が配布された。その中から、更に本稿に関係するものみを取り出して見てみよう。

 まず、「あなたは、大迫町が住みよいと思いますか」という問いに対しては、42.02%が「まあ住みよい」と答え、次が「やや住みにくい」の22.70%であった。「住みよい」と答えたのは第3番目であり、19.33%であった。しかし、「まあ住みよい」と「住みよい」を合わせれば61.35%の住民がほぼ住みよいと答えていることになる。その理由については、「未来を語る会」で配布された資料からは読みとれなかった。

 さて、本稿の目的沿う項目へと移ろう。「これからの大迫町の産業経済発展のためには、どのようなことに力を入れていけばよいと思いますか」(複数回答)という問いの結果は次の表1の通りである。

 

 表4

 

回答率

1 農林業を再評価し、魅力ある産業に育てる

23.29

2 企業誘致をすすめ製造業の蓄積をさらに高める

14.01

3 より多くの買い物客が集まる商業環境をつくる

17.69

4 研究開発や情報など新たな産業を導入する

9.11

5 グリーンツーリズムを生かした地域産業

17.86

6 新しいビジネスを起こすための支援をすすめる

4.73

7 働く人のための研修機会や福利厚生を充実する

12.08

8 その他

1.23

100

 

 「5 グリーンツーリズムを生かした地域産業」が第2位となっているのは、やはり時代の趨勢を住民も理解しているということであろう。しかし、「グリーンツーリズムを生かした地域産業」とは具体的には何であろうか。後に見る調査結果からすると観光産業ではなさそうである。では、そうすると何なのか。この調査からは見えてこない。第1位が「農林業を再評価し、魅力ある産業に育てる」という項目であるということは、本稿冒頭近くで述べた私見が、大迫町民にも支持されうるものであることを示していると言ってよいであろう。すなわち、農業に特色を出してゆくのである。すなわち、旧稿でも述べたように、大迫町はアイオン台風とカザリン台風で葉煙草に大被害を出した大迫町では、県の指導を受け、ぶどう栽培へと移行し、そして、最初は、「はじき」と呼ばれるくずぶどうをブレンド用ワインとして加工し始めたのであった。やがてこの加工業は第3セクターの株式会社エーデルワインへと発達する。今年で株式会社エールワインは創設40周年を向かえる。初期の段階では、とても飲めたような代物ではないワインに砂糖を大量に混ぜ込んだようなワインのブレンド用であったが、現在では、「コンツェルト」などを主力商品として、赤、白、ロゼ、ソフト、発泡酒などを揃え、瓶の大小も含めると30種類のワインを取り揃えるまでにいたっている。また、今日では逆に、ワインの味を追求して、ツヴァイゲルトレーレなどの品種を試行錯誤しながら栽培し、ワインとして商品化している。

 ところで、日本酒と同様、ワインにも各国で格付けが行われていることは広く知られていることと思う。先の写真3に紹介した「道の駅」で配布している「試飲ワインリスト」には、オーストリアの格付けが示されている。すなわち、ラントワイン、クワリテーツワイン、カビネット、シュペトレーゼ、アウスレーゼである。これらは、例えば、醸造の過程で別の糖分を加えているかどうかによって区分される。そうした場合、農水省が平成11年から推進しているエコファーマー(持続性の高い農業)の制度を導入してはどうであろうか。エコファーマーとは、基本的には、低農薬(化学農薬低減技術)、低化学肥料(たい肥等施用技術、化学肥料低減技術)の農家のことである。低農薬ということで、ぶどう自体も差別化が行えるし、この低農薬ぶどうを使ったワインとなれば、こちらもまた差別化ができるであろう。大迫町の農家の部会のうちでぶどう部会は最大のものであり(130名強)、現在、JAを通じて申請中であるが、岩手県が「岩手県持続性の高い農業生産方式の導入に関する指針」を平成12年に出していること、および、現在の岩手県内のエコファーマー認定者が632人に達していることを考えると、やや後塵を拝したという感は拭えないかもしれない。

 さて、アンケート調査に戻ろう。9番目の項目として、「今後、大迫町はどのようなまちをめざすべきだとお考えですか」と質問している。この質問に対する回答は次の通りである。

