FGOのマスターの一人 作:sognathus
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清姫曰く「――(以下略)」
マスターの奴がよく喋るようになったというのは知っていたが、その中に自分が入っていないのがとてもモードレッドは気に入らなかった。
仲間外れ、蚊帳の外、表現はいろいろあったが、要するにそういう状況に我慢ならなかったのだ。
『なんでだよ! 俺は無視かよ!』
という事で彼女はマスターの背中を蹴った。
「いた?! なに?!」
「よぉ」
「野蛮な挨拶だね」
「もう一発いっとくか?」
「遠慮致します」
「おめぇよぉ、なぁんかいろんな女との噂聞くぜぇ?」
酷く風評が傷つく噂だった。
そりゃ所属するサーヴァントの全体の割合が女性の方が多いのでそういった噂が立ってしまうのも解るが。
「いや、でも、具体的に浮ついた噂は無いでしょ?」
「……まぁ」
「友人同士の付き合いが増えてきただけだよ」
「なんだよ。付き合うようになった奴はいないってか」
「いないね」
即答する辺り本当らしかった。
モードレッドはそれを何だか嬉しく感じた。
「そ、そうか」
「それじゃね」
「待てや」
「え?」
「ちょっと付き合えよ」
「俺これから部屋で過ごしたいんだよねぇ……」
「なら招待しろ。大人しくしてるからよ」
「できれば一人で過ごしたいです」
「大人しくしてるって言ったろ? 誓うぜ」
「……」
マスターは考えた。
モードレッドは従えるサーヴァントの中でも日常会話を交わした事がない人物の一人だった。
彼女と親睦を深めてこれからの任務に支障を来さないようにするというのも十分な理由とも考えられたが……。
「どうした?」
「いや」
ここのところのいろんな人との交流で偶に以前のように浮かぶ損得勘定的な考えに嫌悪感を覚えたマスターは、下から自分の顔を覗き込み、何処となく不安そうな眼をしたモードレッドに頭を振って答えた。
「じゃあ大人しくしててよ?」
「おう、任せとけ」
「因みにどう大人しくしてる?」
「えっ」
「本でも読んで静かにしてる?」
「性に合わねぇな」
「お茶くらいは出すよ」
「犬じゃねぇんだから。そんなんで大人しくできるかよ」
「大人しくする気ないじゃん」
「……そうならないように構っとけばいいだろ」
「難しいなぁ」
「取り敢えず部屋に連れてけ」
「はいはい」
マスターの部屋に通されたモードレッドはそこを興味深そうに至るところをきょろきょろと見ていた。
目について気になった物を見つけては「これはなんだ?」と、好奇心旺盛な仔犬のように矢継ぎ早にマスターに質問を飛ばした。
「モーさんの部屋って何もないの?」
「え?」
「いや、あまりにもいろいろと訊いてきたから」
「俺の部屋にない物ばかりだからな」
「別に大した物ではないと思うけど、これだけいろいろ訊かれるとモーさんの部屋がとても殺風景な気がしてきたね」
「んなこたねーよ。んー……まぁ散らかってるかな」
「どんな風に? お菓子とか服とかいろんなものがそこらじゅうに?」
「おー、そんな感じ。よく分かったな」
モードレッドはマスターが予想した答が的中して嬉しそうにニシシと笑いながら胡坐を組んだ姿勢で体を前後に揺らした。
マスターはそこで女性なんだからある程度は気配りできるところを見せた方が良いのでは、と思わず言いかけたがそれをすんでのところで止めた。
彼女が自分が女扱いもしくは、女性と指摘されるのを酷く嫌う事を思い出したのだ。
「……と」
「ん?」
何かを言いかけて思いなおしたような態度を取ったマスターにモードレッドは気付いた。
「どうした?」
「いや……うん、ごめん。君が凄く嫌いそうな事を言いそうになった」
「あー、言ったら命が無いぞってやつか」
「軽く言わないでよ」
「でも実際そうだからな」
「恐ろしい」
「まぁ言わなけりゃ問題ないぜ」
「意識してしまうのは許してくれると?」
「…………口と態度に出さなければな」
「難しいね」
「命が懸かってんだからそれくらいできんだろ」
「まぁ努力はするけど。はい、お茶」
「コーラじゃねーか」
「こっちの方が好きでしょ?」
「ん……」
モードレッドはマスターの問いには答えず出されたグラスに入ったコーラを口に運んだ。
「ぷはぁ……お?」
「はい、茶菓子のポテト」
「……」
モードレッドはこれも黙って口に運ぶ。
心の中ではもてなしとしては満点だったが、自分の好みを見透かれてるようで悔しかったのが理由だった。
マスターはと言えば自分の分もジュースを用意していつの間にか壁を背にしてスマートフォンでゲームをしていた。
「何してんだ?」
「ゲーム」
「それは見りゃ分かる。どんなん……? おい、これって今一緒に遊んでるってひょっとしてアイツか。あの引き籠り女か?」
「あ、ニックネームで判った?」
「キャラの見た目もな。むぅ……」
「モーさんも始める?」
「スマホは渡されたけどあんま使ってねー」
「そっか」
生返事をしてマスターは視線をスマホの画面に戻した。
まさかこんな会話の切り上げ方をされるとは予想していなかったモードレッドは慌てた様子で話を続けた。
「いやおい、まぁお前が教えてくれるっていうならやってみても良い、かな?」
「オッケー。じゃ、今姫にメッセージを……」
「おい、ちょっと貸せ」
「え?」
言うが早いかモードレッドはマスターからスマホを横取ると、意外に素早い指の動きで文字を打ち始めた。
「フリック操作はできるんだね」
「まぁな」
カーペットの上で足をパタパタさせながらスマホを操作する事数分、ようやく満足したのかモードレッドはマスターに返した。
「何を送ったの?」
「ん? 『今から俺とマスターがやるからちょっと待ってろ』だ」
「……」
何となくマスターはその文面に対して嫌な予感を抱いた。
そして案の定その予感は当たり……。
『ちょっと?! マーちゃんとヤンキーちゃん今何やってんの?!』
かなり動揺した声でドアを叩く刑部姫の声が玄関の外から聞こえてきた。
FGOのイベント、林檎の貯えが枯れてしまって苦戦してます。
いや、苦戦はしてないけど礼装しか交換できていないんですよねぇ。