NGT48騒動について元・不動産会社社員が問題視する2つのこと

新潟の人気アイドルグループ「NGT48」のメンバーが自宅前で暴行を受けた事件は発覚から1か月近く経過しました。

にもかかわらず、事実関係に関する明確な説明がなく、一方で立場の異なる媒体により真贋入り混じった情報が垂れ流されており、混沌とした状況になっています。

この事件はメンバーの寮として、グループの運営会社が借り上げているマンションが舞台となっており、不動産取引において普通ありえないことが背後で起きていたと報じられています。

今回は騒動をめぐる報道を元・不動産業者社員の筆者の目で検証してみました。

「被害者の向かいの部屋を加害者が借りていた」報道を検証

新潟市

Mugimaki / PIXTA(ピクスタ)

NGT48は、出身地が新潟以外のメンバーの大半はグループの運営会社が「寮」として借りたマンション内に住んでいます。

被害者は自室の向かい側の部屋から出てきた男に暴行を受けたと証言しており、その部屋に住んでいたのが誰かという点が大きな問題の一つとなっています。

この部屋はもともと事件への関与が疑われているNGT48メンバーの住居でしたが、1年半前に退去して現在は加害者が借りていると一部週刊誌が報じました。

運営もこれを認めているようですが、はたしてこのようなことが実際にあり得るのでしょうか。

 

契約には個人契約の他に法人契約がある

マンション

YNS / PIXTA(ピクスタ)

賃貸物件の契約には大きく分けて個人契約と法人契約の2つがあり、寮ということなので今回は法人契約であったと思われます。

この場合、契約上の借主は運営会社であるAKSとなるため、メンバーが退去したからといって部屋を解約する必要は必ずしもありません。

家賃負担の問題があるため退居と同時に部屋も解約してしまうのが通常ですが、人気アイドルグループの寮として使用しているので、メンバーの安全やプライバシーの問題も考慮しなければなりません。

 

解約予告を出すと物件情報が公開される

オートロック

EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

賃貸借契約を解約する場合、借主は退去日の1か月前(まれに2か月)までに解約予告を出します。

貸主側にとっては部屋が空いている期間は家賃収入がゼロとなるため、できるだけ早く次の入居者を決めなければなりません。

そのため大半の貸主は解約予告が出されると物件情報をすぐに公開して再募集を開始します(そのため解約予告は一度出してしまえば取り消しできないのが通常です)

AKSが貸主に対して解約予告を出せばほどなくして物件情報が業者専用サイトに登録され、日本中の不動産業者で閲覧可能になりますが、その際は「7階建ての4階」というような部屋を特定できないような表記だったと記憶しています。(貸主側の仲介会社に確認しないと分からない仕組みになっている)

人気アイドルグループが寮にするようなセキュリティーと住環境が整った物件であれば誰もが借りたいと思うもので、そのようなマンションで空き情報が出れば猛烈な競争が始まります。

 

「〇〇マンションで空きが出たら教えて」という依頼はNG?

新潟市内

Mugimaki / PIXTA(ピクスタ)

賃貸物件の営業をしていると「〇〇マンションで空きが出たら教えてください」という依頼を何度となく受けるものですが、まともな社員であれば全てその場で断ります。

解約情報はいつ出されるかわからず、多忙な中、無数の物件の中で特定のマンションに張り付いているわけにはいかないのです。

そのマンションを管理する不動産業者の担当者ならばすぐにわかることですが、「NGTメンバーの向かいの部屋が空くぞ」なんて話を外部に漏らせば宅建業法に触れることになります。

不動産業者は「業法違反」に特に敏感で(それ以外なら何でもやる)、業者からメンバーの情報が漏れるということは考えられません。

 

裏で起こっていたと考えられる2つの問題

上記のことから、仮に報道が事実であれば、背後で次の2つの問題が発生していたことになります。

どちらも考えにくいことですが、この両方が揃わないと発生しないような事態です。

メンバーの向かいの部屋を運営会社が解約した

マンション

ABC / PIXTA(ピクスタ)

空いた部屋を解約してしまえば、そこに誰か他の人が入ります。

人気アイドルグループのメンバーが多数生活する場所に部外者が入り込めば安全やプライバシーの点で問題であることは明らかですが、それにもかかわらず運営は部屋を解約したことになります。

新潟市のワンルームマンションの賃料はそれほど高くありません。

メンバーの安全よりも月額数万円の経費削減を優先するということはあり得るのでしょうか。

 

メンバーの内部情報を加害者が知っていた

エレベーター

EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

部屋の退去情報というのは事前に予測することはできず、また一旦解約予告が出されれば情報はすぐに公開されて早い者勝ちの嵐にさらされます。

特定のマンション内の特定の部屋を押さえるということはそれだけ難しいものです。

メンバーが住む階数も知っておかなければならず、何らかの形で内部情報をかなり以前から入手していない限りありえません。

 

何が嘘で何が本当か、自分の頭で考えよう

報道

Wellphoto / PIXTA(ピクスタ)

以上、報道されている内容を不動産会社元社員の目で出来るだけ客観的に検証してみました。

今回の事件では運営会社の発表の他にNHK、民放、地元紙、スポーツ紙、週刊誌といった様々な媒体が入り乱れ、多種多様な情報が錯そうしていますが、いろいろと思惑があるようで発信する媒体によって内容がまったく違っており、そのまま信じてしまうことは危険です。

今回提供した情報を参考に、何が事実かご自身の頭で考えてみてください。

(ちなみに被害者の内部告発により事件が発覚したのは1月8日ですが、不起訴になった加害者は既に12月28日の段階で釈放されています。被害者の向かいの部屋を加害者が借りているという報道が事実であるとすると……。ああ恐ろしい)