FGOのマスターの一人   作:sognathus
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巴御前はブーティカやエイリークの妻と同じ様にサーヴァントとなった後も生前の人生の伴侶への想いは変わらない女性だった。
しかしその割には、新たな主として尽くすと決めたマスターに過剰に世話を焼こうとする所があり、マスターはいくらなんでも異性に対してその接近は如何なものかとも思われていた。


巴御前

「マスター、お疲れ様です。今日は誰もいませんね? では今日は巴が誠心誠意お尽くししたいと思います」

 

カルデア内の会議を終えて部屋から出てきたマスターを入り口で待ち受け構えていた巴御前が忠犬よろしく彼に駆け寄って来た。

 

「え? わっ、もしかしてずっと待っていたんですか?」

 

「如何にも! 近頃マスターは社交的になられたようで、これを好機と得た私も奮闘せんとしたのですが、如何せんマスターの隣を獲るのは容易ではなく……」

 

「は、はぁ……」

 

物凄い熱意を込めてここに至るまでの経緯を興奮した様子で話す彼女にマスターはちょっと引きがちだった。

 

「――とまぁそういうわけでして、今日はドンと私にお任せください」

 

「うん……」(何を?)

 

「あ、お部屋に戻られるのですよね? では早速私におぶさりくだ――」

 

「いや、いいです。それは」

 

「別にお気になされる事はないのですよ? マスターは義仲様と親子のように仲良くなれると思いますからね。なら私にとっても……お、御子のような……」

 

「いろいろぶっ飛ばし過ぎです。取り敢えず大丈夫ですから」

 

「あ! お、お待ちください!」

 

巴は一人自室へ歩き始めたマスターを慌てて追いかけた。

 

 

「んじゃ、ご苦労様です」

 

「え?」

 

部屋に辿り着いたところでマスターにそんな言葉をかけられた巴はポカンとした。

そしてそのまま部屋に入って扉を閉めようとするマスターに縋りつくように待ったをかけた。

 

「ま、待ってください! 終わりですか?! 巴のご奉仕はもうこれで終わりですか?!」

 

「いやだって、特にないし……」

 

「お、食事は?! 湯浴みの準備だって私できますよ?!」

 

「いや、今の時代それくらい大した手間じゃないし、大丈夫です」

 

「そんなぁ?!」

 

マスターの言葉に余程ショックを受けたのか、扉を掴んでいた手を離してその場にへたり込む彼女を目にして流石にマスターは何とも言えない罪悪感に駆られた。

既に扉は閉めたのだが、まだその向こうに放心状態の巴がへたり込んでるかもしれないと思うと、気になって様子を見たくなった。

 

ガチャリ、と開けた扉の隙間から覗いてみるとやはり彼女はまだ居た。

まだ立ち直れないのかへたり込んだその場で床を見続けている。

 

「……う」

 

その様子に思わず漏れてしまった呻き声のようなマスターの声を彼女は聴き逃さなかった。

はっ、とした表情で顔を上げる巴御前。

 

「あっ……」

 

「……」

 

目が合ってしまった。

マスターの目を何かを期待する瞳で見つめ返す巴。

 

「……どうぞ」

 

「……!」

 

マスターは根負けして扉を開け、巴はそこにへ喜色満面に紅潮させて入った。

 

 

「ここがマスターのお部屋ですかぁ」

 

「楽にしててください」

 

「あ、はい」

 

巴はマスターに促されたソファにちょこんと座って彼がお茶を用意する姿をほんわかと眺める……。

 

「いやいやいや! そういうのをやりたいんです! 私に任せて下さい!」

 

「ああ、そうだったね。ごめん。じゃ、そこのカップを取ってくれるかな」

 

「全部任せて下さい!」

 

使命感に燃える瞳でそう訴える巴御前。

マスターその願いを受け入れて自分の部屋の生活用品の簡単な配置や使い方を教えるのだった。

 

「――という感じでやれば問題ないです。大丈夫ですか?」

 

「委細承知致しました。御心配には及びません!」

 

「……」

 

何故か凄く不安だった。

 

 

「出来ました! どうぞ!」

 

「……」

 

そう言ってテーブルに置かれたそれは、取り敢えず見た目は珈琲に見えた。

マスターはやや慎重に口を付けつつ飲んでみる。

その様子を巴は緊張した面持ちで見守っていた。

 

「……うん、飲める」

 

「あ……飲める、なんですね」

 

ションボリする彼女にマスターはなるべく優しく話し掛ける。

 

「うんまぁ、コーヒーのパ……粉はもっと少ない方が良いと思う。逆に砂糖は……あ、そうか」

 

「?」

 

マスターは、砂糖が生前の巴御前の時代にはかなりの高級品だったであろう事に思い至った。

 

「巴さん、今の時代は砂糖は昔ほど貴重品じゃないからそんなに節約しなくて良いんですよ」

 

「! なるほど、そうだったんですか!」

 

「うん、そう。だからこれさえさっき言ったように直せば大分良くなると思いますよ」

 

「分かりました! ご指導ありがとうございます!」

 

「じゃあこれで……」

 

「え、まさかこれで終わりとか仰らないですよね?」

 

「……」

 

マスターは考えた。

何とか彼女に上手くあまり世話を焼いてもらわないで済む方法を。

そして程なくして閃いた。

上手く彼女と穏便に過ごす方法を。

 

「巴さん、ゲームをしましょう。ビデオゲーム」

 

「え、げーむですか?」

 

お世話という言葉に対してかけ離れた提案だったのだが、マスターのゲームという言葉にパッと顔を輝かせ敏感に反応する巴。

その瞳は子供が新しい玩具に期待する眼差しの如くキラキラと輝いていた。

 

「うん、そう。ゲームでも俺の遊び相手をしてくれるのなら、それもお世話の内に入るでしょう?」

 

「ふむ……一理ありますね」

 

「よし、それじゃ……巴さんFPS以外のゲームもできる? SLGとか」

 

「えすえるじぃ……えっと確かそれは……」

 

「戦略ゲーム」

 

「! 詳しくは知りませんが興味はあります!」

 

「良かった。今からやるゲームは中世が舞台の戦略育成ゲームなんだけど……」

 

「ふむふむ」

 

熱心に自分の説明を聞く巴御前に対してマスターは内心小さくガッツポーズを決めていた。

ゲームで巴御前の気を引く事で本来の彼女の目的を逸らせる結果にはなったが、純粋に遊び相手になってくれる彼女にはマスターは本心から有り難いと思うのだった。




キャラを上手く掴めてない所為か全体的に中途半端な感じになった気がします。
そしてこれを投稿するのに使ったパソコンの調子が悪くて作業にも多少滞りが出ています。
取り敢えず近い内に替えのパソコンを用意しよう……。





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