FGOのマスターの一人   作:sognathus
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戦いの時以外は酒と女と博打と修練しかやる事がない男が居た。
サーヴァントとして召喚されてからは煙草の味も覚え、やや娯楽の域が広まったが、不健康極まりないダメな嗜好と言えた。
生身の人間であるマスターにとってそんな彼の在り方は「サーヴァントだからこういう無茶な過ごし方ができるんだろうな」という、実は意外に軽い認識をされていただけだった。


土方歳三

「よぉマスター、暇か? 暇ならちょっと博打でも打たないか?」

 

「出会い頭に何言ってるんですか。嫌ですよ。僕は損したくないので」

 

「相変わらず乗りが悪い奴だな。暇を過ごす相手を探してるんだが沖田の奴が逃げやがってな」

 

「逃げた?」

 

「賭ける金がねぇというから、なら負ける度に着物を脱いでまっぱになったら本ば――」

 

「ああ、なるほどね。そりゃ逃げますよ」

 

マスターは恐らく顔を真っ赤にして土方の前から逃げたであろう沖田の事を偲び、心から同情した。

 

「安心しろ。俺は男を抱く趣味は無い」

 

「誰もそんな事訊いてません」

 

「そういやお前、最近女になったり男に戻ったりと妙な事になっているらしいじゃねぇか。化けた姿が本物の女ならまぁ、お前でも考えなくは――」

 

「だからそんな事訊いてないでしょう」

 

「この写真お前なんだろ? 今のお前とは随分似ない童女になるんだな」

 

「ちょっ、それどうしたんですか」

 

マスターは土方が懐から出した見覚えのある自分の写真を見て慌てふためく。

それは間違いなく以前ダ・ヴィンチが外部から受注を受けて量産したという女の姿の自分の写真だった。

土方がそれを持っているという事は彼もそれを所望したという事だろうか。

だがマスターにはそれがどうも彼らしくないように思え、腑に落ちなかった。

 

「ん? これか? 沖田の奴が持っていたからちょっと借り(取り上げ)た」

 

(沖田さん……)

 

マスターは再び心の中で沖田にそっと同情した。

 

「あいつも欲張りなやつだ。今のお前の写真だって持ってたのになんで女のやつまで要るってんだか」

 

「え」

 

「ん?」

 

「いや、沖田さん俺の写真持ってたんですか」

 

「ああそうだ。なんかやたら貴重貴重と言っていたな。なんでもあれをあいつも欲しがった頃には異人の元には在庫がなかったそうだ」

 

「そんなに?! あんなのにそんな需要が?!」

 

「俺も理解するのが苦しいところだ。どうせなら男も女も裸の写真の方が――」

 

「貴方そういう人でしたっけ?」

 

「ここに来てから暇が多いから堕落する一方なんでな。手っ取り早く何か斬る仕事でもあればここまで精彩を欠く事はなかったと思うが」

 

「は、はぁ……」

 

マスターは内心それを自分で言うかと思ったが、流石に表だって口に出す事は無かった。

目の前の人物はある種の危険さでは、トップクラスに受け応えに注意をしないといけない男なのだ。

 

「まぁそういう事だ。用はそんだけだ。もう行っていいぞ」

 

「いや、その写真」

 

「うん?」

 

「沖田さんに返してあげてくれませんか?」

 

「これ女だぞ?」

 

「女でも欲しかったから持ってたんでしょう。それを無理に取りあ……無理を言って借りてしまうのも、どうですかね。沖田さんだって土方さんがそれを大事に扱ってるか気になってると思いますが」

 

「なんだ、女の姿でも自分の写真が男の懐に入っているのが気になるのか?」

 

「……まぁ言われてみればそれもありますかね」

 

「ふん……」

 

「……」

 

何とも言えないピリピリとした緊張を感じる雰囲気が場を支配した。

土方と言えば自分の顎を撫でながら何を考えているのか、マスターの顔をギロリと見るのみだった。

マスターはその視線にジッと耐えるしかなかった。

こんなつまらない事で自分の身に危害を加えるなどという愚かな事は流石にしないと確信こそしていたが、それでも目の前の強大な人物からの意図したものだったのかは定かではないが、その威圧感はマスターの精神を強く疲労させるのに十分なものだった。

 

「ふっ」

 

と、程なくして土方が面白そうに吹き出した。

 

「そう怖い顔するな。お前があいつの事を本心から気にかけているのか見定めていただけだ」

 

「土方さんもこんな事で沖田さんの事を考えるなんてやっぱり結構部下思いですね」

 

「はん、抜かせ。そらっ」

 

土方は短く笑うと持っていた写真をマスターの方に放った。

写真は以前ダ・ヴィンチが言っていたようにプラスチックのような硬化剤でIDカードのようにコーティングされていたので、素直に重力に従って放物線を描き、マスターの手にすぽっと収まった。

 

「お前から返してやればあいつも喜ぶだろ」

 

「ありがとうございます」

 

「礼なんて言う必要ないだろ。寧ろ俺の方が謝るのが道理だ」

 

「それは沖田さんにお願いします」

 

「ああ、何処かで失くしたと言っておく」

 

「ひど?!」

 

「あいつはからかうと面白いんだ」

 

「あはは」

 

「お前のようにな」

 

「え?」

 

突如土方の姿がまるで陽炎のように一瞬揺らぎ目の前から消えた。

そのように見えたマスターは全神経を研ぎ澄ませて警戒したが、彼の声はなんと予想外にも背後から聞こえた。

 

「おせぇよ。だが良い反応だ」

 

首の横を太い二の腕が通り過ぎる。

マスターはハッとして後ろを振り向こうとしたが、それより先に余裕の速度で土方は片手で彼を直ぐに身動きが取れないようにがっちりと捕まえた。

そして残る片手は腰の刀の方に行き……。

 

(まさか……)

 

と、冷や汗をマスターが流した時だった。

土方は片手を刀の柄に触れただけでそのまま下げゆき、そして……。

 

「!?!?!」

 

不意に股間をぎゅーっと握られ、マスターは声にならない悲鳴を上げた。

 

「なんだ、やっぱり今はあるんだな」

 

「なっ……なっ……」

 

土方は直ぐにマスターを解放したが、そのマスターはといえば、状況を整理し切れず軽く混乱した。

土方はそんなマスターの様子を見てこの時初めて本当に面白そうに厳つさを抜いた笑い声を上げた。

 

「はっはっは! 悪い。面白そうな奴にはよくやるんだ」

 

「も、もしかしてまさか……これと同じ事を沖田さんにも」

 

「ああ、昔した。男だと思ってたからな」

 

マスターの震える声の質問にそうあっけらかんと答える土方。

この時マスターは、その日三度目となる沖田への同情を心の中でするのだった。




何か妙にBLぽくなりましたが、俺の中の副長はノーマルです。
でも今より昔の方が衆道が盛んだった気がするので、それを考えるとえると可能性としてはあったかもと思ったりはします。





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