 

 表5

 

回答率

1 自然環境を活かした農林業の盛んなまち

28.19

2 活力ある工業のまち

6.47

3 広く人々を引きつける商業のまち

12.77

4 高速交通網を活かした交流拠点のまち

5.79

5 教育・文化・スポーツが盛んなまち

9.78

6 国際化や情報化を進めるまち

4.81

7 心と心の通い合う医療と福祉の充実したまち

30.85

8 その他

1.16

100

 

 ここでまず指摘しなければならないのは、ここではグリーンツーリズムないしは観光について触れられていないことである。これは、アンケートの前後関係から言っても完全なミスと言うべきものであろう。それを指摘した上で、この調査項目から浮かび上がってくるのは、農林業が盛んで医療と福祉が充実した町を住民の多くは望んでいるということである。農村部においては、農業の衰退と少子高齢化(=後継者不足)が両輪として進行している。この項目の結果は、農村部の調査結果としては至極当然のものと言えるであろう。

 次に10番目の項目は「町の限られた予算を行政のそれぞれの分野にどのように配分していけばよいとお考えですか。今後、特に重点的にお金をかけるべき分野と、予算を削ることがあってもやむをえない分野とをそれぞれ2つまで選んで下さい」というものである。その集計結果が次の表3と表4である。

 

表6 重点的にお金をかけるべき分野

 

回答率

1 道路、交通安全

10.93

2 防犯、防災

3.88

3 上下水道

4.94

4 公民館、公園等のコミュニティー施設

4.94

5 環境保全

5.29

6 生活環境整備

9.17

7 農林業

8.82

8 商工業

3.53

9 観光

5.11

10 教育、文化、スポーツ

5.11

11 医療、福祉、健康

20.99

12 子育て支援

6.70

13 地域づくり・人づくり支援

9.88

14 その他

0.71

100

 

表7 予算削減もやむを得ない分野

 

回答率

1 道路、交通安全

7.46

2 防犯、防災

4.26

3 上下水道

7.25

4 公民館、公園等のコミュニティー施設

23.24

5 環境保全

5.12

6 生活環境整備

5.12

7 農林業

6.82

8 商工業

7.89

9 観光

12.58

10 教育、文化、スポーツ

3.84

11 医療、福祉、健康

2.99

12 子育て支援

1.71

13 地域づくり・人づくり支援

9.17

14 その他

2.56

100

 

 まず突出して目につくのは、「重点的にお金をかけるべき分野」として「医療、福祉、健康」が挙げられている点(20.99%)と、「予算削減もやむを得ない分野」として「公民館、公園等のコミュニティー施設」が挙げられている点(23.24%)が指摘されるであろう。確かに質問9で「心と心の通い合う医療と福祉の充実したまち」にすべきだという回答が最も多く(30.85%)、一貫して福祉・医療への住民の要望の多さがうかがえる。しかし、ここで意外なのは、同じく質問9で「自然環境を活かした農林業の盛んなまち」をめざすべきだという回答が福祉・医療に次いで2番目(28.19%)であったのに対して、「お金をかける」ということに関しては、第5位(8.82%)にとどまっているということである。また、観光に関しては、「重点的にお金をかけるべき分野」として5.11%、「予算削減もやむを得ない分野」として12.58%となっており、「予算削減もやむを得ない分野」の第2位となっている。ここから、大迫町民は、産業としての観光(繰り返しになるが、その要素は、早池峰山、神楽、ワイン祭り、そして付け加えるとすれば、早池峰山に付随する山岳博物館などである)には関心がないということが分かる。これは、大迫町民にとって、観光はあまり経済的にメリットがない、あるいはメリットがないと感じているということであろう。しかし、これは、質問5で「グリーンツーリズムを生かした地域産業」に力を入れるべきという回答(17.86%で第2位)と矛盾しないであろうか。

