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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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スイッチ装備調達

 俺はその後、適度に魔物を狩りに行ってコウのLv上げをしておきましたぞ。

 お義父さんはシルトヴェルトの傭兵との臨時パーティーでの戦いを楽しんでいたご様子。

 あのパンダ獣人は面倒見の良い人物だった様ですぞ。

 俺が狩りから帰ってくるとお義父さんと酒場で楽しげにしておられました。


「じゃあ、俺はそろそろ用事があるから……」

「おう! また会えた時にでも、狩りに行こうぜ」

「うん。有意義な時間だったよ」

「あたいもそれなりに楽しめたぜ」

「ラーサ姉ちゃん! 楽しかったぜ! こんどカッコいい人になる方法を教えてくれよな」

「ばいばい」


 お義父さん達がパンダ獣人と別れを告げて俺の方へやってきましたぞ。

 瞬く間に他者と友好的な関係を築けるとは、さすがお義父さんですな。

 ……そのお陰で俺も配下に加えてもらっているので、お義父さんには頭が上がりませんぞ。


「じゃあ行こうか」

「わかりましたぞ」


 人目を避けて俺はポータルで打ち合わせ通り馬車に合流しました。


「元康くんは何をしていたの?」

「未来のお義父さんが使っていたであろう植物の種、バイオプラントをシルトヴェルトで植えて調べていたのですぞ」

「ああ、そういえばそんな話をしていたね」

「ブー……」


 怠け豚がこちらの方を見て鳴いてますな。

 俺とお義父さんの貴重な会話を横から邪魔するとは……やはりこの世から消した方が……。


「え? エレナさんの実家の領地でも実験は出来た? まあ、そうなんだろうけど下手に俺達が渡した物が暴走とかしたら立場が悪くなりそうじゃない?」


 そうですな。

 仮に渡した種が問題を起こしたら、犯人はお義父さんに仕立て上げられてメルロマルクの連中に大義名分を与えてしまいますぞ。

 そんな真似はさせられないですからな。


「ブブ」


 怠け豚はお義父さんの言葉に頷いているようですな。


「え? 成功したら結果的に良いんじゃないか? まあね……場所を確保してくれるならこの先、金稼ぎに良いかもね」

「槍の兄ちゃん! 俺の言葉わかるよな?」

「わかりますぞ」

「キールくん。ますます美味しそうになったね。コウ涎が出てくる」

「俺は食いもんじゃねえ!」


 キールがワンワンと鳴いてコウに威嚇しますぞ。


「ダメだよ、コウ。キールくんはサクラが守るもん」


 ギュッとキールを後ろから抱き締めてサクラちゃんが答えます。

 フィロリアル様達の中ではサクラちゃんが一番お姉さんになっていますな。

 本来はユキちゃんのポジションのはずだったのですが、精神的な物でしょうかな?


