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【社説】

統計不正追及 与党は責任を忘れるな

 十四年間も見過ごされてきた厚生労働省による統計不正。実態解明の責任は国会全体が負っているが、与党側はなぜ担当官僚の参考人招致を拒否するのか。行政監視の責任を忘れては困る。

 衆院予算委員会がきのう始まった。衆参両院で先週行われた施政方針演説に対する各党代表質問に続き、各党の論客が一問一答形式で質疑する本格論戦の始まりだ。

 議案は二〇一八年度第二次補正予算案だが、議論が統計不正問題に集中したのは、統計の重要性を考えれば当然だろう。

 政策を正しく立案、議論、決定するためには、その政策の基礎となる統計が正しいことが前提だ。統計が誤っていれば、国民の暮らしのみならず、場合によっては生命、財産をも脅かす。

 毎月勤労統計を巡る不正がなぜ行われ、十年以上も発覚しなかったのか。その解明は、政府のみならず、国権の最高機関であり、国政の調査権を有し、行政監視の機能を担う国会の責任でもある。

 その責任は与野党を問わず負うが、与党側が十分に果たしているとは言えない。野党側が求めた同省の大西康之前政策統括官の参考人招致を拒否したからだ。

 大西氏は昨年七月から今年一月まで統計などを担当する政策統括官を務め、一月に衆参両院の厚生労働委員会で行われた閉会中審査でも、同省の統計責任者として統計不正について答弁に立った。

 毎月勤労統計に続いて発覚した賃金構造基本統計の不正に気付きながら総務省への報告漏れが問題視され、今月一日付で事実上更迭されて大臣官房付となった。与党側が野党の参考人招致要求を拒んだのは現職でないからだという。国民にはさっぱり分からない。

 直接の担当者にたださなければ実態解明は難しい。歴代政策統括官ら統計担当者を参考人として国会に招致すべきだ。なぜ不正に手を染め、受け継がれたのか、その解明なしに再発防止はできない。

 安倍政権の与党はこれまで、国会の場での真相解明をことごとく拒んできた。例えば森友、加計両学園を巡る問題である。

 政権を構成する与党とはいえ、立法府の立場から国政を調査し、行政を監視しなければ、三権分立とはとても言えない。野党に促される前に、率先して証人や参考人を国会に呼んだらどうか。

 与党議員は国権の最高機関に属する誇りを持つべきである。この期に及んで、まさか政府や首相官邸に忖度(そんたく)することなどあるまい。

 

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