FGOのマスターの一人   作:sognathus
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私は悪の華!
サーヴァントとしてマスターの配下になったとはいえ、悪党の心は失っていないチョイ悪親父サ!
ン……? チョイ悪親父……? 悪党……?
な、なんか世に知れ渡っている私のイメージが落ちている気がするがき、きっと気のせいだネ!
さぁ、今日は以前から実行に移そうと思っていたサプライズをマスターにする日だ!
準備は万端、彼の行動も全て予測済み、計画に予想外の狂いはなく、私は優雅に待つだけ!


ジェームズ・モリアーティ

「やぁマスター、待っていたヨ」

 

「人の部屋に勝手に侵入しておいてなぁに言ってるんですかねぇ」

 

「そこはほら、私、これでも世界に名だたる天才的な悪党だろ? だから鍵がかかった扉くらい開けて入ってしまうのはワケないという事だヨ」

 

「自分が悪役だったからってここで犯罪を行ってよいという免罪符にはならないですよ」

 

「相変わらず手厳しいネ」

 

あちゃぁという顔をしてオーバーアクションを取るこの中年紳士(不法侵入者)をマスターは呆れた目で見た。

だがいくら呆れてもあまり軽率な態度を取るのも注意だ。

こんなにノリが良い人物だが、本来の役割は明確な悪であり、加えて世界に誇る知名度に恥じない優秀な人物なのだ。

どんな不用意な受け応えが自分に不利な状況を招くか予想ができなかった。

だからマスターも『アノ新宿』での一件以来、なるべく注意は怠らないサーヴァントの一人として彼を認識していた。

していたのだが……。

 

「ま、取り敢えず座り給えよ。紅茶を用意しておいた。ああ、部屋の物を勝手に拝借したのは悪いとは思っているヨ? しかしネ、君の部屋が片付いているのも考えものだ。おかげで探す手間がとても省けたのだから」

 

「それの何処が問題なんですかね。侵入者対策に部屋をワザと散らかして物の所在を判り難くするなんて度が過ぎた用心深さは、一般的に浸透しているものでは無いと思うのですが」

 

「君は私のマスターだろ?」

 

「……」

 

意味ありげにニッと笑らいかけた紳士だったが、その笑顔からやはり油断はできないという印象をマスターは受けた。

 

「まぁ……すいません、取り敢えずは何故此処に居たのか訊いても? 教授」

 

教授と呼ばれた人物は、ふむ頷くと紅茶を一口飲み、椅子に深く座り直して言った。

余談だが、彼が座っていたのは自分の部屋には無かった高級そうな一人用のソファーだった。

 

「カウンセリングだ」

 

「カウンセリング?」

 

「マスター、君、今精神的に疲れているだろう? だから私がこの天才的なセンスから君をカウンセリングして癒してあげようかと思ってネ?」

 

「今まさにその疲労の原因の一部が目の前にいるのですが」

 

「おやぁ? それは意外だ。これでも今までは目立たぬように君を観察して大人しくしていたんだがネ?」

 

「暗躍してたんですか」

 

「人聞きが悪いネ。私はただずっと、考察していただけだヨ? 君へのカウンセリングはどういうアプローチで行こうかと」

 

「このアプローチはちょっと非常識ですね」

 

「だが効果的で効率的だ。この方法なら取り敢えず初手で君という目的を逃す事は無い。それに私の悪党という立場を考えれば特に常識外れの行動という気もしないのだがネ? 」

 

「屁理屈な……」

 

「言っただろう? 悪党の常識というやつサ」

 

「非常識が悪党の常識と言いたいのですか? それなら大体何やっても悪党の常識で通りそうな気がするのですが」

 

「失礼。私の中のスマートな悪党の常識という定義に訂正だ。確かに一般人には非常識だが、私自身の行動にはそこに『乱暴』という言葉を決して連想させない。ああ乱暴とは実に良い言葉だね。『乱れる』と『暴れる』の組み合わせで乱暴とは実に論理的で好きだ。そして数学が好きな私が最も嫌う言葉の一つでもあるな」

 

「は、はぁ……」

 

何だか急に講義めいた話を教授が始めたので、戸惑ったマスターはその場で彼の雰囲気に流されて相槌を打つ事しかできなかった。

教授はマスターのそんな心境を鋭く察して、場を取り繕うようにコホンと咳払いをして眼鏡のブリッジを軽く指で調整した。

 

「失礼。さ、カウンセリングを始めようカ」

 

「僕を悪の道に引きずり込むつもりですか」

 

「言うね君ぃ。確かに私は君を目に掛けている。有能な部下になるのではと期待すらしている」

 

「えぇ……」

 

「そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないかネ?! 私の助手ができるんだゾ?!」

 

「犯罪の片棒なんて担ぎたくないです」

 

「片棒なんてとんでもない! 私は基本全部部下の所為にして決して自分の手は汚さないぞ!」

 

「余計質が悪いです! なに開き直ってるんですか!」

 

「ハハハ、冗談だヨ」

 

「……本当ですか?」

 

「まぁ、君次第だ」

 

「というと?」

 

「ちょっと暫く私の手伝いをしてくれればもう決して……」

 

「それ結果的には僕も教授と同じ側になってません?」

 

「バレたか」

 

「はぁ……」(ほんとこの人は……)

 

マスターはこの目の前で楽しそうにククと笑う中年紳士にいつ知らない内に取り込まれてしまうのでは、と内心ヒヤヒヤしていた。

何せ彼は数いるサーヴァントの中でもその異質さを光らせる人物の一人だった。

歴史上の人物でも神話の登場人物でもない彼は、近世の物語の架空の人物という一見存在の確立が弱そうな立場でありながら、世界的な知名度は抜群で、それによって支えられていた。

現在に生きる多くの人間に強く支えられるという事は、近世という現代に近い世界の舞台で活躍していた彼を能力的に大きく補強しているのではと、マスターはなんとなく考えていた。

そのぼんやりとした根拠が合っていたからこそ、元々強力な悪役だった彼がそれに輪をかけて強力な存在となり『アノ新宿』の一件で苦労させられたのではなかいか、そう思っていたのだ。

 

「教授も犬の方の教授だったらまだ良かったのに……」

 

「エ?」

 

教授はマスターのこのふと漏れた一言を聞き逃さなかった。

 

(犬の方の姿? それは一体?)

 

興味がその事に強く傾いた。

 

「それは一体どういう事かネ? 犬の私とは?」

 

「ほら、教授が出る物語は表現を変えて色んな形で広まっているんですよ。その一部、日本のアニメでの教授の事ですよ」

 

「エっ、何それ。もっと詳しく」

 

「カウンセリングは?」

 

「そんなの後だよ君」

 

マスターは自分の思わぬ一言が教授の興味を引いた事にホッと安心の息を吐いた。

因みに彼の脳裏には他にも原作並みに頭が切れる上に近接戦もやたら強い特異な教授の姿も浮かんだのだが、それは当然敢えて口に出さなかった。




タイトルでは思いっきり名前を晒してますが、敢えて本編の中では真名を出さずに中年紳士と教授だけの表記にしました。
なんかそれが常に物語で暗躍していた彼のイメージに合っていて書き易かったのでw





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