「クラスアップの時に使った紹介状で、シルトヴェルトの者に管理可能な畑を提供して貰いましたぞ」


 色々と便利ですな。

 お義父さん自身が行っても良いのでしょうが、お義父さんはお忍びで行動していますからな。

 前回の事を考えるとシルトヴェルトの者がお義父さんを大々的に歓迎してしまう……かもしれませんぞ。

 念には念をですな。


 まあ、そんな訳でこれからは余裕があったら確認に行かねばなりませんぞ。

 出来れば武器の素材に出来る程に数を確保出来れば良いのですが。

 一粒の種だけでは武器の解放しか出来ませんからな。

 どのような変化が起こるのかも追って調査した方が良いでしょう。


「それで元康くん、何かわかった?」

「植えてからしばらくの間は急速に成長しましたぞ。その先はまだ不透明ですな」

「へー……上手く行けば行商での資金稼ぎになる……かな?」

「そうですな。その為の実験ですぞ」


 波の影響で食糧の確保が問題として浮上していたと未来の世界では聞いたような覚えがありますぞ。

 その為、お義父さんが所持していたあの食べ物は画期的な食べ物は食料事情の解消に一役買っていたと思われます。


 現在、何だかんだで世界中が食料問題を抱えております。

 今の所は物価の高騰程度でどうにかなっていますが、最初の世界でお義父さんが村を開拓し始めた頃には食料事情も悪くなっていたのです。

 まあ、お義父さんの領地で実る植物のお陰でメルロマルクはそれなりに解消していたらしいですが。


 もしもあの植物が、俺の手に入れた植物であるのなら……まさしく金の生る木になりますぞ。

 安めに売り歩いても良いですし、恩を売ってバラ撒いてもお義父さん自身の評価が上がりますからな。

 今は国民の信頼を得るのが先決ですぞ。

 未来のお義父さんはそうして信頼を得たのだと俺は推理いたします。


「じゃあ、シルトヴェルトの人達に協力してもらって研究して行こう。俺も手伝おうか?」

「大丈夫ですぞ。お義父さんは俺が献上する結果だけをお納めください」

「そうは言ってもな……個人的にその種というのが気になるんだよね」

「まあ、定期的に観察するだけですからな。シルトヴェルトで出発する際に立ち寄るのも手ですぞ」

「じゃあそうさせてもらおうかな?」

「問題はお義父さんの身分が明らかになるとシルトヴェルトの城に招待されるかもしれませんが」

「……一応は俺の言う事聞いてくれるらしいけど、未来の話じゃ連日縁談を組まれたり、サクラちゃん達に毒を盛られたりしたらしいんでしょ?」


 お義父さんが懸念しているのはその問題ですな。

 前回のお義父さんはサクラちゃん達に毒が盛られていた事を憤慨しておられました。

 今回その話を伝えた時も不快そうにしておられたので、シルトヴェルトの人達を完全には信じておられないようです。

 だから城の方へは行きたがらないのですぞ。


「波まで後数日しかないし……せめて無実を証明して戦争の危険性を回避してからにしたいな」

「そうですな」

「後は、タクトって奴を倒した後に起こる事件だけど……どうしたら戦争を回避できるかなー……」


 そこは問題ですな。

 俺は豚の識別が殆ど出来ないのでタクトを倒した事で起きた戦争に関して対処の方法は数えるくらいしかありません。


 目撃者を皆殺しにする案ですな。

 タクトが罠に掛けて来た時、俺だけが先行して返り討ちにして周りにいる連中を皆殺しにすれば国に逃げられて戦争に成る事を回避出来るかもしれません。


 後は、最初の世界の通りに歴史を進めて、奴に世界征服を起こさせて返り討ちにした後、各国で処刑をさせる。

 他にも手はあるのでしょうが、試すには機会がありませんな。


 そういう意味で安易にシルトヴェルトにいると新たな戦争の火種が転がっているとも言えますぞ。

 ただ……ツメの勇者は偽者であるのを暴露すべきか悩みますな。

 どちらにしろ、会わずに済むのならそれが良いですな。


 出来る限り、城の方へ行かずにシルトヴェルトの土地を利用させてもらいますぞ。

 お義父さんが国内に時々いるとシルトヴェルトの上層部は理解しているとは思いますからな。

 全ては宿敵、メルロマルクを内側から崩す作戦という事で目を瞑ってくださるでしょう。


「とりあえず、来るべき時に備えて鍛錬を怠らないようにすれば良いか」

