ロウファ副長
王国戦士長ガゼフの副長。ガゼフに対して意見を言うなど有能である。
平民の出でガゼフに憧れている。
※キャラに名前を付けただけです。
ここはリ・エスティーゼ王国の中心に位置する王都。その最奥にある場所であった。
ロ・レンテ城 ヴァランシア宮殿
その長い廊下には陽光が差していた。その光の下に二人の人物が立っていた。
「『星降りの災厄』のことですか?」
スレイン法国に隕石が二回も落ち大きな被害が出たことだ。正確な被害は把握していないが最低でも500万人は死亡したと聞いた。
「あの一件で周辺諸国は対応に困っておる。王国とて例外ではない」
その対応で王は過労や睡眠不足からくる不調により咳をすることが増えた。病に掛かっていた。このことを知っているのは(ガゼフが知っているのは)ラナー王女、クライム、レエブン候、そしてガゼフ自身くらいだ。
「だが・・・・」
(貴族共め・・・どうして今の状況を理解できないのだ)
「つくづく思う。良い跡継ぎがいれば・・・とな」
「陛下・・」
現在リ・エスティーゼ王国はランポッサ3世の跡継ぎについて問題となっている。長兄のバルブロ、次兄のザナック。唯一の例外は三女のラナー王女くらいだろう。
「少し・・疲れたかな」
ランポッサが意識が薄れ後ろに倒れる。ガゼフは咄嗟に両肩を掴む。
「陛下!!?」
ランポッサの目の焦点が合っていない。恐らく立ち眩みだろう。
「すまないガゼフ。寝室まで肩を貸してくれ」
「勿論です。陛下」
「感謝する」
(随分とお痩せになった・・・)
(陛下の病に効く『薬草』でもあればいいのだが・・・)
もしそんなものがあるのならばガゼフ自身が取りに行きたいものだ。
だがその様なアイテムがあるとすれば一番近い場所でも『トブの大森林』くらいのものだろう。
(そんな都合の良いものはないか・・・)
「長年仕えてくれて感謝する」
「縁起でもないことを言わないで下さい・・陛下」
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ヴァランシア宮殿 王の寝室
二人は入る。
王はそこで気が緩んだのか咳を出す。
「陛下・・そろそろ休んでください」
「ふむ・・・そうだなガゼフの言う通りにしておこう」
そう言ってランポッサは微笑む。だが表情が歪むと再び咳を繰り返す。だが繰り返す内に喉が傷ついたのか口を抑えた手には血が付着していた。
「陛下っ!!?」
「大丈夫だ。ガゼフ・・私はまだ死ねん」
そう言ってランポッサは笑う。
「陛下、今日の予定は・・」
「駄目だ・・今日はカルネ村を助けてくれたというアインズ・ウール・ゴウンなる魔法詠唱者が来るではないか」
「確かにゴウン殿はカルネ村を助けてくれた方です。ですが今日のこの体調では!!」
「何度も言わせるな、ガゼフ。それにかの
「・・分かりました。ならばせめて陛下が倒れられた際にはすぐに駆けつけられるようにしておきます」
「礼を言うぞ・・」
「いえ・・」
ランポッサはガゼフに向かって笑いかけた。
「悪いがガゼフ。着替えを手伝ってもらえんか・・」
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ロ・レンテ城 正門前
ガゼフは待っていた。戦士長と自身を呼び慕い共に戦ってくれる部下の戦士たちと共に。
「戦士長、そのアインズ・ウール・ゴウンとやらは本当に来られるのですか?」
ガゼフの右腕である副長ロウファのその問いに対してガゼフはハッキリと言う。
「あぁ。間違いない。かの御仁は必ず来られる。とても誠実な方だ。約束を違えるようなことはしない」
「まぁ・・戦士長がそう言うのであれば間違いはないですね。しかし幾つか疑問があるのですが・・」
「まだ彼らが来るには時間がある。答えよう・・・何だ?」
「かの
「あぁ。赤と緑の仮面だ。それがどうかしたのか?」
「何故正体を隠す必要が?あの『陽光聖典』を殲滅できるだけの者ならばむしろ顔を出し名を売った方がいいのでは?おかげで戦士長は奴らの生き残りを証人として連れ帰ることが出来たんですし」
陽光聖典・・・スレイン法国の特殊部隊『六色聖典』の一つだ。アインズ・ウール・ゴウンはこの部隊と交戦し殲滅した。生き残った数人を捕らえるとガゼフたちに罪人兼証人として連行することだ出来た。ただし王の御前にて行われた裁判にてある程度の証言を語った後に不自然な死を迎えたが・・
「かの御仁は『デスナイトを支配する為に必要なマジックアイテムだ』と言っていたが・・・」
ガゼフは陽光聖典についてあまり話すつもりは無かった。それゆえ話題はアインズ・ウール・ゴウンになる。
「本当にデスナイトなら・・・確かめる訳にはいきませんよね。貴族たちなら問答無用に外せと言いそうですが・・」
「当たり前だ。そこは例え貴族共に何て言われようが仮面を外ささせる訳にはいかない」
「しかし良かったですね。戦士長」
「ん?何がだ」
「無事生きていてですよ」
「王国・・いや王の為なら死ぬことは構わない。俺自身・・いつ死んでも良いように覚悟をしているつもりだ。だが・・・」
