世界遺産の合掌造り集落・白川郷がある岐阜県白川村に村最大級のホテルが完成し、3月に本格オープンする。村内全施設の客室の2割に当たる66室を備える。宿泊客を増やしたい村の誘致活動で実現したが、既存の民宿の中には経営への影響を不安視するオーナーもいる。ホテルと民宿のそれぞれの強みを生かせるかどうかが鍵だ。
新しいホテルは同村飯島に建設された「御宿結の庄」。ホテル運営大手の共立メンテナンス(東京都千代田区)が運営する。
「観光客の希望に沿った宿泊が可能となった。観光立村、単独村として存続していく要素が加わった」。成原茂村長は1月31日のホテル竣工式後のあいさつで喜びを語った。8年にわたって毎年同社を訪問し、誘致の打ち合わせを進めてきた。
誘致を切望した背景には、村内の宿泊客数が少ないという課題がある。村のまとめによると、2017年は約176万人の観光客が村を訪れたが、このうち村内で宿泊したのは6%に満たない約9万5千人だった。夜は、多くの観光客が宿泊先の高山市や金沢市に移動していた。
隣接する高山市では同年、観光客の約48%が市内に宿泊した。
完成したホテルは東海北陸自動車道白川郷インターチェンジから車で2分、白川郷合掌造り集落まで徒歩で20~30分の好立地にあり、天然温泉の大浴場と貸し切り風呂を備える。
白川郷観光協会によると、村内には44の宿泊施設があり、大半が民宿、旅館やゲストハウス。ホテルはトヨタ白川郷自然学校(同村馬狩)に次いで2棟目となる。
ホテル誘致の動きが表面化すると、村内の土産物店や宿泊施設への影響を懸念する住民が反対運動を起こし、村はホテル側に配慮を求めてきた。村内の宿泊料は民宿で1万円前後、旅館で1万5千円前後が相場。このため御宿結の庄は競合しないように平均約2万5千円と高級志向にした。売店も当初予定より小規模に変更した。
合掌集落にある民宿のオーナーたちは、影響を注視している。ホテル誘致に反対してきた80代のおかみは「全ての観光がホテルで済むようになれば、私たちはやっていけなくなる」とホテル宿泊客が村内を巡らないようなことになれば影響は大きいだろうと不安を語った。一方で「今は外国人観光客が主なターゲット。彼らは合掌造り家屋での宿泊体験を楽しみにやって来る。ホテルとのすみ分けができるのでは」と冷静に受け止めていた。