高木彬光は横溝のように優雅な文章を書けるわけではないので、おどろおどろしさはやや薄いが、この作品では入れ墨という題材を用いることによってある程度の神秘性を確保している。その以外は横溝作品にそっくりで、金田一ファンなら確実に楽しめる作品だと思う。名探偵・神津恭介は最後の方にしか登場しないが、登場するや否や事件を解決することによって、その天才性をアピールしている。彼が登場するまでは、他の人物が探偵役として試行錯誤を続ける趣向になっており、事件の難易度を読者に印象づけておくわけだ。この作品は高木のデビュー作なのだが、この時点で既に神津恭介シリーズを書き続けることを念頭に置いていたのだろう。(2000年8月27日)
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