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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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獣化

「そうかな? 俺の基準だと、別に良いと思うよ?」

「ふざけんな! そんな格好をさせてあたいを笑い物にするつもりだろ」


 お義父さんは黙ってパンダ獣人に近づき、肩に手を伸ばして触れますぞ。

 どうやら毛並みなどを調べているようです。


「あ、思ったよりもごわごわしてるんだね。石鹸とかでマメに洗って柔軟剤……はあるのかな? で、毛を柔らかくすればイメージに近づくんじゃないかな?」

「何を言ってんだ、てめぇ!」

「ごっつい鎧よりも可愛い服を着た方がファンシーで似合うと思うよってね」


 ボフっとなんか変な音がしてパンダ獣人が数歩下がりましたぞ?

 獣人ですから、あんまり表情の変化が分かり辛いですな。

 ですが随分とうろたえているようですぞ。


「ふふふ、ふざけるのもいい加減にしろって言ってんだ!」

「そうだそうだ! 姐御に何をさせる気だ!」


 パンダ獣人の配下臭い連中が騒ぎ始めました。


「客寄せパンダかな? 傭兵とかより種族的な見た目の良さを利用して商売したら人気出そうだと思って」

「あたいを見世物にでもさせる気か!」

「珍しい種族かは知らないけどね」

「……」


 パンダ獣人が諦めたように振り返って配下の方へ歩き始めましたぞ。

 白けたと言う所ですかな?

 その後ろ姿をお義父さんは追いかけて頭にリボンを載せましたぞ。


「何すんだ!」

「似合うかと思って」

「似合わない!」

「どうかなー?」


 俺には全然わかりませんな。

 パンダにリボンが似合うのですかな?

 タイヤでじゃれていろですぞ。

 配下の方は怒りとも呆れとも異なる不思議な表情をしているようですな。


「意外と?」

「いや、ギャップって奴じゃね?」

「姐御って顔は良いから女物を付けると意外と似合うかもしれねえ」

「……」


 パンダ獣人は煩わしそうに配下を睨みつけましたぞ。

 睨まれて気まずそうに視線を逸らす配下達。

 やがて溜め息を吐きながらパンダ獣人はお義父さんに話しかけました。


「はぁ……あたいが悪かった。お前等は何をしてたんだ?」

「うん。キールくんに変身を教えられる獣人がいないか探しているんだ。傭兵をしているならそういう人、知らない?」

「なんだ。変身を知らねえなんて何処から来たんだ、お前等は」

「……メルロマルク」

「亜人差別の筆頭国じゃねえか……なるほど、道理で言語が変な亜人だと思った」


 パンダ獣人はキールの方へ歩いて行きますぞ。


「良いか、変身ってのを実践して教えてやるから、見ていろよ」


 そう言うと、パンダ獣人は豚に変身しましたぞ。

 その様子をお義父さんは驚いた表情で眺め、声を漏らします。

 何か思う所でもあったのですかな?


