明日かもしれない「親の介護」。今からできる備えとは?
ある日突然、親の介護が必要になったらどうしますか?自宅で介護?介護老人ホームへ?兄弟のうち誰が看る?そして、お金はどうする?親の介護が必要になる前に、今から準備できることは何だろう?その必要なポイントを、介護分野の専門家としてご活躍される、藤澤一馬さんが教えてくれました。
提供:大東建託株式会社
お話をうかがった方
看護師・FP・行政書士と、医療・お金・法律分野における三種の専門資格取得。医療、介護現場の生の声に応える、本当に知りたい情報を発信。様々な分野に精通する強みを活かし、予防から看取りまで、相談のみならず手続きのサポート、代行まで行う。
75歳以上になると約23%※1。要介護者数が増加する介護業界の現状
超高齢化社会となり、その需要が高まる介護業界。そもそも、介護を必要とする方の数は、どれくらい増加しているのでしょうか?
「現在、要支援・要介護として、認定されている方々が650万人もいます。『要支援』は1から2の段階があり、ほとんど補助のいらない、見守りや通院介助など軽度な支援を要する方。『要介護』は段階が1から5まで分けられ大きく異なるのですが、自分で歩ける方は1や2。3になると車イスが必要な方、それ以上になると日中を通して介護が必要になる方です。それらの段階によって、実際に受けることができる介護サービスの内容や費用が異なってきますが、現在、365万人の方が介護サービスを受けています。そして、介護保険制度が始まって18年経ちますが、ここ10年で認定された方が220万人も増えています。これは、高齢者の人口が増えていることも大きな理由ですが、生活の利便性が高まったことによる、外出機会の減少による身体機能の低下や、家族や地域との関係性が希薄になることで、適切な介護支援を受けられないこともあげられます。その内訳は、65歳以上がほとんど。男女比でいうと男性が約195万人。女性が433万人と、平均寿命の長い女性が多い傾向にあります。」と藤澤さん。
第1号被保険者(65歳以上)の要介護度別認定者数の推移
資料:厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(2018年7月)
(注1)平成18年4月より介護保険法の改正に伴い、要介護度の区分が変更されている。
(注2)平成22(2010)年度は東日本大震災の影響により、報告が困難であった福島県の5町1村(広野町、楢葉町、富岡町、川内村、双葉町、新地町)を除いて集計した値
「加齢とともに運動機能や認知機能が低下し、要介護になる前の状態を「フレイル」というのですが、生活習慣を見直し、このフレイルを予防することで、要介護者を減らすことが大切とされています。現在、国としてこの『予防介護』に力を入れており、『いきいき百歳体操』や、病院以外でもデバイスを使って地域の看護師や保健士、薬剤師の方々が健康チェックできるようになってきました。気軽に自分の健康状態を知ることで、健康意識を増進し、介護に至らないための後押しをする、予防の観点での取り組みが増えています」。
予防できることは予防する。国や自治体も様々な取り組みを行っているようです。要介護者を増やさないために予防介護の必要性は言わずもがな。では、介護業界の現状の問題としては、どんなことがあげられるのでしょうか?
「まず、いざ介護が必要になった時に、介護保険制度を含めた様々な制度を知らない方が多くいらっしゃることがあげられます。国としての制度はできていても、広報は各自治体が行うのでバラつきがあり、周知徹底が甘いように感じます。例えば、病院では介護保険のことは伝えますが、障害者自立支援法などのサポートまでは伝えきれない。なので、本来受けられるはずの支援や制度を受けていないケースも多いのです。さらに、今の介護体制は『できないことを補う』ことが中心。歩けないのなら、車イスを使う。トイレに行けないのなら、おむつ介助をする。要介護者がこれ以上悪くならない、現状維持の対応で手いっぱいとなってしまい、その後の自立に向けた取り組みができていません。ここには、介護を行う側の人手不足という大きな要因があります」。
※1 内閣府ホームページ「平成30年版高齢社会白書(全体版)」より
万が一「親の介護」が必要になったら、どんな問題が起こるの?
国や自治体も様々な取り組みを行っていますが、介護業界を取り巻く現状は決して楽観視できないもの。なので、個人単位でも少しずつ意識を高めて行動していくことが今後益々重要になってきます。では、いざ介護が必要になったら、何をすれば良いのでしょうか。個人としてどんな問題に向き合っていけば良いのでしょうか。
「まずは、地域の包括支援センターに相談するのが良いと思います。申請の代行やケアマネージャーの紹介など、介護支援に関する様々な情報やサポートを得ることができます。しかし、ここで教えてくれるのは制度のこと。必要な費用をどう捻出していくか、家族の生計の立て方は、やはり自分達で調べていく必要があります」。
「最初の問題として起こるのが、誰が面倒を看るのかというものです。配偶者がいれば、その方が看るケースが多いですが、もしいなかった場合、同居や近居の子ども世帯が看るのか、ご家庭によって事情は様々です。とくに、子どもがいない、または、遠方で暮らしている場合は、70代のご夫婦同士が看る『老々介護』となるケースも。さらに、自分も介護や支援が必要な70代の子どもが、90代の親を介護しなければならない『要介護者同士の介護』という問題もあります。そういった方々が直面するのは、精神的や肉体的な問題とお金の問題。介護する側が施設に入る、残された側の生活費が不足し、生活保護を受けなくてはならないという経済的な問題を、まずはクリアする必要があります。正直、ある程度の備えをしていないと、年金だけで補っていくのは難しいと思います」と藤澤さん。
「さらに、例えばですが、介護のために実家に誰も住まなくなり、実家が空き家になった場合、2015年に施行された『空家対策特別措置法』によって『住宅用地の特例』という優遇処置が適用されなくなたったため、固定資産税が約6倍もかかる可能性があります。また、老朽化が進めば耐震強度の問題もあるし、行政の強制代執行で取り壊しの判断が下されれば、その費用が請求されます。親が大切にしてきた思い出の家が、空き家による老朽化で地域の迷惑になるということにもなりかねません」。大きな負担がかかる介護。実際、どれくらいのお金が必要なの?