「そうですな!」


 こうして、その日は過ぎていったのですぞ。



 波まで後、三日。

 俺達はメルロマルクの城下町にやってきましたぞ。

 今回、必要なのは装備の調達ですな。

 行商で手に入れた金銭を元手に俺達は武器屋に顔を出しましたぞ。

 怠け豚は面倒そうに馬車で見張り番をコウと共にしています。


「おう! アンちゃんじゃねえか。調子はどうだい?」

「程々な所かな。そろそろ新しい装備が欲しくてね」

「おっちゃん! 俺、やっと槍の兄ちゃんに認識してもらえたんだぜ!」


 と、キールが子犬の姿で自己主張を始めましたぞ。

 武器屋の親父さんはそんなキールを眺めながら口を開きます。


「お? その声はアンちゃんが買った奴隷の……キールって奴だったか? 見事に獣人になれたみたいだな」

「どうだ! カッコいいだろ?」

「どっちかつーと愛玩用の魔物だぜ」

「おっちゃんまで言うのか!? カッコよくねえのか? 俺は!」


 がっくりとうなだれるキールをお義父さんが撫でて抱きあげますぞ。

 完全に子犬ですな。


「子ども扱いすんなよ、兄ちゃん!」

「はいはい。キールくんはカッコいいよ」

「うー……」

「はは、楽しそうで何よりだぜ。で? うちに何の用だい?」

「武器屋に来るなんて決まってるだろ?」

「そうだな。武器と防具が欲しいんだな。予算はどれくらいで何が欲しいんだ? 何なら下取りもするぜ」

「じゃあー……行商開始した初期に襲ってきた盗賊から奪った武器とかを買い取ってもらおうかな」

「ついでに何か素材があればオーダーメイドできるぜ?」

「あ、そういうのも扱ってるんだ?」

「アンちゃん好きそうな顔してんな。楽しそうだぜ」


 親父さんが呆れ気味に笑いながら答えますぞ。


「うん。良いよね。汎用では無く特注品って。しかも自分が集めた素材で装備作ってもらうって愛着が湧くもんじゃない?」

「気持ちはわからなくもねえな」

「とはいえー……行商の合間で手に入れた素材じゃあそこまでの物は無いかもしれないけど……」


 と、お義父さんは素材を集めた袋を親父さんに見せますぞ。


「ふむ……これなら色々と作れなくもねえな。今装備している品よりは間違いなく良いのが出来るぜ?」

「じゃあお願いできますか?」

「あいよ。とはいえ武器と防具、どっちにするかにもよるな」

「キールくんとサクラちゃんの装備を固めるのも手だよね」

「んー?」

「もっと切れ味の良い武器が欲しい! シルト――」

「キールくんお口チャック」


 お義父さんがキールくんの口を押さえましたぞ。

 そうですな。

 シルトヴェルトの方で使わせている武器は、メルロマルクの方では意図的に封じていますからな。


 俺やお義父さんがドロップで見つけた武器を使わせているのでしたぞ。

 攻撃力は高いですから、こちらでも使いたいと言う気持ちはわからなくは無いですぞ。

 それをここで暴露しようものなら、刺客や変な因縁を国が吹っかけてくるかもしれませんからな。


「何を言おうとしてるのか察せなくはねえぜ」

「すいません」

「良いって事よ。とりあえずはキール坊と嬢ちゃんの武器が良いか?」

「そうだけど……コウやユキちゃんには装備は必要無いの元康くん」

「ユキちゃんとコウは戦闘スタイルが魔物基準ですからな。装備は魔物商で用意してもらうんですぞ」

「じゃあ後で行く?」


 ふむ……今の所、ユキちゃんもコウも差し迫って必要な状況では無いですぞ。

 ツメはあれば良いですが、今はお義父さん達の装備を先に集めるべきですな。

 最悪、槍の中にドロップで出たツメが無くは無いですからな。


「気にしなくて問題ないですぞ」

「そう?」

「全く問題ないですな」


 現状としてユキちゃん達にツメの必要性は皆無。

 それこそ、武器が必要な場所に行くのなら俺がなんとかしますからな。

 というよりもメルロマルク内では危険な場所は出来る限り行きませんし、金に余裕が出来てからでも十分でしょう。

 なので現状としてはユキちゃん達に装備の必要性はありません。

 自らのツメやくちばしで戦うフィロリアル様は人間の様に武器の必要性が薄いのですぞ。

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