FGOのマスターの一人   作:sognathus
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目が覚めたら、天井の代わりに清姫の顔があった。


清姫(狂・槍含む)

「あれ……」

 

「あ、目覚められましたかますたぁ。おはようございます」

 

黙っていれば美人で良い子の清姫が華やかな笑顔で挨拶をした。

頭の後ろが温かい柔らさを感じた。

どうやら清姫に膝枕をされているようだ。

寝起きのマスターはまだ頭がボンヤリしていて何故こういう状況なのか把握できなかった。

 

「……ん?」

 

「あ、ますたぁがですね、こちらの長椅子でお休みなってましたので私が快眠をお助けさせて頂きましたの」

 

「あぁ……」

 

親切にも清姫の方から今の状況に至る説明をしてくれたので、マスターも段々と眠る直前の自分の行動を思い出してきた。

 

(そういや、ゲームのやり過ぎで朝起きても寝不足で、廊下の長椅子で一休みをするつもりが……)

 

「……寝ちゃってたのか」

 

「はい、それはもう熟睡されておりました」

 

「あぁ……まだ頭がボンヤリするな」

 

「いくらでもお休みください」

 

「いやでも、枕はいいよ」

 

「私がしたくてさせて頂いてる事ですので。どうかご迷惑でなければこのままますたぁの重みを感じさせてください」

 

「……」

 

マスターはそれ以上何も言わなかった。

清姫は盲目的に自分を慕う傾向があり、特にイベントや誰かに嫉妬した時などは感情の高まりもあってとても厄介なのだが、こうして特に何も無い状況なら、普通に会話もできる優しい人なのだ。

だから特に理由が無ければ膝枕を固辞しない方が良いとマスターは結論した。

 

(無理に断ったらそれはそれで面倒な事に多分なるからな)

 

「ふふ」

 

「……」

 

ごろんと寝返りを打った時外を向いた耳に清姫の嬉しそうな笑い声が聴こえた。

マスターは何故か溜息が出てしまった。

 

「はぁ……」

 

「あ、申し訳ございません。心地が良くなかったですか?」

 

マスターの溜息が自分に原因があると思った清姫が申し訳なさそうな顔をして謝る。

 

「ああ、ごめん、違うよ。何か都合が良い時に甘えて、利用してるようで罪悪感がね……いや、利用してるな。ごめん」

 

「そんなこと。そんな風に気にされなくて良いんですよ。先程も申しましたが、清がしたくてさせて頂いてるだけですので」

 

「ん……」

 

『清』という一人称にマスターは僅かに反応した。

清姫の一人称が『私』から『清』に変わった時は感情が高まっている証拠だった。

マスターはこれまでの経験からそれを把握していた。

今はまだ一見まともだが、明らかに清姫は今、マスターの事を『愛しい人』から『私の旦那様』くらいにまで意識しつつあった。

 

(このままだとマズイ)

 

そう判断したマスターはまだ清姫の膝による心地良い快眠を要求する本能を何とか抑えて頭を上げた。

「あ……」と残念そうに漏らした清姫の声に少しマスターは罪悪感を感じた。

 

「ごめん。まだフラっとするけど後は自分の部屋で寝るよ」

 

「そんなご遠慮なさらなくて良いのに……」

 

「いやほら、此処でしてもらい続けるのも勿体な……あ」

 

「っ……!」

 

マスターは自分が墓穴を掘った事に気付いた。

自分では上手く持ち上げて事を収めるつもりだったのだが『此処で』という言葉は非常に良くなかった。

 

「……あなた」

 

「……」

 

事実、清姫は顔を紅潮させて恥じらうように口元を隠しながらも悦びの感情はだだ洩れで、更に悪い事にマスターの事を『あなた』と呼ぶようになっていた。

 

「いや……待って」

 

「はい、いつまでも。永遠に」

 

ダメだった。

これはどうやって乗り切ったら良いか、マスターは強制的に頭を覚醒させて思考をフル回転させた。

 

「俺はまだ未成年だから精神が大人になるまで待って」

 

「清の時代では十五にまでなれば、もう成人と変わりありませんでした。問題ございませんわ」

 

「うん、でも心は別だから。俺はまだその……はっきり自信がないと言える自信はあるんだ」

 

我ながら妙な言い訳だったが、幸運にも清姫はマスターの態度を真剣なものだと捉えたようだった。

乙女モード全開だった雰囲気もやや落ち着き、彼の呼び方も『ますたぁ』に戻っていた。

 

「ますたぁ……。では私はその時に必ず振り向いて貰えるよう、覚えを良くして頂く為に、今まで以上に御奉仕致しますわ」

 

「あ、うん。頑張ってね……」

 

何とかその場は収まりそうだが、マスターは清姫の自分に対する包囲網が間違いなく以前より狭まった気がした。




清姫も題材としては扱い易い。
ありがとうきよひー。





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