FGOのマスターの一人 作:sognathus
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その情報とは、自分のマスターとマシュが最近二人で食事をしたらしいというものだった。
(あの超淡白男が? 何故今になって?)
誰に対しても態度が変わらなかったマスターがただマシュと一緒に食事をしただけなのに、邪ンヌは言葉に表せない敗北感と焦燥感を猛烈に感じていた。
「なんで私がこんな気持ちにならないといけないのよ?!」
呼び出されたと思ったら出会いがしらに壁ドンをされた。
マスターは目を白黒させるだけである。
「おいなんだよいきなり……」
「うっさい! あんた、最近あの盾の女と食事に行ったらしいわね?」
「は? ああ、うん。マシュとの事だろ? それが?」
「なんで行ったのよ?!」
「いやなんでって……」
マスターは内心混乱していた。
何故マシュと食事に行っただけでこう剣幕を突き付けられるのかはっきりいって全然解らなかった。
「今まで行ってなかった事を俺自身がおかしいと思ったから……かなぁ」
「はぁ?!」
今になってそれか。
今更になってそれに気付いたのか。
邪ンヌはあまりにも単純明快な理由に凄い脱力と理不尽だとは理解しつつも、マスターに対して強い不満を感じた。
「じゃあ、私と行ったって問題ないわよね?」
「え? そりゃまぁそうだろうね?」
展開が意味解らない。
自分は食事に誘われているのか?
そんな事で何故こんなに怒っている?
マスターは内心混乱の極みだった。
「じゃあ行くわよ!」
言うが早いか邪ンヌは彼の手を取って食堂へ行こうとした。
しかし予想外にマスターはそこから手を引かれて連れて行かれようとはせず、邪ンヌは自分に逆らった力の元凶を睨みつけた。
「なに? どうしたのよ?」
「いや、まだ10時じゃん。昼は早いんじゃない?」
「はぁ……?」
マスターはそう言うと自分の腕時計の文字盤を邪ンヌに見せた。
「……」
確かにまだランチには早いと言える時間だった。
「時間決めて食堂で待ち合わせしない?」
「却下よ。あんたすっぽかしそうだし」
「俺今まで約束破った事無いと思うんだけど……」
「それ以前に私と約束した覚え無いわよね?」
「え? うん。そういえばそうかな?」
「なら信じられなくても仕方ないじゃない」
「それ理不尽過ぎない? 単に絡んだことが無かったってだけじゃないか」
「それよ!」
ドンッと、再びマスターは壁ドンされた。
もう本当に意味が解らない。
実はマスターは最初は僅かに邪ンヌがマシュと自分が食事に行った事に対して嫉妬しているのでは、と突拍子もない予想をしていたのだが彼女の態度を見る限り違いそうだという結論に達した。
では何だと言うのか。
まさかあの邪ンヌがマシュと同じ理由で自分とのコミュ不足に不満を持っている?
あのひねくれ者が?
「流石にあり得ないだろ」
「は?」
しまった。
つい口から出てしまった。
「何が有り得ないのよ?」
「ああ、んー……あ、今まで君とも食事に行った事が無いなんて有りえない……よね?」
「……!」
その言葉に邪ンヌは言いようのない気恥ずかしさを急に感じた。
顔色が赤みを帯びている気が凄くした。
だというのに胸の裡からはこれまた言い表せない温かさと嬉しさも確かに感じた。
(あ、そうか)
「そうよ! 私は勝利したのよ!」
明らかに恥ずかしさを誤魔化すための強引な思考転換だったが、邪ンヌはそう結論付けた。
「……」
マスターはというともう完全に沈黙していた。
はっきりいって邪ンヌの態度の変化に思考が付いていけず、彼女にかける言葉が全く思い浮かばなかった。
「いい、解ったわね?」
「はぁ……」
何が解ったというのだろうか、というのは無粋であり、愚かな答えだというのはマスターには解った。
「じゃあどうする?」
「私の部屋に来なさい。そこで約束の時間まであんたを拘束するわ」
「……本とかゲームは持ち込んでいい?」
「貴方、私と居る時間が退屈だと言いたいわけ?」
「いや、実際に俺が何も持たずに君の部屋を訪れた時の事考えてみなよ」
「……」
何もプランを立ててなかった邪ンヌは黙るしかなかった。
「じゃ、いいよね?」
「映画の DVD とかは持ってる? 持ってるならそれにしなさい」
「ホラーは平気?」
「舐めんじゃないわよ」
マスターの挑発とも取れる気遣いに、邪ンヌは自らの顔に僅かな笑みが浮かんでいた事に気付かなかった。
邪ンヌ可愛いですよね。
宝具レベル上げたいですが、それ狙ってガチャに金は掛けたくないです。