ネット裏のスタンドから、山本昌さんと並んで見た。この大物OBを投げる前からワクワクさせ、投げてうならせたのが石川翔、山本だ。
「この2人、ブルペンからいいんだって! イチ押しと二押し。今年中には出てくるんじゃないかな」。石川翔の良さは今日の中スポ1面に載っている。僕は山本の好きなところを書く。
北谷のブルペンは8人同時に投げられるが、20人以上がいるから順番に入る。投げ終えたら掘れたマウンドをトンボでならす。次の人のために当然のマナーである。ところが山本だけはお断りするのだ。先輩に遠慮しているわけではない。
「中継ぎはもちろんですが、先発でも先に投げるとは限りません。掘れていても困らないように、自分(の足)で整えただけで投げるようにしています」
僕はこの答えを聞いただけでうれしくなった。これこそが「実戦のための練習」なのだ。試合では所定のイニングに白線は引き直され、フィールドはならされるが、マウンドは少しずつ荒れていく。特にリリーフ投手は他人のつくった穴に苦しむことがある。
山本の歩幅は最も多い6足半。競合するため穴も広がるということだ。実際、昨季の2軍戦では対応しきれずに「投げにくかったことがありました」。それを見た小笠原投手コーチのアドバイスもあり、日ごろの練習からあえて荒れたマウンドで投球するようにし、適応力を高めていった。
この日の山本は9人のうち8番目の登板だったが「困りませんでした」と笑えたのは練習の成果だ。4人の打者に投げて1安打。最速145キロは石川翔と同じだった。
「すごく濃くて、あっという間の4日間でした。しっかりと自分で考えて練習して、キャンプが終わるころにここに戻ってきたいです」
石川翔は北谷組に昇格したが、山本は体験のまま北谷を去る。ライバルに後れを取ったと思うだろうが、小さなことにはこだわらず、スケールの大きな投手に育ってもらいたい。