「スウェーデンの知的障害者サーヴィスに見る『他人への配慮』


目次


要旨

 そもそも(消費生活)協同組合は経済的弱者の「協同体」として生まれたわけだが、前世紀のロッチデール公正開拓者組合以来時代は絶え間なく変化し、協同組合の「(基本的)価値」とは一体どういうものなのかということがICA(国際協同組合同盟)を舞台として議論されている。1988年のICAストックホルム大会でICA会長のマルコス氏は4つの基本的を挙げ、その1つが「他人への配慮」であった。そこで、社会的弱者の救済(福祉・サーヴィス)が国家(社会)における「他人への配慮」として行われているように見えるスウェーデンの知的障害者サーヴィスについて、筆者の12日間の現地での見聞を通して紹介・検討を行った。

 制度について触れれば、スウェーデンにおける知的障害者サーヴィスの歴史は125年におよび、立法化されたのは1944年、そして1986年には対象範囲を拡大し、「知的障害を持つ人々に体する特別サーヴィスに関する法」となった。この法律では5種類の「特別サーヴィス」が規定されている。

 この法律の具体化として、我々は知的障害者のためのデイ・センターとグループ・ホームを見学したのであるが、ここで特筆すべきは、日本の収容施設とはかけ離れた暖かい雰囲気(職員[数]・建物)、そして「ノーマリゼーション」「インテグレーション」という日本でもこのところよく耳にする言葉を実現しようと努力され、また実現されているということである。

 見聞に基づいた報告は以上で、以下、マルコス氏の「他人への配慮」という概念を検討し、その上で、19世紀の協同組合的共同体主義者カベーの中心概念である「献身」に対する唯物論者デザミの批判を検討し、「他人への配慮」や「献身」が社会的な規模で見られるためには、その社会自体が相当に成熟した社会でなくてはならないであろうと結論した。

 それでは「成熟した社会」とはどのような社会か。これについては、スウェーデン(ならびにデンマーク)の社会・経済・思想などの個別研究の結果を待たねばならないので、今回は保留した。

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