人は自分の意志と関係なく生まれ、死ぬ。 生まれた瞬間に死はスタートし、それに向かって走り出す。
死こそは尊いもの。 もっとも平等で、価値あるもの。 そして常に目前にあるもの。
でも、ぼくらがその「死」を目の当たりにすることはほとんどない。 文明の発達とともに死は隠ぺいされ、ぼくらの認識から遠ざかる。
では、ぼくの食卓の前に広げられたこの「屍」はなんだと言うのだろう? ぼくらは確実に「死」から遠ざけられた「屍」しか知らない不幸な子供達なのだ。
今日、ぼくらは尊い「死」の上に立ち、生きていく。
それは「罪」ではない。 「死」を知らないことが罪なのだろう。
偉大な「死」の先には何もない。
だからぼくは必死で走る。 死に追いつかれる前に。