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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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観光地

 そうして馬車に食料を満載して国の東の方へ行った時の事。


「ずいぶんと賑わっている村だね」


 冒険者が活気付いている村に通りかかりました。

 近くには山脈がありますな。

 食料を販売する合間にローブを纏って、村の酒場の方へとお義父さんと共に行きます。


「繁盛している様ですね」


 神鳥の聖人達と話題になっているので、お義父さんの事を村の連中は知っている様ですぞ。


「ええ、一週間ほど前に剣の勇者様が山に住む凶悪なドラゴンを倒したのですよ。今ではそのドラゴンから武具の素材を調達しようと冒険者達が集まっているのです」

「へー……」


 ふむ……錬が倒したドラゴンとな?

 どうやら錬はこの仕事をしてからゼルトブルの方へそれとなく移動をしたようですな。


「どうする? 俺達も見に行く?」

「必要があるのですかな?」


 お義父さんが俺に尋ねてきますぞ。

 この辺りは心当たりがありませんな。


「今ではドラゴンが残した財宝を探している者達も居る状況ですよ。ほら、ギルドの掲示板はご存じ無いので?」

「か、確認はしたんだけどね。俺達は流れの行商人さ」

「神鳥の聖人様達のお陰で、更に村は豊かになりそうですよ」

「ははは」


 お義父さんと酒場のマスターの会話はそれとなく終わりますぞ。

 酒場で軽く食事をとってからお義父さんは山の方を見ます。


「ドラゴン系の素材はある程度盾に入れてるけど……」

「気になるのですかな?」

「まあね」

「私はドラゴンが嫌いですな」

「うん、知ってる。サクラちゃん達もドラゴンには過剰に反応するもんね」


 フィロリアル様とドラゴンは宿敵関係ですぞ。

 そのフィロリアル様達と敵対するドラゴンは俺の敵も同然ですな。

 であるからして俺はこの村の騒ぎに対して、どうでもいい印象を持ちましたぞ。


「ドラゴンの残した財宝か……」


 という所で山から下山したと思わしき冒険者が目をギラつかせて仲間と話し合っていましたぞ。

 話を聞き入れたのか冒険者達は、また山へと登って行きます。


「なんか素材を集めるにしては殺伐としてない? 活気があるにしても……?」

「一般冒険者にはドラゴンの死骸のある地域は厳しいのではないですかな?」

「ああ、上限があるもんね。地味に魔物が強いとかか……にしても、魔物の死骸を運んでくる冒険者が多いね」

「そうですな」


 見た感じでは、様々な魔物がいますな。

 種類が多いのですが、ドラゴン系は少ない印象を受けます。

 しかし、中にはドラゴンと別の種族の魔物を合わせた様な魔物もいますな。


「この世界のドラゴンってどんな生き物なのかな?」

「全然知りませんぞ」


 敵を知れば良いとは言いますが、俺に取ってドラゴンなど経験値とドロップ品が優秀な魔物でしかありませんからな。

 確か、お義父さんの村に魔物に詳しい方が何人かいましたな。

 その方に聞けば良いのですが、どこにいるのか知りません。


「ドラゴンの縄張りって親玉のドラゴン以外もドラゴン系の魔物が多い印象があったんだけど、違うみたいだね」

「言われて見ればそうですな」


 ですが、それは当然の事では無いのですかな?

 しかし冒険者達が運んでいる魔物の死骸は遠目に見ても、ドラゴン系だけではない様ですな。

 むしろ、他の種類の魔物が多い気がします。

 お義父さんはその事が気になっているようですな。

 これはどういう事でしょうか?


「錬が倒したドラゴンって……どんなドラゴンだったんだろう? ボスクラスだったとか?」

「ありえなくは無いですぞ」

「俺もみんなで倒した事あるんだけど……かなり大きなドラゴンだったよ。あのドラゴンが山で放置されてるのかな?」

「冒険者が群がっている所を見るに山にあるのではないですかな?」

「かもね。運ばれてくるドラゴンに混ざった生き物も小型なのばかりだし、時々大きな鱗を自慢げに見せてる冒険者もいるみたいだね」


 そうして、何やらお義父さんが心配そうに山の方を見ています。


「何か不安な事があるのですかな?」

「うん。素材と言って、ドラゴンの死骸を放置して居るとしたら色々と問題があるんじゃない? 肉が腐るとか、臓物とかが腐って……疫病とかにならなきゃ良いけど」

「疫病ですか……ドラゴンの死骸から出る病は人を死に追いやるのですかな?」


 残念ながら俺はドラゴンについては詳しくありません。

 そもそも興味がまったく無いのですぞ。


「うん。この世界ではどうか知らないけど、ファンタジーではドラゴンの死体をどう処理するか? なんて物語は意外に多いんだ。物語の中だと、生命力とか魔力とかが関わっていたりするらしいけど、実際はどうなんだろうね」

