FGOのマスターの一人 作:sognathus
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突然の報告に驚くマスター。
彼(彼女)にその内容を話すマシュは申し訳なさそうに続けた。
「はい、先日バベッジさんが自作の実験で蒸気風呂をマスターに提供しようとしたところ、上手くいかなかったようでして……」
「……後で彼を俺の所に呼んでくれるかな」(今実験って言ったよな)
マスターはお風呂が好きだった。
必ず一人で寛げるし、湯が与えてくれる温かさは彼のカルデア内での貴重な癒しの一つだった。
そんな大切な入浴設備が壊れてしまったという。
――しかもよりによって女性の姿になっている日に。
カルデアに個人部屋を割り当てられている者には入浴設備も可能な限り設備されていたので、誰かの風呂を借りようと思えばそれも可能だった。
しかしマスターには風呂を気軽に頼んで貸してくれるような知り合いはいなかったのでこの案は残念ながら実行に移す気にはなれなかった。
マシュだったら貸してくれるかもしれないが、流石に女性化したとはいえ、自分にとって本来異性である人の風呂を貸して欲しいなどと安易に頼むのも気が引けた。
(となると……やっぱり大浴場か)
カルデアの施設内には個人風呂以外に人間からしたら規格外のサーヴァントにも対応する目的も含まれたそれなりの規模の大浴場も設けられていた。
マスターも好んで何度か利用した事があったがそれは……男の時だけだった。
「……」
マスターは自分の膨らんだ胸や少し前まであったモノが消失した部分を見て困った顔をした。
心は男のままなので男湯に入ること自体はこの姿でも抵抗はない。
しかし女性の身体で男湯に入ること自体が非常識であったし、自身の身に何らかの性的な危険が及ぶ可能性はかなり高いように思えた。
「……」
続いてマスターは今の姿で女湯に入った場合を考えた。
客観的に観れば問題は無いが、心は男のままなので背徳感を感じたし、何より自分が本来男である事を知っている女性たちに対して非常に軽率な行為であると言えた。
「……今日は風呂は諦めるかぁ」
一人呟きトボトボと大浴場まで向かっていた足の踵を返した時だった。
「マスターではないか。どうした風呂に行くのではないのか?」
と声を掛けてくる者がいた。
「ああ、オルタさん」
マスターが振り向いた先に白い肌と黒色の普段着のコントラストが映えるアルトリア・オルタ(剣)が居た。
「どうした? 見た感じまだ湯上りというわけではなさそうだが?」
「ええ、まぁ。そうなんですが……」
不思議そうな顔をしてそう問い掛ける彼女にマスターは今までの自分の嗜好の経緯を話した。
「なんだそんな事か。ならば問題は無い。私と一緒に入れば良い」
「えっ、お、女湯に?」
「その姿で男湯に入る事は取り敢えず許せないな」
「え、でも俺……」
「思考や精神も女性化しているのならそう問題も無いと思うが?」
「でも戻った時にその記憶が……」
「ご褒美だ」
「え……」
あまりにもきっぱりと言い切るオルタにマスターは思わず言葉を失った。
オルタは唖然とした顔で自分を見るマスターを面白そうにクスリと笑いながら続けた。
「淫らな行為に及ぶわけでもあるまいし、私は裸くらい見られるのは許してやるさ。というかそれ以前に気にしない」
「でも他の人が……」
「だから浴場の開放時間前に来ていたんだろう?」
「……」
「私もそうだ。早く来れば広い風呂を気持ちよく独り占めできるからな」
「でもだったらまだ開いてないんじゃ?」
「実は大浴場は開放時間の30分前には入れるんだ。湯の温度を調整する為か何かだと思うが、取り敢えず誰もいないぞ」
「でも……」
「つべこべ言うな。行くぞ」
「あっ」
言うが早いか、オルタはマスターの手を取り浴場へと引っ張っていった。
「貴様……服を着て風呂に入るつもりか?」
「いえ……」
「ならば脱げ。私はもう脱いだぞ」
「……う」
オルタが言うように彼女は既に全裸となっていた。
タオルは巻かずに片手に持ち、一糸纏わぬ姿を恥じることなく晒していた。
マスターはそんなオルタを見て恥ずかしさに顔を赤く……。
「あれ?」
意外にオルタの裸を見ても男同士で同性の裸を見ているような感覚だった。
オルタの裸体を恐ろしく美しい芸術品の様に思うくらいの感覚はあったが、性的な感情の昂ぶりはかなり薄かった。
「だから言っただろう。ほら脱げ」
「あ、ちょ?!」
オルタはもう待てないと言わんばかりにマスターの服を強引に脱がしにかかった。
驚いて抵抗する彼の服を器用に難なく脱がしていきあっという間に下着姿にした、ところでオルタの手がピタリと止まった。
「貴様なんだその下着は……?」
「え?」
「上に何もつけてないと思えば、下はトランクスだと?」
「いや、そのだって……」
「今度私の下着を少しやるから次からは……うーん、そうだな。最低でも私と風呂に入る時はちゃんと女の物を着けて来い。服は勘弁してやる」
「そんな……」
「女湯で男の下着を見る方が何か嫌だ」
「う……」
妙な説得力を持つ言葉にマスターは反論ができなかった。
「さぁ、行くぞ。丁度良いから女の身体の手入れの仕方も教えてやろう」
「え?! そ、それは流石にいいよ!」
「却下だ。お前が俄か知識で女として過ごすことがあるかと思うと、今は同じ同性としていろいろと気になって来た。徹底的に……やるぞ」
「え、ちょ、あっ……やぁ!?」
その後、マスターはオルタから文字通り手取り足取りを地で行くレクチャーをそれはそれは詳しく学んだ。
髪は勿論の事、身体の細かい部分の洗い方、特に局部に関しても妥協する事無く真顔で真剣にレクチャーするオルタに、恥じらいから顔を赤く染めてしまうのは流石にこの時はどうしようもなかった。
どうしてもお風呂回書きたかったので書きました。
うん、今度こそGW明け以降の何時かに更新します。