転生者の苦労人(一時凍結) 作:sognathus
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部屋は一般役職用のものであった為ワンルームでこそあったが、流石はナザリックというかの如く広く、内装もそれは豪奢で煌びやかだった。
「ご案内していただき恐れ入ります。ゴウン陛下のお心遣いとお慈悲に改めて心より感謝いたします」
「うむ、伝えよう」
デミウルゴスはモモンガへの謝辞に満足げに頷くと部屋の勝手やナザリック内での規則、これからの予定に関して説明を始めた。
「……というわけだ。解ってもらえたかな?」
「はい。非常に解りやすうございました。ありがとうございます」
「……それで、だ」
ランドは何となくデミウルゴスが纏う雰囲気に僅かに変化が生じた気がした。
彼は何か室内を窺う様子を見せるとまたランドの方を向いて話し始めた。
「うん、一応覗き見る者はいない、か。さて、ちょっと良いかなランド」
「はい」
「私は今、君に支配の呪言を掛けて話したのだが特に影響は受けてないようだね」
「……」
デミウルゴスは先程の『ちょっと良いかな』の部分にそのスキルを使った。
しかしランドはそれに対して無言で肯定を示した。
それはデミウルゴスにとってスキルが効いてないと判断するには十分な材料といえた。
実際に効いていたなら返事は間違いなくしていただろうし、支配による重圧の影響で表情にも変化があった筈だからだ。
「という事は取り敢えず君はユグドラシル基準でレベル40を越える強さという事は確実なわけだ。ド〇クエ内でのレベル99は、ね。」
デミウルゴスは一つ一つ確かめる様に話を進めていく。
ランドはその続きを黙って待った。
「うん、大人しく清聴してくれて嬉しいよ。さて、ではここからが本題だ」
確実にデミウルゴスの雰囲気が変わった。
それは警戒心と断言できるもので、支配の呪言でなとも十分に威圧感を感じるものだった。
つまりはそれだけ重要な事なのだ。
「君は何を識っている?」
短い言葉だったがそれが語る真意は明快だった。
デミウルゴスはランドがモモンガとの謁見の際に彼が全てを話していない事を察していたのである。
ランドは流石にやや緊張した面持ちで慎重に話し始めた。
「……先ずはデミウルゴス様のご推察の通りです。その上でそのご慧眼に畏怖を含めました謝罪を」
「……続けたまえ」
「はい。一部の情報を伏せていたのは真実であります。そして私はそれに対しデミウルゴス様にご納得頂ける弁明ができます」
「で、その理由は?」
「これは、印象としてはナザリック内の分裂を狙う者の言のように聞こえる事でしょう。しかし私はそれでも、それを理解した上で申し上げらう必要があると確信する次第です」
「……」
デミウルゴスは黙って先を促した。
事前に断っておくのは大事だ。
今から話す事は特にナザリックの幹部にとっては不快感を感じる可能性が十分にある内容も含むのだから。
「先ず、私があの場で情報を伏せていた理由は、この話は可能であるならゴウン陛下とデミウルゴス様のみに伝えたいと愚行していたからです。そして、それに加えて極力アルベド様のお耳には入れるのを避けたかった為です」
「……アルベドに?」
話の内容は確かに一部の幹部にだけ情報を伝えたいというものだったので、組織内の分裂を狙う姦計と取れなくもなかった。
しかしそうだとしても何故ランドがアルベドのみを名指しで情報を伏せたい対象としてきたのか、デミウルゴスはそこに強い興味を持った。
「一つ一つ、ご説明申し上げます。先ず、私が伏せていた情報の一つですが、私にはゲームから得た力に加えてあと一つ、能力といえるものがあります」
「ふむ。それは?」
デミウルゴスの問い掛けにランドはそこで少し困った顔して続けた。
「それは……えー……何というか、未来……予測? 予知……に近い能力であります」
はい、実はゲームの力以外に持っていたランドのもう一つの力。
正直筆者的にはこれは、力という表現には合わない気がするのでが。
大体『未来予測』とか『アルベド』という単語が出てきた時点でSSをたくさん読まれてきた方ならピンと来ると思います。