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【社会】

<税を追う>米基地騒音訴訟の賠償 日本150億円を肩代わり

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 在日米軍機を巡る騒音訴訟で、判決が確定した損害賠償額と二審で係争中の賠償額を合わせると七百億円近くに上り、うち、米国が負担に応じず、日本政府が肩代わりしている額が、少なくとも百五十億円に上ることが分かった。政府は日米地位協定に基づき、米国に賠償の応分の負担を求めているが、肩代わりの構図は長く固定している。米側優位の基地問題のいびつさがあらためて浮かび上がる。 (原昌志)

 賠償が確定しているのは、米軍や自衛隊が使用する東京都の横田、神奈川県の厚木、石川県の小松、沖縄県の嘉手納(かでな)、普天間(ふてんま)飛行場の各基地の訴訟。

 一九九三年に第一次、第二次の横田基地騒音訴訟(七六年提訴)の最高裁判決が確定して以降、二〇一六年の第四次厚木基地騒音訴訟の最高裁判決まで、確定した賠償額は遅延損害金を含めて計三百三十五億円に達する。一部の基地を除き、米軍機の騒音被害がほとんどを占める。

 原告住民らは日本政府を相手取り、夜間の飛行差し止めや賠償を求めて提訴。賠償が判決で確定すれば、政府が原告に賠償金を支払い、米側に応分の負担を求めることになる。

 日米地位協定では、米軍関係者が公務執行中の行為で第三者に損害を与えた場合、日本の法令に従って被害者への賠償金を負担することになっている。米国のみに責任がある場合は米側75%、日本側25%で負担し、双方に責任がある場合は均等に負担する。

 防衛省は、判決が確定した賠償の応分負担を米側に求めてきたが、「考え方に違いがあり、合意に至っていない」(地方協力局)として日本側が全額負担したままとなっている。防衛省は米側への請求額や割合を明らかにしないが、均等負担としても百五十億円以上を肩代わりしていることになる。

 騒音訴訟の賠償額は、下級審の判決がほぼ踏襲されるケースが多い。現在、控訴審で係争中の横田、岩国(山口県)、嘉手納、普天間の各騒音訴訟では、計三百三十九億円の一審判決が出ており、確定分と合わせると六百七十四億円に達する。一審で係争中の訴訟も厚木など四件あり、賠償額はさらに膨らむ可能性がある。

◆在日米軍「訓練の義務ある」

<在日米軍司令部広報部の話> 政府間の協議内容を明らかにすることは適切ではない。一般原則として米軍は日米安保条約の下で駐留し、両国を守り地域の平和に貢献するため、日々訓練や作戦を行っている。騒音影響の軽減に最善を尽くしているが、地域の安全保障環境が複雑化する中、最高レベルの即応体制を維持するため、訓練をする義務がある。

<日米地位協定> 日米安全保障条約に基づき、在日米軍の法的地位や基地の管理、運用を定めた協定。1960年の発効後、一度も改定されていない。税の減免のほか、米軍人らによる事件・事故に日本側の捜査権が及ばないことなどについて、自治体などは抜本的な見直しを求めている。

 

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