FGOのマスターの一人   作:sognathus
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その日は女の子の日だった。
いや、生理的な意味ではなく文字通りマスターが女性に変化してしまった日だった。
突然変化してしまうので、スケジュール管理にも支障が出るマスターの一番の悩み種。
故に困り果てた様子で溜息を吐いて歩く彼女(彼)の事が気にかかり声を掛けてきた者がいた。


カルナ ♀

「マスター、大丈夫か?」

 

「ああ、カルナさん」

 

「敬称は不要だ。俺は君に仕えるサーヴァント。呼び捨てで構わない」

 

「あー……うん」

 

マスターはカルナが少し苦手だった。

真面目で遠慮が無い実直な物言い、しかし自分でもハッキリと理解できる程の忠誠心が篤く誠実な人柄。

ようするに傑物過ぎて気が引けていたのだった。

 

「まぁ、でもカルナさんと敢えて呼ばせて下さい」

 

「そうか、それが望みならば受け入れよう」

 

「ありがとう」

 

「礼など不要だ」

 

「あ、うん」

 

「……」

 

「……」

 

気まずい沈黙が下りた。

いや、実際に気不味く思っていたのはマスターだけのようだった。

カルナといえば、特に居心地が悪そうにもしておらず、逆に真顔なのだが何やら興味深そうにマスターの顔をじっと見ていた。

 

「な、何?」

 

いたたまれなくなったマスターは自分から訊いた。

 

「すまない。少しマスターの事で気になった事があってな。マスターさえ良ければ答えてくれると嬉しい」

 

「なんだそんな事なら」

 

沈黙が続くよりは当然マシだと思えたのでマスターは気楽に一つ返事でそんなカルナの珍しくも細やかな希望を許した。

 

「その姿のマスターは生理とかはあるのか?」

 

「……」

 

沈黙が耐え難かったという理由で質問を安易に許した自分の浅慮をマスターは少し後悔した。

 

「え、えっと……そう、だなぁ……。今は、無いかな?」

 

「今は、というとやはり女性である以上有る、と?」

 

「う、うん。ダヴィンチちゃんが言うには、しっかりそれは起こる構造みたい」

 

「ふむ。周期とかはどうなんだ? 男に戻ったらリセットされるのならば実質無いようなものだろう?」

 

「え、えっと……男の姿に戻っても女の時の周期は有効? というか続いてるみたい?」

 

「なるほど……。という事は女性になった時に不意に生理痛に襲われる事も有りそうだな」

 

「う、うん……」

 

マスターはカルナの質問に恥ずかしさを覚え、頭が沸騰しそうな事に若干混乱していた。

その混乱は、女性化した精神と思考が自分は本来男であるという自覚とぶつかる事によって生じた軋轢だった。

カルナの問いをセクハラだからと、これ以上は遠慮して欲しいと退ける事は勿論有効だった。

しかし本来男であるマスターは自分からそう言う事にも遠慮と恥ずかしさを覚え、退ける事ができなかった。

 

「ふむ……となると、これは俺の推測だが。姿が変わっていても女としての時間もそういう形で存在しているのなら、例えば処女を失ってもそのままなのだろうな」

 

「しょ?!」

 

マスターは反射的にピンと身体を硬直させてしまった。

それだけカルナの言葉は彼にとって予想外で衝撃的だった。

 

「そうだ。俺たちはマスターと交わる事でも魔力の供給を受けられるだろう? もし俺の推測が合っていれば、マスターがこの方法を好んで行っても破瓜の痛みにその都度襲われる事は無いという事だ」

 

「は、は……わ……」

 

「まだこれは単なる仮説だが、中々に有益な推測だと思う」

 

「……そ……だね」

 

「大丈夫か?」

 

「だ! だいひょうぶ!」

 

とうとう俯いて自分でもハッキリ自覚ができる程顔を赤くしたマスターは、そんな自分を心配して屈んで声を掛けたカルナに強く動揺した。

 

(ど、どうしてこんな気持ちになるんだ?!俺は男だぞ!)

 

カルナはそんな動揺するマスターはまたジッと見つめて何か思慮に耽っている様子だった。

そして程なく一言いった。

 

「すまない」

 

「え?」

 

「マスターが男だという自覚が不動である事を前提で色々訊いてしまった」

 

「あ……」

 

「姿が女なのだから当然精神や思考も変化の影響を受けていると推測するのは当然だったな。本当に不躾で大変失礼な事をした。改めて謝罪させてくれ」

 

「あ、いや……。だ、大丈夫だからそんなに気にしないで」

 

男の時より長身に見えるカルナに深く頭を下げられてマスターは慌てふためく。

手をぶんぶん振って気にしない事をアピールしようとしたが、それと同時に心の中にときめきも感じた。

 

(ああ、ちくしょう……バイになったら絶対この変化の所為だ)

 

マスターは心の中で恥じらいと恨みが篭った涙を流した。

 

 

「だが安心してくれ」

 

「え?」

 

続いて出たカルナの一言にマスターは思わず顔を上げた。

 

「俺は男でも女でもマスターのサーヴァントだ。男の時もそうだが、女の時にマスターが同意のない行為に襲われそうになっていたら必ず守る」

 

「……」

 

ボンッと音がしそうな程再びマスターの顔は赤くなり、もうそれ以上カルナに何も言えなかった。

 

 




今回はちょっと短めでしたが、書きたい事は書けた気がします。





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