「ねえねえ。本格的に可愛い格好をしてみない? 絶対に似合うと思うよ?」

「ブー!」


 豚に変身したパンダ獣人がお義父さんの顔面を殴って手を痛めていました。

 盾の勇者のお義父さんを殴るなど無意味ですな。

 しかし豚になった瞬間から何を話しているのかわからなくなりました。


「絶対に笑われないって! ふざけて言ってないから」

「ブブー!」


 更に返す手でお義父さんを殴りつけます。

 が、効果が無くて悔しげに呻いた後に再度パンダ獣人に変身しましたぞ。


「てめぇいい加減にしろよ! あたいがこんな格好する訳ねえだろ!」


 で、お義父さんの肩を思い切り掴んで持ち上げようとしましたが、強化されたお義父さんは持ちあがりませんでしたぞ。


「ブブブー!」

「うるせえ! お前の連れが余計な事を言うからだろ!」

「姐御の言うとおりだ! やれー!」

「お前等は下がってろ! あたいをからかった罪を、その身を持って味あわせてやる!」

「させない」


 サクラちゃんがお義父さんを守ろうと近寄ります。


「大丈夫だよ、サクラちゃん。問題無いから、元康くんもジッとしててね」

「何処までも舐めやがって!」


 お義父さんをベアーハグしようとしていますが、上手く決まらないようですぞ。


「くそ! なんて硬さをしてやがるコイツ!」

「気は済んだ? じゃあこっちも色々とさせてもらおうかな」


 お義父さんは盾から布を取り出してパンダ獣人の首に巻きましたぞ。

 ちょうどスカーフみたいですな。

 そして頭にもう一枚巻いてみましたぞ。


「うわ! ふざけんな!」


 ベアーハグを解除してパンダ獣人が煩わしそうにお義父さんが着けたスカーフを取り去ります。


「いい加減にしろって言ってんだろ!」

「こっちもふざけて無いよ? むしろ男物の格好が似合って無いよ」

「はぁ……あたいの負けだ。だからあたいにふざけた格好をさせようとするな」


 と、言いつつパンダ獣人はお義父さんが渡した布をポケットにしまいこみました。

 これはフラグが立ちましたな。

 さすがお義父さん!


 それから再度、豚に変身してキールに何やら教え込んで行きます。

 やがてキールの頭に手を置いて、何やら魔法を唱えております。

 ふわっと魔法的な感覚の後にキールが姿を変えていきましたぞ。

 見覚えのある子犬の姿に。


「やった! やっと変身出来たぞ、兄ちゃん!」

「やったね。キールくん!」

「どうだ? カッコいいか?」

「どっちかと言うと可愛い方かな」

「えー! そんなはずねえよな! カッコいい姉ちゃん」

「……」


 パンダ獣人が微妙そうな目でキールを見つめていますぞ。


「なあなあ! 姉ちゃんみたいにカッコ良くなるにはどうしたらいいんだ? 教えてくれよ」

「あ、ああ。そりゃああたいみたいになるにはひらひらしたスカートなんか着けず……」


 と、変身で脱げたキールの服をパンダ獣人は凝視してますな。


「鎧を着て、戦いに参加すれば良いんだ!」

「そっかー! 俺はがんばるぜ!」

「元康くん、キールくんの言葉が分かる?」

「もう分かりますぞ。やっと豚から犬に戻ったのですな」

「豚から犬……そういう認識なんだね……」

「やった! やっと俺は男になれたぞぉおお!」


 キールがガッツポーズを取っていますが、お義父さんは呆れ気味ですな。


「キールくん。元康くんに認識してもらったからって、女じゃなくなった訳じゃないから」

「ええええええ!?」

「……おもしれえ連中だな、お前等は。どうだい? これから魔物退治でもシャレ込むかい?」


 パンダ獣人が何やら機嫌が良くなったのかお義父さんを狩りに誘っている様ですぞ。


「まあ……夜になるまでなら行っても良いかな」

「わかった。じゃあ少し出かけるとするかぁ!」


 お義父さんも了承しておられです。

 シルトヴェルト限定での狩りですからな。

 MMOで俺も経験がありますぞ。

 その時、知り合った面子と一緒に魔物退治、良いのではありませんか?


「俺は用事があるので、コウと一緒に別の所へ行ってますぞ」

「そう? じゃあ行こうか。サクラちゃん」

「うん!」


 ボフンとサクラちゃんがフィロリアル様の姿になって、パンダ獣人とその配下は驚きで声を失っていましたぞ。


「ほら、行こう。日が沈む前にお勧めの狩り場へ行って魔物退治しようと」

「あ、ああ……」

「そうだ。名前を聞いておこうかな? 俺の名前は尚文」

「あたいか? あたいの名前はラーサズサ、親しい奴はラーサで通ってるよ」

「よろしくね。ラーサさん」

「ああ、よろしくなナオフミ」


 お義父さんとパンダ獣人はそう意気投合して狩りに出発しましたぞ。

 キールが出発するまで執拗に俺に言葉が分かる? って聞いてましたが、その度に頷きました。

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