ガゼフのその言い方にロウファは察した。自分を庇って死んでいった者たちを思い出したのだろう。
「彼らは・・戦士です。戦いに生き、戦いに死ぬ・・・それにあなたの為に戦ったんです。悔いは無かったと思いますよ」
こんな言い方、ガゼフには慰めにもならないことを知っていた。だからこそせめて彼らの気持ちを代弁するつもりで語りかけた。
「俺にもっと力があれば・・・」
そう言ってガゼフは眉をひそめて拳を作る。
(実直な人だ・・・だからこそ私やみんながついていくのだろう。戦士長・・あなたは王の為なら死ねると言った。私たちもあなたの為なら・・・)
そこでロウファは考えるのを止めた。
「戦士長・・・私たちこそ貴方には何度も助けて頂いた。現にこうして野垂れ死ぬことなく生きている。『王国御前試合』でブレイン=アングラウスを倒し、王に忠誠を誓ったあの日から・・」
「・・・・」
「それで十分ではないですか・・・ただのどこにでもいる傭兵としてしか生きていけなかった俺たちをここまで連れてきてくれたではありませんか。戦いの中で死を選んだのは貴方ではなく彼ら自身の意思だ。戦士長が気に病むことではありません」
「・・・」
「そんな顔しないで下さいよ。これから俺たちはアインズ・ウール・ゴウン殿を迎えるんでしょう?もっと『貴族』みたいに威張り散らすつもりで堂々としましょう」
「あぁ。そうだな副長。こんな時こそ奴らの面の厚さでも見習うか・・」
そう言って互いに笑う。
「戦士長・・・来たようですね」
「あぁ」
(副長、感謝する)
・・・
・・・
・・・
馬車が見える。とても大きな馬車だ。
アインズ・ウール・ゴウンと共に来たのはメイドであろう二人の人物と村人らしき者だ。アインズ・ウール・ゴウンに仕える二人のメイドは非常に整った容姿をしていた。だがガゼフはそれよりも気になったのはアインズ・ウール・ゴウンが連れている村人らしき男性であった。恐らくカルネ村の村長だろう。
「お久し振りです。ゴウン殿」
「戦士長もお元気そうで何よりです」
「全ては貴方のおかげですよ。ゴウン殿。それでは案内しますので付いてきて下さい」
「分かりました」
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注意書き
ここから先は必要最低限のみを記す。一部の貴族たちがアインズ・ウール・ゴウンに無礼な態度を取った為である。なお無礼な態度を取ったものはランポッサ3世、王国戦士長ガゼフ、六大貴族筆頭レエブン候、第二王子ザナック、第三王女ラナーではないことをここに書き記す。
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王の間にて
村長がカルネ村に起きたことを全て話す。
帝国兵に偽造したスレイン法国の兵がカルネ村を襲撃したこと。
それがガゼフ暗殺の為の計略でしかなかったこと。
アインズ・ウール・ゴウンは生き残った捕虜(偽装兵と陽光聖典の生き残り)を王国に差し出した。
その者たちの証言から村長の言葉に虚偽はないことを話す。
その際に『スレイン法国』の『命令』で『実行』したことを語った。
それ以外にも『色々なこと』を語った。
ランポッサはスレイン法国の者たちに『国外追放』を命じ縄を解いた。
ランポッサは村を助けれなかったことの『謝罪』とカルネ村を助けてくれた『感謝』、それと『信頼』の三つの証としてアインズ・ウール・ゴウンに『カルネ村』に関する『全て』を頼んだ。
アインズ・ウール・ゴウンはこれに対して『今後3年間は税を無しとすること』『カルネ村に属する全ての者は徴兵に従わなくて良いこと』『今後3年間カルネ村はアインズ・ウール・ゴウンの所有物とすること』、この三つを約束させた。
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王の寝室
「アインズ・ウール・ゴウン殿には感謝しかないな・・」
「賢明な判断だったと思います」
「今回の一件でカルネ村の人々は王国の者に不信感を持ったはず。アインズ・ウール・ゴウン殿はかなり信頼されていると見えた・・・」
「えぇ」
(これで陛下の負担が少しでも減るといいのだが・・・)
「少し疲れたかな・・・」
ランポッサが倒れたのだ。口からは大量の血を吐き出している。
「!!今医者を」
「ならん。ガゼフ」
「しかし!」
「私をベッドまで運んでくれ」
ガゼフは何とかランポッサをベッドに連れていく。だがその一連の動作はガゼフの肉体からは想像もできないほど丁重だった。それはガゼフの体力が無かったからではなくランポッサの身体を気遣ってのことだ。
「ガゼフ。すまないが・・レエブン候を呼んできてくれないか?」
「っ!分かりました。すぐに戻ります。陛下」
「あぁ・・感謝する。」
ガゼフは部屋を出る。そこに一人のメイドがいた。王城に仕えているメイドだ。
(くそ!こんな時に・・)
王の不調を知られる訳にはいかない。そのためガゼフは急ぎたい身体を全力で抑えていた。
やがてメイドから見えない位置にまで歩くと周囲を見渡す。誰もいないことを確認する。
ガゼフはレエブン候の元に向かう為全力で走った。