 この点は、推測の域を出ないのであるが、大迫町という町の中にあっても、現在の観光の形態で潤っている部分とそうではない部分とがあるという、いわば当然の事実が、この矛盾の中には含まれているのではなかろうか。そのように推察するのは、上記「未来を語る会」で、「向こうの方」にばかり観光施設が建設されるという不満を表明した町民がいたことによる。おそらく「向こうの方」とは、今回もワイン祭りが開催された「ぶどうが丘」周辺を指しているのではなかろうか。確かに、そう考えれば、このワイン祭りも、株式会社エーデルワインと、 で したいくつかの商店ぐらいにしか経済的メリットはなかったであろう。昨年も今年もこのワイン祭りには主に地元の人を対象とした「前夜祭」があるのであるが、それもどの地域で開催するのかでもめるそうである。なかなか「万人は各人の為に、各人は万人の為に」とはいかないようであり、美酒と美女に酔いどれているだけでは、大迫町の街づくりの道は見出させなさそうである。

 

 3.石鳥谷「酒まつり」――石鳥谷町の観光に関する考え方――

 

 さて、石鳥谷町には「石鳥谷三大祭り」というものがある。8月に行われる夏祭りである「夢まつり」、9月8~10日に行われる収穫祭である「石鳥谷まつり」、そして今回のテーマである「酒まつり」である。

 周知の通り、石鳥谷町は「南部杜氏の里」であり、「道の駅」には酒の伝承館もあり、町立図書館は酒に関する蔵書では日本一とも言える数を揃えている。そこで、本物のおいしいお酒を飲んでもらおうということで「酒まつり」がはじまった。今年は10月の1214日であった。最初の二日間は本学の大学祭と重なっていたため、思うように行動できなかった。

 今回注目したのは、初日に行われた「ジャズと日本酒の夕べ」である。これは、石鳥谷町役場・商工観光課の方のお話では、「道の駅」ができ、そこに食堂「りんどう亭」ができた際に、ピアノ1台でジャズを楽しみながら地元の名酒・「七福神」などを楽しんだのが始まりと言われる。しかし、現在は、石鳥谷公民館のホールに会場を移し、もっと大規模なものになっている。現在の形態になったのは平成9年からであり、今年で5回目となる。

 当初の狙いは、東京のライブハウスでジャズを楽しむようにしながら日本酒も楽しんでもらいたいという、日本酒の新しい飲み方の提案であった。そして、そうした新しい日本酒の飲み方を石鳥谷町から発信していきたいという考えであった。そこで、アーティストは一流にこだわった。そのため、実はこの「ジャズと日本酒の夕べ」は、「酒まつり」期間中に実施できるとは限らないのだそうである。アーティストのスケジュールに左右されるからである。私は音楽ファンであると自称していたが、まるでこのてのジャンルには興味がないので、ジャズそのものには言及しない。ただ、会場には行ったものの、場内が暑いのとスピーカーから出る耳をつんざくようなギターの音に、早々に廊下に出てしまった。ふと、私が高校生の頃、風邪で寝込んでいた時にリヒャルトシュトラウスの『英雄の生涯』を聞いていて、母に「そんなものを聞いていて頭が痛くならないのか」と聞かれたことを思い出した。会場には、私の吹奏楽仲間2人も来ていた。ものは好きずきである。

 さて、今回の来場者数は約300人ぐらいであった。アンケートを町役場で行っていたが、その回収率は3割である。まずはアンケートの結果をご覧いただこう。

 

 表8

 

 

 

 

 ただ、ここで注意しなければならないのは、このアンケートは、アンケートに答えた方の中から数名に今回のアーティストのサイン入り色紙を貰えるというインセンティヴを使っているということである。それゆえ、このアンケートの集計結果は、「ジャズと日本酒の夕べ」というよりも「ジャズと日本酒の夕べ」のために来場した人のアンケートという色彩が強くなっているはずである。事実、上記の会場で偶然会った吹奏楽仲間は「酒を飲むことなんか忘れてたよ」と言っていた。

