【ドラニュース】【龍の背に乗って】筒香ら輩出・堺ビッグボーイズ 瀬野代表を直撃 野球から「夢」を奪う体罰2019年2月6日 紙面から
雨の北谷に僕がずっと気になっている人がやってきた。瀬野竜之介さん。この名前にピンと来た読者は、相当な野球通だ。北谷を訪れたのは本業のウエア販売でサポートしている吉見と会うためだが、僕が聞きたかったのは堺ビッグボーイズの代表としての考えだ。たくさんのプロ野球選手を輩出している強豪クラブだが、ここではDeNA・筒香も在籍したと書く方がわかりやすい。 1月末に日本外国特派員協会で記者会見を開いたが、筒香は一貫して少年から高校野球までの勝利至上主義にNOを唱えている。昨夏の甲子園で話題になった球数制限の必要性やトーナメント制の廃止を訴える運動を展開。堺ビッグボーイズのスーパーバイザーでもあり、瀬野代表は恩師というより同志の間柄だ。 長時間練習、指導者による体罰に暴言、罵声…。昨年のスポーツ界で大いに問題となった「闇」である。瀬野さん自身も監督だったころはそうだった。全国優勝という結果も出した。ところがライバルチームも含めて、能力の高かった選手が甲子園までは出てもその後は「手術した」「燃え尽きて辞めた」という話をたくさん聞いた。 スポーツハラスメントで僕が思い出すのは、中日のルイスブルペン捕手から聞いた衝撃の体験談だ。広島の球団スタッフとして来日間もないころ。「ケンカしている」と思って止めようとしたら、それは体罰だった。ドミニカ共和国ではあり得ない。「すぐに警察呼ばれますよ」。治安が悪いと日本人が思っている国よりも、指導者のモラルは、はるかに低い。 「日本より指導を急いでいないんですよね。日本ではともすれば大人が主役になる。でも子どもの可能性を広げることが大人の役目なんです」 少年野球では日本の方が強いが、青年期には中南米に抜かれる現実を瀬野さんはこう見ている。少子化の比率よりも野球人口減少の方が、はるかに大きいというデータがある。「高校時代にだけは戻りたくない」というプロ野球選手を、僕はたくさん知っている。いや、プロに入っても暴言や罵声はなお浴びる。彼らが世に示すべき「夢」は、大金やプレーの質だけではないのだ。 (渋谷真)
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