転生者の苦労人(一時凍結) 作:sognathus
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転生した時に得ていた力のおかげで不自由もなかったので、男にとっては余生を過ごすには最高の世界だった。
魔導王国という国が出来たらしい。
この世界は自分がいた世界より文明が未発達なので、特に、こと情報に至っては、自分から動かない限り本当に知りたい情報が全く入って来なかった。
そんな世界ではあったのだが、流石に新しい国ができたという噂は、周辺に広がるのが早かった。
まぁそれ以外にも帝国と王国との戦争で王国兵が虐殺されたとか大きな出来事があったわけだが。
そんなこともあって、帝国領のとある僻地にポツンと居を構えていたある人物は、その噂を知るなり善は急げとばかりにある行動に出たのだった。
「面会希望者?」
アルベドの言葉にアインズは王者の風格を保ったまま訊き返した。
「はい。今朝方よりナザリックの領前でずっと男が佇んでおりまして。侵入する事無くこちらの反応を待っていたようでしたので確認したところそのように」
「ふむ……人間か?」
「はい。どうしますか?」
「どのような者だ?」
「それが……」
普段通りならここで「邪魔なので殺しますか」とアルベドは言いそうだったが、その時に限っては彼女なりの判断でそうすべきではないという結論に達した。
「なに……? デミウルゴスのような格好をした男……? 一人だけで?」
モモンガはそこで本格的にアルベドの話に興味を持ち始めた。
デミウルゴスのような格好と言えばスーツの事であろう。
そのスーツという服は、この世界では結構珍しい服らしく、モモンガも今の時点でデミウルゴス以外にスーツを着た人間は見た事が無かった。
(まさか……)
モモンガはここで自分を訪ねてきた人間が自分と同じくこの世界に転生してきたプレイヤーなのではという考えに至った。
そして直ぐにそう結論するなりアルベドに自分の判断を伝えた。
「会おう。しかし警戒は最大にしておけ。もしかしたら……」
「プレイヤー……でございますね」
「可能性はある。だが私の仲間ではないだろうな。が、姿を偽ってるかもしれん」
モモンガの至高の41人と呼ばれるかつての仲間は全員異形種のアバターの姿をしていた。
故に訪ねてきた者の姿が人間という時点で、取り敢えず表面的には仲間である可能性は外れた。
だがそれでもスーツ姿で、しかも単独で自分に会いに来たという大胆な行動は興味を引いたし、警戒心を持たせるの理由としては十分だった。
「畏まりました。現在動いて支障のない守護者と、その他のナザリックの者全員で警戒に当たって連れてまいります」
「うむ。少しでも不審な素振りを見せれば殺せ。例えプレイヤーでも、だ。私の承認も仰ぐ必要は無い。そもそも私の仲間なら私を訪ねてきた時点で先ずそんな真似は絶対にしないからな」
「畏まりました」
アルベドはモモンガの指示に深く頭を下げて承諾した。
「連れて参りました」
「うむ。む……」
モモンガはアルベドが連れてきた男を見て思わず少し体から力が抜けてしまった。
何故なら連れられてきた男は、一言でいえばどう見てもただのサラリーマンのような格好をしていたからだ。
これも思い付きですが、これは後の展開が多少あるので連載ものとしました。
既出の方やれよというところですが、これを原動力にですね(苦しい言い訳)