FGOのマスターの一人 作:sognathus
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しかし寝返りを打ってうつ伏せになった瞬間『ぐにゃっ』と胸に今まで感じた事がない感触を感じて速攻で眠気が飛んだ。
「え? え?」
目下に女の胸が見えた。
目下というのは自分の視線を下げた直ぐそこの個所の事だったので、つまり自分の胸の事だ。
「……!」
混乱して出た声も自分が知る声でない事にマスターは気付いた。
その声は昨日までの自分の声より高いというか優しいというか、つまり女の声だった。
「……」
明らかに膨らんだ自分の胸を触ってみる。
やはり乳房だった、女の胸だった。
この柔らかさと形は絶対に男ではない。
「えぇ……」
悲愴な呻き声を出しながらごくりつ唾を飲んでマスターは恐る恐るという様子で今度は自分の股間に手を当てた。
「……はぁ」
溜息が漏れた。
そこにはやはり無かった。
朝だから当然生理現象を自覚させる硬さを感じる所だったのだが、残念ながら『そこ』は常に柔らかいようだった。
「なにこれ……」
意味が解らず肩を震わせながらマスターは取り敢えずこの事を相談するのに最も適していると思われるサーヴァントを令呪を使って呼び寄せた。
「えっ、なんだい? ここで令呪使って呼び寄せ……る……て」
マスターに呼び出されたのはダヴィンチちゃんことレオナルド・ダ・ヴィンチだった。
彼女は自身が令呪まで使って呼びされた理由を先ずマスターに質そうしたのだが、その意思はマスターの姿を見た所で途切れた。
「え……いや、もしかして……マスター、君かい?」
「ダヴィンチちゃぁ……ん。たすけ……えぇぇ」
自分でも驚くほど泣いた事なんてなかったのに、何故かその時の身体では感情の激流を抑える事ができず、少女になったマスターは自分の肩を抱き、泣きながらダヴィンチに助けを求めた。
その姿は目を濡らして助けを求める仔犬の如くとても可愛かった。
ダヴィンチはその可愛さに思わずマスターを抱き寄せてそのまま自分の胸に抱き締めた。
(はっ、何やってるんだ私は)
一瞬で冷静になったところは流石だったが、マスターを開放する前に胸元からマスターが今だ震えてか細い声で何か訊いてきた。
「……なんで僕って判ったの……?」
「え? あ、ああそれはマスターの男物の寝間着をそのまま着てたし、令呪も確認できたからね」
「抱き締めたのは……?」
「あ、安心させたくて。ほら、大分落ち着いてきたんじゃない?」
「……」
ダヴィンチの胸の中でマスターは黙ったままだったが、彼女の温もりには確かに安心感を感じた。
ダヴィンチはそんなマスターの頭を撫でてさらに安心させるのだった。
「落ち着いたかい?」
「うん……ごめん」
ダヴィンチの優しい声の問いかけにマスターは鼻を啜りながらなんとか応えた。
見ると女の身体になっただけでなく、髪型や身長も大分変っていた。
髪は黒から茶色になり肩くらいにまで伸びていた。
身長は逆に縮んで一回り半くらいにはなっており、大分小柄、少なくともダヴィンチよりは小さくなっていた。
「よし、じゃあ順番にいこうか。君は私のマスター、元男で間違いはないね?」
「うん」
「私の事はお姉ちゃんと呼んでいたよね?」
「あ?」
「うん、マスターだ間違い無い」
何かさっきよく解らない質問があったようだったが、それに対するマスターの反応を見てダヴィンチは彼女が自分のマスターである事を確信した。
大分論理が足りない彼女らしくない結論だったが、こんな不安定な状況では先ず正解と仮定した前提があった方が行動し易いというものだ。
となると次は……。
「女になってしまった事に関して全く心当たりが無いわけだね?」
「全然」
マスターは頭を振って無念そうに肯定した。
残念ながらそれは事実だった。
いつどこでこんな事になってしまう原因に遭ってしまったのか、全く心当たりがなかった。
怪しげな術や薬だって処された覚えはなかった。
「それは困ったな……。あ、もしかしてこれは誰かの夢だったり」
「夢だったら覚めて欲しいよ……」
更に残念なことにマスターにはサーヴァントの誰かの意識にレイシフトしたという覚えもなかった。
つまりはこれは粉う事無き現実という事だった。
はぁ、と溜息を付くマスターだったが、この時一つ気になる事があった。
「ねぇダヴィンチちゃん」
「うん?」
「もう放してくれていいよ。あと頭ももういいから」
「えっ」
ダヴィンチはまだ自分がマスターを抱きしめたまま頭を撫で続けている事に気付いた。
「……」
「あの?」
だが何故かマスターはまだ解放されなかった。
別に苦しくも嫌でもなかったが、流石にずっとこのままというのは恥ずかしさを意識させた。
「えっと……遠慮しなくていい。というかまだ私が君を抱いていたいと言ったら嫌かい?」
「えっ?」
何故ダヴィンチがそんな気持ちになったのか女になったマスターには全く理解できなかったが、本人が希望していたし、心地自体は決して不快ではなかったので、無碍に断るという考えも浮かばなかった。
「ま、まぁ……そう、したい……なら」
顔を赤くして俯くマスターをダヴィンチは嬉しそうに抱き締め直した。
「ありがとう。きっと問題は解決してみせるからね」
ぐだ子ネタの一発で終わるか考え中です。
半分ダヴィンチちゃんが絡んだ構成になってしまいましたが、ちゃんとタイトルに冠した話は別に作ります。