「浪花の歌う巨人パギやんの『在日』無頼控」趙博著

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　歌手、俳優、物書きのパギやんは、岡林信康や吉田拓郎らに影響を受けたが、シンガー・ソングライターを意識していたわけではなかった。それより、大阪の「在日」の青年にとっては、韓国の民主化運動と連帯することが大事だった。そういう活動の中で韓国の民衆文化運動に触れ、出合ったのが、パンソリと仮面劇だった。

　階級的には蔑まれていたが、詩人・金芝河はここにこそ韓国人としての文化的アイデンティティーがあると直感した。それに呼応して、学生運動をやっていた学生や左翼の役者、金明坤らがパンソリの映画などを製作した。民主化運動を担っていた人たちが伝統文化と民衆文化の担い手になっていったのだ。

　奮闘する「在日」が社会に切り込む一冊。

（七つ森書館　１８００円＋税）