転生者の苦労人(一時凍結) 作:sognathus
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見事な日本人的な低姿勢の土下座だった。
モモンガはその様子を見てこいつは間違いなく日本人だと確信するのだった。
「面を上げよ」
「は」
モモンガの許可を得て男は恭しい動作でゆっくりと顔を上げて彼を見た。
「……」
一見、本当にただの普通のちょっと疲れた感じのサラリーマンだった。
モモンガは転生前の現実世界の自分を思い出し、僅かに懐かしい気持ちを覚えた。
「……先ずは名を訊こう」
「織田信長です」
「おい」
「すいません。この世界ではアイル・ランドと名乗っております」
「この世界では、か。それにアイルランドとは……お前」
「すいません。何かパっと思いついたのが国でして。語呂も良かったので」
「何も隠す気は無いようだな。では続けて訊こう。お前はユグドラシルのプレイヤーか?」
「いえ、違います。ド〇ゴン〇エストを……やっておりました」
「ド〇ゴン〇エスト……?」
モモンガが知らない名前のゲームだった。
もしかしたら転生してきた世界や時代が自体が違うのかもしれない。
そう思い至ったモモンガがその点を確かめたところやはりその通りだった。
訊いてみれば自分が居た時代より100年以上も前に生きていた人間だった。
(こんな事もあるのか。もしかしてとんでもないレアケースという線もあるな)
モモンガのレアコレクションの嗜好に少し火が灯った。
「そうか。では、お前も転生者という事で間違いないな?」
「は」
「ここに来た理由は?」
「単純に庇護に入らせて頂きまして安寧な生活を」
「見返りが……それか?」
「はい」
モモンガはランドが持って来たという幾重にも重ねて置かれた箱を指した。
「中身はなんだ?」
「この世界で生きていく中で可能な限り貯め込んだ金貨と私のゲームで使用していた魔法の物を含むアイテム一式です」
「ほう」
モモンガはこの答えに純粋に感心した。
どれもナザリックにとても自分自身にとっても需要と興味を引く物だったからだ。
(こいつ解っているな)
「お前自身は何か出来るのか?」
「遊んでいたゲームの基準でステータスは全て最高値みたいです。全ての特技と魔法が使えます」
「それは大したものだ」
これも本音だったのだが、同時に自分を含めてナザリックの者が一層警戒の色を強くした。
「しかし遊んでいたゲームが違うのでは、お前の力がどれほどのものか判断が難しいな」
「仰るとおりです。しかしですね」
「なんだ?」
「ド〇クエはユグドラシルほど育成システムは複雑ではないので。恐らくそんなにユグドラシル程凝った事や強さは及ばないかと……」
「何故そのような事が判る?」
「キャラクターの造形から明らかに作り込みに大分差がある気がしまして……」
「自由度の話か?」
「左様でございます」
「ふむ」
モモンガは考え込んだ。
(何か初見でもっと判断が付くものはないかな)
「時間を止める系の魔法はあるか?」
「あるにはありますが、発動するかはランダムです」
(なんだそりゃ)
「ではもっと単純に。火炎系の魔法で最高のものの威力を見せて欲しい」
「畏まりました」
ランドは、モモンガの要求を承諾した事で一時、魔法の威力を見る為に屋外の荒野に転移で移動する事になった。
二話以降の展開はぼんやりです。