 そうした留保をつけつつも、まずは、102名中39名が石鳥谷町内からの参加であり、最も割合としては大きいことがわかる(38.2%)。アンケートの作り方が悪いのだと思われるが、「何でしりましたか」と質問した場合、「先行予約」の場合には、更にそれに先行する情報があったはずである。その媒体が何であったのかはわからないが、いずれにせよ、町内からの参加者の場合は、「先行予約」で来た人が多いことがわかる(84.6%)。また、過去5年間にこの企画に参加した石鳥谷町民は66.7%にのぼり、この企画を毎年楽しみにしている人が多いことをうかがわせる。町外で過去5年間にこの企画に参加した人は17名(27%)と少なく、この企画が町民の「お祭り」として定着していることをうかがわせる。また、他方、新聞や口コミで知ったということで米沢市や山形市からもそれぞれ1名ずつ参加してはいる。

 「開催時期」、「料金」、「会場の雰囲気」、「演奏者」、「演奏曲目」、「料理、飲み物」の欄が数値化されているのは、「とても良い」を10、「やや良い」を7.5、「普通」を5、「やや悪い」を2.5、「悪い」を0と評価するという操作を行ったものである。これによれば、町内の参加者の評価が一番高かったのは演奏者であり、これは町外平均とも一致する。また、町内で最も評価が低かったのは「料理、飲み物」であり、これもまた町外平均と一致する。

 この現象は、まず上にも述べたように、このアンケートに回答した層がジャズ・ファンであるということから、演奏者が一流であることが評価されたものと喜んでいいのだが、せっかくの「新しい日本酒の飲み方の提案」という意味では必ずしも成功していないことを意味していると言えるだろう。私が見たところでも、酒の肴は基本的にはいわゆる「乾き物」であり、余程の日本酒好きなければ、(私も結構な酒好きではあるが)到底飲み続けられる代物ではなかったと言えるだろう。アンケート回答者の中には、「料理、飲み物」の項目でわざわざ飲み物は「大変良かった」、食べ物は「悪かった」と答え分けををした人(盛岡市・女性・30代)もいる程であり、現象としてはこの1件だけであるが、そのように感じた人は多かったのではなかろうか。「酒まつり」の一環なのにどうしてこのようなことが生じたのであろうか。石鳥谷町・商工観光課によれば、それは、一流アーティストということにこだわるからだそうである。その結果、入場料(5,000円)の4割近くはアーティストへのギャラで消えてしまうのだそうである。そして、次に、町内に工場のある「七福神」などの吟醸酒、これは出さなくてはならない。そうすると、最後にあおりをくらうのがつまみということになるのである。しかし、おいしいお酒はおいしいつまみと一緒でこそおいしいと感じるのは私だけではないであろう。そうすると、入場料を上げなければならなくなる。しかし、入場料の高さは、「料理、飲み物」の善し悪しに次いで悪い数値を示している。しかし、町内平均が7.2、町外平均が7.5という数値を示しているところを見ると、一流アーティストの演奏を聴きながら「南部杜氏の里」の吟醸酒を飲むのに5,000円というのは「やや良い」(7.5)と平均(5)以上の評価を得ているのであり、入場料を引き上げてでも、料理・つまみを充実させることが来場者の満足度を高めることになるのではなかろうか。

 記述式の回答欄で一番驚いたのが、「お酒を飲めるなんて知らなかった」(大船渡市・女性・30代)という回答であった。この方はこの企画を新聞で知ったとのことであるが、どのような新聞記事が出たのであろうか。また、これにやや関連するが、「ノン・アルコールが少ない」といった回答や、「もっとPRを充実して下さい」という回答まであった。「新しい日本酒の飲み方の発信」としてはまだまだ工夫が足りないと言えるだろう。

 また、本稿の課題である「地場産業と観光」という意味で気になったのが、「帰りにお酒の販売もあればBESTでした」という回答が1件あった(町内・女性・30代)。確かにその通りだと思う。しかしながら、そうした試みはかつてはあったのだそうである。3年ほどは行っていたと言う。しかし、手間がかかる割には数が出なかったため、やめることにしたのだそうである。今テーブルで飲んだお酒がおいしかったからそれを買って帰りたいという観光行動も容易に予測されるのであるが、(エーデルワインも同様なのだが)県内の酒屋ならそれほど労せずして手に入れられるお酒であるから、わざわざその場で買って帰る必要もないかもしれない。この要望が山形市などの遠隔地からの来場者から出ており、なおかつ、そうした来場者の数が多ければ、お酒の即売も効を奏するであろうが……、というところであろうか。

