FGOのマスターの一人 作:sognathus
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武蔵の要求にマスターは状況を確認して許可を出す。
「了解……どう?」
マスターは魔力回路を通して量を調整した魔力を武蔵に送った。
武蔵は身体中に力が漲ってくるのを感じた。
「オッケー十分よ! そいじゃま、片付けちゃいますか!」
その日の仕事は、武蔵の光刃が巻き起こした大音量の衝撃波と共に終わった。
「へぇ?! 女になったぁ?!」
「冗談に聞こえるだろうけど本当なんだ。昨日までは、そうだった……」
武蔵はよく仕事を終えると飲みに誘ったりしていた。
いつもはにべもなく断られ、渋々引き下がっていたのだが、その日は指示を出すマスターの様子がやけに暗い事が気になり、半ば強引に彼を自分の部屋に連れて行ったのだった。
「あー、なるほどね。それで昨日のダヴィンチはちょっと元気なかったんだ」
「え、そうなの?」
「うん、今日のマスターと似た感じだった」
「俺の所為だったと?」
「そうだと思うよー」
「何故?」
キョトンとするマスターを見て武蔵はくふふと笑いながら一息に酒を呷って言った。
「可愛かったからじゃない?」
「へ?」
「あの人結構あたしと気が合いそうだなぁ」
「……つまり武蔵もダヴィンチちゃんも少女が好き」
「いや、あたしは可愛い男の子。可愛いという点では共通してるね」
「ダヴィンチちゃんが女の子が好き……ピンと来ないな」
「あんま喋っちゃダメだよ? ただの予想なんだからさ」
「うん」
「でね」
急に身を乗り出してきた武蔵の迫力にマスターは思わず後ろに下がった。
今はお互い平服だったので軽い服装だった。
特に身を乗り出してきた武蔵は下着を付けずにシャツを一枚しか着てないらしく、マスターが正面から見た彼女の胸元はハッキリ言って目に毒だった。
マスターはなるべくそれを意識しないように彼女の目を見る事に集中した。
「はい?」
「さっきのあたしの話聞いてた? あたしは可愛い男の子が好きなの」
「え、ああ、うん。それで?」
「いや、解らない? あたしマスターみたいな感じもタイプよ」
「いや、俺ショタと言える歳じゃないし」
「しょた? いや、可愛ければマスターの年齢でも全然オッケー」
「俺が可愛い……?」
マスターは、なんか身体に回っていた心地良い酒気が一気に引き始めた気がした。
思わぬ事件こそあったが、今日に至るまでずっと男としての人生を歩んできた彼からしたら可愛いという評価は正直に嫌だった。
しかもそれが異性からとなると、その不快感は一際大きかった。
「ごめん。そういうのは俺よりアストルフォの方がまだ適正あると思う」
「うん、あの子も良いよねぇ!」
「趣味の範囲にしときなよ」
「ああ、それは大丈夫。ただ好きなだけだから」
「ならまぁ……」
武蔵の答を聞いてマスターが自分で注いだ酒を飲もうとした時だった。
不意に武蔵が手を伸ばしてきてマスターが口に運ぼうとしていたグラスを掴んで止めたのだ。
「え?」
「でもマスターはその中でも特別」
「特別……」
アルコールで薄く朱に染まった頬に笑みを浮かべた武蔵の顔を見つめてマスターは考えた。
(特別なショタ……?)
「嫌です。すっごく」
「なんでかなぁ?!」
「いや、男なら普通に嫌でしょ? 少なくとも俺は凄く嫌」
「うわっ、すっごく傷付いた。もうマスターは美味しい魚捕まえられないかもよ」
「美味しい魚ぁ……?」
武蔵の比喩が理解できず再び酒が頭に回ってきたこともあって、マスターは益々混乱した。
(一体何が言いたいんだ……?)
「だからぁ、マスターは私が好きなの特別に」
武蔵も良い具合に酒が回って文の構成がおかしくなっていた。
「いや、俺は別に武蔵の事は特別に好きでもないよ」
「え?! そうなの?!」
「特別にはね」
「それでも傷付くぅ! あー傷付いた! もうこれは責任取って貰うしかないね!」
「なんで責任を取る流れになるのさ。普通は突き放したり部屋から追い出すでしょ」
「それは嫌!」
ダンッ、とグラスから酒が零れるのも構わずにそう強く否定する武蔵。
マスターは、お互い酔っていた事もあって、そのまま平行線が続きそうな虚しい問答を危惧して一つ行動を起こすことにした。
武蔵の絡みには構わず急に立ち上がったマスターの足に武蔵はしがみ付いて止めた。
「こらぁ、行くら! ろこいくの!」
「ちょっと放して。ツマミがなくなっちゃったから何か用意するよ」
「えっ、ほんろ!」
「武蔵は先ず水飲んでね落ち着いてね。何が食べたい?」
「焼けた肉!」
「焼き鳥でいい? あと冷奴も用意しようかな」
「いいねぇ! あ、でもあたしのれいろーこにはお酒しからい……」
ションボリする武蔵を尻目にマスターは予測していましたとばかりに部屋から出て行こうとした。
「あ、まっれよ! おツマミならあらしが買ってくるから!」
再び足にしがみ付いて武蔵をマスターは少し優しい声であやすように言った。
「違うよ。食材は俺の冷蔵庫にあるから取ってくるんだよ」
「じゃ、マスターの部屋に付いていっれそろまま飲む!」
「あまり酔っ払いは連れて行きたくないなぁ……」
「おとらしくしれます」
「散らかさない?」
「応、我が剣に誓って!」
「そんな事で剣に誓い立てないでよ……」
呆れながらも武蔵の同伴を受け入れたマスターは、自分の後ろを彼女が付いてくるものと思って今度こそ部屋を出ようとした。
しかし……。
ガシッっと三度武蔵が足を掴んでいた。
マスターはジト目で彼女を見て訊いた。
「今度は何?」
「んふふー、お・ん・ぶ♪」
「……マジかよ」
マスターは今度武蔵の部屋で酒を飲むときは、十分な量のツマミを用意し上で付き合う事を己の心に固く誓ったのだった。
休みの日に、ネタが浮かべば、結構書けるものですね。
こんなに書けたのは前に書いていた艦これのSS以来です。
あ……そっちの方も、いやビルス様のも……。
武蔵のキャラちょっと崩壊させ過ぎちゃいましたかね。