万が一、親の介護が必要になった場合、精神的な負担や肉体的な負担もかかることがあるでしょう。それを少しでも軽減するために、やはり経済的な問題はクリアしておきたいもの。では実際、介護にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。様々なケースの費用を、藤澤さんが教えてくださいました。
「要介護の段階や経済的な状況によって異なりますが、介護を在宅で行う場合や施設に入居するなど、最も介護の段階が大きい要介護5を想定した場合の、様々なケースを紹介します」
「その他、認知症対応型グループホームが20~30万円/月かかると言われ、資金の問題はやはり大きくのしかかります。年金の中でやりくりできるのは、在宅介護くらいでしょうか。もちろん、ケースによって様々ですが、65歳からの老後資金は2000万円から3000万円必要と言われていますが、これを貯蓄で補おうと思えば、年間で100万円を30代から始めて約30年。だとすれば、貯めるだけでなく、増やしていくことを考えていった方が良いと思います」。
万が一の介護負担を減らすため、今から親子でできることは?
つまり、親世代だけでなく子世代も、今から経済的な負担を軽くするための備えが大切なのですね。介護を通して様々な分野に精通する藤澤さんが考える、必要な『備え』はどんなことでしょうか?
「まずは、大前提として、親が要介護にならないように予防することを、子の立場から気にかけてあげるのが良いと思います。ポイントとしては、
- 生活習慣を見直すこと
- 適度な運動を継続して行うこと
- 生きがいやコミュニケーションをとれる、社会での居場所をつくっておくこと
(1)と(2)は身体的な健康維持に、当然必要なことですね。重要となるのが(3)。これは心のケアにもなりますが、家族や仲間とつながりを持つことで、例えばちょっとした身体の異変に気づいてもらい、要介護になる前に早めに受診ができるといったこともあります。親が自分からそういった機会を作っていければ良いですが、そうでない場合、親のためになるようなことを、子の立場から提案してあげる、あるいは一緒にやっていくことも必要ですね」と藤澤さん。
今からできることを、親子が一緒に考えることが重要なようです。それでは、親に対して介護の話をどう切り出せばいいか、アドバイスはございますか?
「今、『老活』というものがあります。これは老後の資金を得るための副業や投資、相続の知識を蓄えるなども含めた、素晴らしい老後を迎える準備なのですが、いきなり介護の話ではなく、こうした前向きな将来の準備を一緒に考えることが大切です。ただ、団塊よりも上の親世代は、自分の経験則を重視する傾向があるので、中々若年者のアドバイスが届きません。そういう時はまず、子世代から『老活』を始めることが良いと思います。自分と子ども、そして親のこれからのために、必要な資金や実家の土地をどう活用するのかなど、考えられるリスクを決めて、親に相談してみる。そうすると、親も『子どもがここまで考えてくれるのなら、一緒に私達も始めてみようか』となるはずです。お孫さんのこれからを一緒に考えようと、切り出しても良いかもしれません。数年後の設計でなくても、明日、明後日やりたいことを一緒に考えてみるのもいいでしょう。それを実現するために、今、自分達が何をすべきなのか。まずは、親と子でコミュニケーションをとることが大切です」。
「例えば、『親子で副業』を始めてみるのもひとつだと思います。ただ、副業を行う場合、専門的な技能や知識があれば、短時間で多くの収入を得ることも可能ですが、それはなかなか簡単ではないと思います。なので、専門的なことはその分野のプロにお任せしながら、高齢な親と働いている子ども双方にリスクや負担が少なく始めることができ、長期的なスパンで安定した収入が見込めるような副業だと、安心だと思います。そして、小さなことでも今から始めておくことが大切です。万が一親が要介護になり、親をサポートするために働き盛りの子世代が退職せざるをえないという、介護離職も問題にあります。この場合、経済的にも大変になりますよね。ただ、その時に不労所得などがあればありがたいと思います。なので、そういった観点からも、例えば、大切な土地を有効活用していくことなどを、今から親と一緒に検討してみてはいかがでしょうか」。
介護がいつ必要になるかは誰にもわかりません。今から予防をしながら、万が一にも備えなければなりません。そのために、まずは前向きに、『親子で副業』を始めてみませんか?