 「ジャズと日本酒の夕べ」では、つまみにけちをつけるような格好になってしまったが、そうしたことは、主催者側も十分理解はしている。そのことを、翌日の「酒パーティー」は示していた。ここではアンケート調査は行わなかったが、やはり約300人の来場者があり、町内から来た方が6~7割で、グループでの参加が多かった。こちらは参加費は2,500円だが、そば、にぎり、地場の寄せ豆腐等々で、酒を楽しむには十分なボリュームがあったと言えるだろう。こちらの、「酒パーティー」は、普段家庭では飲まないような高級吟醸酒を飲んでもらおうというところに狙いがある。

 さて、先に「石鳥谷三大祭り」を紹介したが、夏の「夢まつり」では、現在は行われている打ち上げ花火も、一時期は行われなかったそうである。要するに予算難である。しかし、地元商工会の若い層が是非やりたいということで、現在にいたっているのだそうである。この花火にかかる費用は、打ち上げの費用も含めて約700万円ほどである。これを石鳥谷町という小さな町の商店街から集めるのはなかなか難しいことだろうと思われる(一部は、石鳥谷町外からも協賛金が集まる)。現在、石鳥谷町・商工観光課としては、確かに祭りを通して物産販売を行い、商店街に経済的波及効果をもたらずことが一応の目的ではあるが、モータリゼーションの進展によって石鳥谷町内に人が集まらなくなったので、むしろ人工的に人の集まりを作っていこうという意識が強い。要するに、地域の活性化である。

 ただ、地元商工観光課では石鳥谷町には「これといった観光資源がない」と認識しているが、大迫町でワインが大いに観光資源として活用されているのを見ると、日本酒が観光資源にならないものかと、より強力な観光資源にならないものかと首をひねりたくなるところであろう。ただし、石鳥谷町は、地元に「これといった観光資源がない」という認識のもとに、JTBおよび近畿日本ツーリストが組み立てている盛岡市から北上市までの「 王国」の中にみずからを位置づけ、例えば、宿泊と温泉は花巻市にまかせ、その代わり、バスの経路として石鳥谷町の「道の駅」には立ち寄ってもらうといった方策を採っている。「道の駅」の物産販売は、第3セクターである株式会社石鳥谷観光物産が行っている。しかし、盛岡市から北上市を何泊かしてまわるバス・ツアーというのは、近年相当減少しているようである。ちなみに、上記の「 王国」には、花巻市、石鳥谷町の他に東和町、大迫町も入っている。また、石鳥谷町内にある「たろしの滝」のつららの測定会や、「たろしの滝」周辺の紅葉狩りのシーズンにもそれなりに観光客は来ているようである。ただし、石鳥谷町内は、上記の棲み分けの考え方もあって、観光客用の宿泊施設はない。

 

 むすびにかえて――広域観光圏への展望――

 

 現在、岩手県は広域合併に向かって動いているように見える。上記の「 王国」は、もしも広域合併が行われたとしても、それをまたぐ広域観光圏を形成している。確かに大迫町のワインは強い観光資源である。しかし、時代は――JTBの「 王国」をそのまま鵜呑みにする必要はないが――広域観光圏を形成し、その中での役割分担ということになるのかもしれない。例えば、この一帯を掘れば、どこからでもお湯が出る(と言えば言い過ぎであるが)。しかし、大迫町も石鳥谷町も温泉の採掘には消極的である。花巻温泉郷という大温泉・大宿泊施設があるからである。生活圏内での移動を考えても、東和町に温泉があるし、小規模ながらも石鳥谷町にも2つ温泉がすでにある。クア・ハウスとしては、すぐ近くの紫波にラ・フランス温泉館がある。今後の課題は、一方で、生活県内でのリクリエーションあるいは娯楽としての観光の充実と、他方で、行政をも越えて、岩手県内陸部の魅力ある――東京、あるいはせめて仙台から観光客を呼べる――広域観光圏を形成していくことにあるのではなかろうか。

 

20021120日改稿)