FGOのマスターの一人   作:sognathus
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「トナカイさん!」

ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ(通称J・D・A・S・L。長いので以後ジャンタ)も焦っていた。
まさかダメな大人の方の『私』が先にトナカイさんとちょっと仲良くなるなんて。
これは看過ごせません!


J・D・A・S・L

マスターはジャンタに呼び出しをくらっていた。

何故か自室で。

なんで自分の部屋に他人から呼び出しをくらう事になったのか疑問は解けなかったが、それを行ったのがある意味融通が効かない目の前の少女だったので取り敢えずマスターはその場では何も言わない事にした。

 

「どうしたのジャンタ」

 

「トナカイさん、私は今とても怒っています!」

 

「うん?」

 

「何故私より私と先に仲良くなるのですか!」

 

「??」

 

言っている意味が全くわか……いや、マスターは解った。

 

「あー邪ンヌの事?」

 

「そーです!」

 

ジャンタはそう言うとプンプンという擬音が聞こえそてきそうな膨れた頬のご機嫌斜めの表情で、マスターの膝をポンポンと叩いた。

どうやら膝に乗せろと言う事らしい。

マスターは特に拒否する事も無くそれに従った。

サーヴァントとはいえ、見た目と中身が伴う子供にはマスターは基本的に優しいのだった。

ジャンタはマスターが膝の座を差し出した事にちょっと機嫌を直したようで、どことなく御満悦な顔でフンスと彼の膝に座った。

 

「それで、トナカイさんは私が何故怒っているのか解ったんですよね?」

 

マスターに背中を預けたままの姿勢で顔だけ彼に向けてジャンタが訊いた。

 

「そうだなぁ。良い子なジャンタより悪い子の邪ンヌの方と先に仲良くしちゃったからなぁ」

 

「そーです! それです!」

 

「それ、単に彼女の方が君より先に俺につっかかってきた結果なだけだよ」

 

「つっか……な、何か失礼な事を?」

 

自分と彼女は別人と考えていたジャンタだったが、それでも優等生らしく将来の自分という見解にも一定の理解を示していただけに、ジャンタは『自分』がマスターに何か失礼を働いたのではないかと不安になった。

そんな彼女の頭にマスターは手を乗せて、ポンポンとしながら別に気にする様な事ではないと言った。

 

「別にジャンタの方が良い子の能力が劣っていたというわけじゃないから安心しなよ」

 

「そ、そうですか……」

 

「単に順番。あと俺が彼女とでもちゃんと交流ができますよってだけだよ」

 

「んー……」

 

ジャンタはまだ不満そうだ。

ここはもう一つ何か手を打つ必要がありそうだったが、有難い事にその代わりになる提案を彼女の方からしてきた。

 

「なら、トナカイさんは私とも仲良くなれる筈ですね? なんせあのひんせーふりょーな彼女とお話しできたんですから」

 

「え、今まで君とお話できてなかった?」

 

「お勤めの時だけだったじゃないですか!」

 

「でも君とは挨拶くらいはしてたでしょ?」

 

「それだけです! 元気ですかー? とか、ちゃんと早起きしないと駄目ですよー、って話しかけてもいつも『うん』とか『そうだね』って生返事ばかりだったじゃないですかぁ!」

 

「あー……」(そうだったかも)

 

「私はてっきり自分はトナカイさんに避けられているものだと思ってました」

 

「……あっ、うん。それは俺がちゃんと君が言う通りにしてたからだよ」

 

「え?」

 

「ほら、俺いつも一応元気ー……というか、いつも普通だったし、朝も遅い事とかなかったでしょ?」

 

「あ……」

 

ジャンタはその言葉に目を丸くした。

そういえばそうだ。

確かにマスターは自分にも素っ気ない気がしたが、言われてみれば以前から自分がマスターに気を遣って注意していた事をちゃんと守っていた、気がした。

 

「なるほど! そーいう事でしたか!」

 

「そうそう。そのお陰で常に心と体が健康だったから邪ンヌとも問題なく関係が進んだわけさ」

 

「つまり私のおかげだったんですね!」

 

「その通り」(いや、さっきそう言ったじゃん)

 

自分の行いは誤ってなかった。

自分はマスターの役にちゃんと立っていた。

結果的には先を越されたが、それは自分の存在があってこそだったのだ。

ジャンタは心の中でそう揺ぎ無いロジカルが成立に納得し、それと同時になんともいえない安心感と幸福感で満たされていくのを感じた。

 

「なるほど、そうでしたか。うん、それなら納得です」

 

「理解してもらえて良かったよ」

 

「流石私ですよね」

 

「うんうん、偉い偉い」

 

「撫でて良いですよ?」

 

「え、撫でてたじゃん?」

 

「ポンポンじゃ嫌です」

 

「なるほど」

 

「~♪」

 

マスターは、自分の膝の上で頭を撫でられて御満悦な顔をする彼女を純粋に愛いしく思った。

表裏のない子供の純粋さは時として癒しになるものだった。

 

(そう考えるとうちにいる他の子供のサーヴァントにももう少し愛想良くと意識すれば……)

 

その瞬間彼の脳裏には、やたらに毒舌で大人びた少年や、完璧な人格者の美少年、見た目は可愛いのに言動や行動がやたらに不穏な少女などの姿が走った。

 

「……」

 

「? どうかしましたかトナカイさん?」

 

ジャンタは急に真顔になって撫でる手を止めたマスターに気付き、それに対して疑問を口にすると同時に撫で作業の催促を目で行った。

 

「あー……いや、なんでもないよ。ごめんね」

 

「困った事があったら何でも相談して下さいね」

 

マスターは再び御満悦な顔に戻ったジャンタを見ながら彼女の存在の貴重さを再認識するのだった。




投稿が不定期になりました。
でもまぁゲームが続いている限りはマイペースにやっていこうと思います。





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