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【首都スポ】

一輪車ダンサー・高田朝日19歳 世界最速女王は蝶の舞いと二刀流

2019年2月6日 紙面から

一輪車ダンス世界女王の高田朝日さん

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◇昨年世界大会でレース部門総合4連覇&演技部門初V

 いうなれば羽生結弦+ウサイン・ボルト? そんな異次元の世界で活躍する現役女子大生がいる。世界最速の一輪車ダンサー、高田朝日(19)=川崎渡田一輪車クラブ。風のように走り、蝶のように舞う“二刀流”ヒロインは、一輪車が“メジャー”スポーツと呼ばれる日を夢見てペダルをこぐ。 (ペン・カメラ=岩本旭人)

 世界20数カ国、1000人以上が参加する一輪車の世界大会「UNICON」(隔年開催)。昨年7~8月に開かれた韓国大会で、レース部門6種のうち100メートル、400メートルなど3種目で1位、その他種目でも上位入賞を果たして女子総合優勝、4連覇に輝いた。同大会、演技の美しさや完成度などを競う演技部門でも一学年下の妹・七海さんとペアで出場。前大会3位の悔しさをばねに初優勝を果たした。

レースに向けてスタート練習を繰り返す高田さん(いずれも岩本旭人撮影)

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 この快挙に演技の元世界王者で、世界的エンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」で舞台経験がある下山和大さん(日本一輪車協会事務局次長)は「幼少からスピードは抜きん出ていた。子どもらしいはつらつとした演技から大人の女性として優雅な演技へとステップを踏んでいる途中。伸びしろがある」と躍進に期待する。高田自身も「まだまだ課題ばかり、納得する走りをしたい」と、さらなる高みを目指している。

 一輪車との出会いは小学3年。先に始めた妹に刺激を受けて地元、静岡県藤枝市の一輪車クラブ「UC藤枝」へ。毎日2時間、休日は一日中乗っていた。小学6年には全日本競技会(小学生の部)でレース、演技ともに初優勝。中学生として臨んだ初の世界大会では400メートルと800メートルで世界新記録を樹立した。

 「先頭を走るのが好き。前に他の選手がいると気持ち良く走れないから」と胸を張る高田。無敵の女王もすべてが順風満帆というわけではなかった。15歳から演技部門はジュニアからシニアの部へと移行、体格差や技術の高さ、表現力の豊かさの違いを突きつけられた。多くの小学生が学校で一輪車を経験することから日本は世界的に見ても競技人口が多い。国内トップ選手は世界上位レベルの選手ばかり。国内で勝つことが難関だ。それでも生来の負けん気と努力で世界と戦ってきた。

 昨年、大学進学を機に上京。根っからの運動好き、子どもたちにスポーツの楽しさを伝えたいと体育教師を目指して日本体育大に進学した。現在は女子演技の部世界王者も所属する川崎渡田一輪車クラブで活動。週3回、川崎市内の小中学校の体育館を借りて仲間たちと汗を流す。

一輪車に乗り演技を披露する高田朝日(右)と七海さんペア(高田朝日さん提供)

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 私生活では上京も早1年、都会の生活にも慣れ始めた。「この前は友達と下北沢に古着を買いに行きました。最近はタピオカミルクティーにはまってます。甘党なもので」と女子大生らしい一面も。

 学生生活と競技とを平行し週2~3回、早朝の立ち食い蕎麦屋でバイトも始めた。講義前に働き、夜は近くの公園などで練習に励む。「時間を無駄にしたくない」と競技への思いはストイックだ。大会の演技時に着用するドレスは母・恭子さんの手縫い。「色やデザイン、わがままに応えてもらい助けられています」と感謝を忘れない。

 現在はオフシーズンながら7月の全日本一輪車競技大会レース部門に向けて練習する日々。目指すは全日本5連覇。また、今月17日には所属クラブの演技発表会も迫ってきた。たまの休日には、動画サイトでフィギュアスケートの映像を見て動きを学ぶ。参考にするのは男子日本代表の宇野昌磨。「小さな体を大きく見せる動きや表現力は勉強になります」と大舞台で躍動する姿に目を輝かせる。

 忘れられない思い出がある。初出場したイタリアでの世界大会。演技を終えた会場に響く割れんばかりの拍手や賛美の指笛。「会場と感動や喜びを共有できた。一輪車やってて良かった」と思えた瞬間だった。

 「あの興奮を日本でも…、そのために私は走る。一輪車って“かっこいい”と思ってもらえるように」

◆2月17日にクラブ発表会

 高田が所属する川崎渡田一輪車クラブの発表会は17日午後3時30分開演(午後3時開場)。会場は川崎市立田島小学校。

<高田朝日(たかだ・あさひ)> 1999(平成11)年5月7日生まれ、静岡県藤枝市出身の19歳。157センチ、49キロ。静岡・焼津中央高を経て日体大。レース部門の100メートル(13秒257)、400メートル(57秒625)、フルマラソン(1時間47分18秒)の3種目で世界記録(国際一輪車連盟公認)保持者。フィギュアスケート同様にスピンなどの技術や表現力を競う演技では、高いジャンプ力を武器に高い評価を得ている。

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