【潜入レポート】数々の名作映画がココで生まれた!東映東京撮影所を見学
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「映画の撮影所ってどんなところ?」今回、日本最大級の映像製作拠点である「東映東京撮影所」にご快諾をいただき、内部を見学! スタジオ営業部の阪井さん・第二製作部の加藤さんのおふたりに、東京都練馬区にある撮影所を特別に案内していただきました。
映画製作の準備から完成まで。ヒト・モノすべてがここに揃う
1935年に「新興キネマ撮影所」として設立されて以降、数々の名作映画・ドラマの製作が行われてきた東映東京撮影所。20,000坪を超える敷地内には、撮影スタジオや倉庫をはじめ、編集やアフレコ・試写などが行われる東映デジタルセンターなど、製作に欠かせない設備・機材、そして職人さんたちが集まっています。
現在、1年間でおよそ映画40本、TV番組150本、CM150本の撮影が行われており、かつては屋外に街並みを再現したオープンセットもあったとのこと。オープンセットがあった場所は現在、大型ショッピングモールになり、撮影ロケ地としても使われています。
早速、撮影所内へ!
はじめに見つけたのが、市場などでもお馴染みの「ターレット」と呼ばれる運搬車。主に大道具を運ぶために、所内を駆け巡っています。
そして早速、東京撮影所の中でも最大規模の第6スタジオへ。
第6スタジオでは、ちょうどドラマの撮影が終わったところで、幸運にも内部を拝見させていただくことができました。
中は、奥行き36.3m、幅23.7mで、面積にして約250坪! 高さは約10m! 余裕でキャッチボールできる空間が広がっていました。案内役の加藤さんに立っていただきましたが、この広さ!
ここでは、大作『北のカナリアたち』など数々の映画撮影実績があります。
続いて訪れた、撮影所の中で最も小規模(約70坪)の第3スタジオでも、この大きさ。
映画製作のスケールの大きさを実感できます。この第3スタジオでは、映画『探偵はBARにいる』などの撮影が過去行われています。
ここは「俳優館」と呼ばれるG.STUDIO。
役者さんの控え室、メイク室、衣装室、リハーサル室などがある建物です。そのG.STUDIOの前から続く道が「大森坂」。
このカーブの曲がり具合と高低差、そして柳の木が絵になるということで、仮面ライダーなどをはじめ、数々の作品で撮影が行われた場所。大森坂の名前の由来は、いまだ謎のままなのだとか。
さらに奥に進むと食堂が!
メニューも豊富で、ボリュームも満点。そして、日替わりランチ310円をはじめ、どれも学食並みにお手頃! 業界内でも美味しいと評判で、さすが体力勝負の現場にある食堂!という内容でした。
そして、食堂がある建物の屋上にはなんと神社も!
この東映北野神社では、クランクイン前に安全祈願と作品ヒットを祈願してお参りするのが習わしとのこと。まさか撮影所内に神社があるとは思いませんでした。
倉庫には、撮影所の歴史と映画美術の宝が満載!
スタジオに負けない程の大きさを誇る巨大倉庫には、役者さん以外で画面に映る、ありとあらゆるモノすべてが揃っていました。
「ここに来ればなんでも揃う」「ないモノはない」というくらい、ところせましとモノが並んでおり、時計ひとつをとっても、こんなに種類が!
作品の設定や世界観に合わせて、装飾部さんがこの中からセレクト。ディテールにまで及ぶ映画づくりの仕事の細やかさが伝わってきます。なかには、今では懐かしいアイテムも。
時代設定に合わせるために、ブラウン管テレビも捨てられない小道具のひとつですね。
「たとえばこのノボリの“営業中”をちがう内容にしたいときは、助監督が装飾部の親方に頼んでつくってもらう。小道具ひとつとっても、いろんな連携があるんですよ」(加藤さん)
“ないモノはつくる!” セットで家を建てるときは美術さんが木材を加工して、ここでイチから製作します。
重そうな岩も、実は発泡スチロール製でリアルに作られたもの。軽々持ち上げられます。職人さんって本当にスゴい。
圧巻は、設立以来の撮影で蓄積された「建て具」と呼ばれる、襖やドア、窓といった小道具の数々。ひとつひとつデザインがちがい、「もう作られることもない」という一点モノばかり。
「建て具はそんなに頻繁に使われるものではないんですが、捨ててしまうと、もう手に入らなかったりする。時代劇は京都で撮るという仕分けになっているんですけど、東京で時代劇を撮らないこともないので、作って使ったものはこうしてとっておいてあります。たとえば、昔の病院の待合室によくあったようなガラス板の窓なんてのは、もうここ以外にほとんど置いてない。もし割ってしまったらきっと手に入らないと思います(笑)」(阪井さん)
「美術デザイナーさんは使えそうなものを見つけたら、こんな風にキープするんですよ」(加藤さん)
そして、最後に案内してもらったのが、倉庫内にある木札の一覧。昭和32年以降に東京撮影所の美術チームが携わった作品がズラリ一望できます!
木札には、作品名・監督名・デザイナー名が書いてあります。
「この木札は何に使っていたかというと、大道具メンバーのグループ分けをするときに、“自分はどの作品の現場に行ったらいいか”を伝えるために使っていたものなんです。この木札の下に、担当メンバーの名前が書かれていた札が並んでいたんですね。それで自分がどこのチームかがわかるっていう」(阪井さん)
現在は、木札は使っていないものの、記録のために作品をつくる度に書いて掲げているとのこと。まさに東京撮影所の歴史そのもの! めったにお目にかかれない貴重なものを拝見させていただきました。
見学を終えて
今回、東京撮影所をザッとひと巡りさせていただき、あらためて映画というひとつの世界をつくるための手間・規模・動く人の数、その大きさを実感しました。映画をご覧になる際は、俳優さんの後ろにある撮影所、そして職人さんの仕事にもぜひ注目してみてください。
案内してくださった阪井さん・加藤さん、お忙しい中ありがとうございました!
(取材・文 / 斉藤聖 撮影 / 辻千晶)