東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

過大な伸び率を放置 勤労統計 参考値非公表

<解説> 賃金の伸びを知る唯一の道しるべを消した-。厚生労働省が毎月勤労統計の二〇一八年実績で参考値の伸び率を示さなかった意味は、この一点に集約される。一八年にどれだけ賃金が伸びたのか、基幹統計の公表資料のどこにも載っていないという事態となった。

 一八年の名目賃金伸び率は、1・4%増と急伸しているが、これは主に基準の変更によって伸びたものだ。注釈も付けず、基準が違う一七年以前と平然と並べている。

 国会で政府は今、「参考値はあくまで参考」などと説明する答弁を繰り返しているが、そもそも公表値の伸び率が過大で役に立たないから、その推計をするために必要不可欠なものだ。エコノミストや学者は公表値を「こんな伸び率は使えない」と突き放している。

 基準を変更した政府の言い分は「統計改革」だった。結果として伸び率が過大になり、失敗を認めてやり方を修正するなり説明を尽くすなりすれば、まだ信じられた。しかし、明らかに過大な数値を放置し、今回は年間伸び率の実態が分からないようにした。「意図的ではないか」と疑うのは野党だけではない。

 「見かけの数字を良く見せたがる」。専門家にアベノミクスの評価を聞くたびに数え切れないほど同じ意見を聞いた。基準の変更による国内総生産(GDP)の増加が最たるものだが、一つ一つには苦しいながらも「大義名分」はあった。だがこの賃金の伸びは違う。開き直ったとみられても仕方がない。 (渥美龍太)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】