「どちらにしても生き物である以上、腐るのではないですかな?」

「まあ普通に考えたらそうだよね。……腐る? ドラゴンゾンビとか出て来そうで恐いね。RPGでは定番のモンスターだし、生きている時より強かったりするんだよね」

「俺がやっていたエメラルドオンラインでもドラゴンゾンビはいましたぞ」

「……」


 お義父さんが俺の言葉に深く考え込みました。

 ゲームではドラゴンの死骸がドラゴンゾンビになるのではなく、ドラゴンゾンビが出現するダンジョンがあったのですぞ。

 中盤の敵というイメージですな。


「えっと……確か元康くんの話では、ゲーム知識って間違ったモノも多いんだったね。だけど、ドラゴンゾンビくらい居そうな気がするんだよね」

「なら、先に不安を潰しに行きますかな?」

「……そうだね。あんまり得になりそうにないけど、この国でドラゴン系の素材の武具を使っても良くなるなら良いかもしれない」


 お義父さんは了承して行商中のキール達の方へ行きましたぞ。


「兄ちゃん達、どうしたんだ?」

「うん、あの山に倒されたドラゴンが居るらしいから素材を取りに行こうと思ってさ」

「そっか! じゃあ俺達も行くか?」


 サクラちゃん達が腰を上げますぞ。

 退屈そうにしていましたからな。

 身体を動かせると思って喜んでいるのでしょう。


「積んでる食料を盗まれたら大変だから見張りは居て欲しいな。誰か留守番を……」

「ブー!」


 怠け豚がこれ幸いに鳴きましたぞ。

 我先と言わんばかりに手を上げています。


「エレナさんと……」

「じゃあ俺は行けるんだな!」


 キールが楽しげに万歳しておりますぞ。

 お義父さんがフィロリアル様達に目を向けます。

 サクラちゃんはお義父さんについて行きたいと言う顔をしております。

 ユキちゃんやコウも退屈だからか、同行を望んでいる様ですぞ。

 ルナちゃんはキールに乗っかっていますな。


「んー……くじ引きで二人お留守番して」


 カッとフィロリアル様達がお義父さんが出したくじを引きました。

 微妙に殺気を感じましたぞ。

 結果、ユキちゃんとコウがお留守番になりました。


「残念ですわ」

「残念ー……少し積んでるご飯食べて良い?」

「少しだけならね」


 お義父さんが留守番するコウに許可を出しました。

 コウは喜んでいますぞ。


「わーい」

「ユキちゃん見張りを頼みましたぞ」

「やる気が出てきましたわ!」


 ユキちゃんはとても真面目で助かりますぞ。

 走る事も大好きですからな。

 お義父さんと共に山から戻ってきたらユキちゃん達を連れてもう一度行きましょう。


「では出発ですぞ」

「おー!」


 フィロリアル姿に変身したサクラちゃんとルナちゃんに乗って俺たちは山の方へ行きましたぞ。



「うん……なんて言うか、観光地みたいになってるね……」


 お義父さんが呆れる様な口調で言いましたぞ。

 山の中腹に差しかかるまで登山道のように道が作られていて、村の者と思わしき男達が冒険者を見守っております。

 俺達はその道をどんどん進んで行っているのですが、確かに……修学旅行で行く観光地の様な雰囲気がありますな。

 入山するにも入山料を取られたので、もはや観光地と変わりませんぞ。


「だけど、整備が中途半端だね」


 山の景色を見渡しながらお義父さんは呟きます。

 確かに舗装された道などはあるのですが、どれも急遽作った物ですな。

 まあ錬がドラゴンを倒したのは一週間と少し位らしいので、こんなものでしょう。


「そうですな」


 時々、奇襲気味にドラゴンが混ざった生き物が襲ってきますぞ。

 冒険者達はその魔物とキャーキャー言いながら戦っているようでした。

 俺達ですか? 戦うと正体がばれかねないのでサクラちゃんとルナちゃんとキールに任せましたぞ。


「あれだよね。百年くらい経ったら剣の勇者がドラゴンと死闘を演じた伝説の地、とか言って教会が建ってそうだよね」

「入場料銀貨一枚ですな」

「あはは……」


 お義父さんが乾いた笑いをしております。

 ここまで開拓されたドラゴンの縄張りというのは確かに珍しいですが、何をするにしても金が必要なのはどうなのでしょう?

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