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お笑い界の勢力図の変化 西高東低から“均衡”の時代へ

  • ブレイク中のブルゾンちえみ with B

    ブレイク中のブルゾンちえみ with B

 平野ノラ、ブルゾンちえみ、サンシャイン池崎、バッドナイス常田に厚切りジェイソン…。近年ブレイクした若手お笑い芸人たちはワタナベエンターテインメント所属。ほかブレイク中のメイプル超合金、かもめんたるはサンミュージック所属、永野、カミナリはグレープカンパニー所属、アキラ100%、AMEMIYAはソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)所属だが、これら事務所に共通しているのは東京が本拠地であるということ。お笑いといえば、その代名詞的な存在でもあるよしもとクリエイティブ・エージェンシー(吉本興業)がシーンを牽引していることに変わりはないが、ここにきてよしもと一強の“西高東低”時代から“東西伯仲”の群雄割拠時代へと、お笑い界の勢力図が変わりつつあるようだ。

80年代の漫才ブーム以降、よしもと一強の西高東低の時代に

 1980年代半ばの漫才ブーム以前。東京では、アメリカ占領下でジャズバンドとして活躍していたクレイジーキャッツやザ・ドリフターズがコミックバンド化し、浅草で活躍していたコント55号などとともにテレビでコントを見せて人気を博した。一方、大阪では吉本新喜劇や松竹新喜劇出身のコメディアンや漫才師などが人気を得るなど、お笑い界で棲み分けのようなものができていたが、80年代の空前の漫才ブームによって、東西を取りまとめたお笑いがテレビ電波に乗って全国化していく。

 横山やすし・西川きよし、桂三枝(現・文枝)、明石家さんま、ダウンタウンといった超大物芸人たちが全国区の人気者になっていくなか、1990年代に入って吉本興業が東京進出し、NSC東京校からも続々と新人芸人たちが誕生しはじめ、いわゆる“よしもと一強”状態へと突入していくのである。対抗する勢力としては、ビートたけしがかつて所属していた太田プロ(ダチョウ倶楽部、松村邦洋など)や、“一発屋生産工場”と小島よしおが自虐的に呼んだサンミュージック(カンニング竹山、ダンディ坂野など)、ホリプロ(バナナマン、スピードワゴンなど)など、お笑い“の専業”ではない大手事務所もシーンをにぎわせていた。

 そんな状況に変化が見られるのは、2007年ころにはじまる有吉弘行(太田プロ)の再ブレイクからかもしれない。一時期アイドル的人気を誇るものの、あっという間に転落した有吉は、毒舌をウリに再ブレイクすると一気にお笑い界の頂点にのぼり詰め、多数のMC番組を持つようになった。その前後から共鳴するように、さまぁ~ず(ホリプロ)やネプチューン(ワタナベエンターテインメント)、くりぃむしちゅー(ナチュラルワン)といった“非・よしもと”系の芸人が、タレントとして幅広く活躍しはじめ、MCを務める番組などが目に付くようになる。

“東京芸人”の台頭を後押しした内村光良の存在

 さらに言えば、彼らの多くは、ダウンタウンと人気を二分したウッチャンナンチャン(マセキ芸能社)の内村光良の冠番組『内村プロデュース』(テレビ朝日系/2000~2005年)に出演していたことも大きい。同番組での芸人たちの成長がお笑いの“大阪一極化”を崩しはじめたとも言えるかもしれない。実際、現在最前線で活躍する多くの芸人たちは、内村への感謝の言葉を残しているし、当の内村自身もお笑い界の“MC王”となっている。

 また、昨今では『M‐1グランプリ』(テレビ朝日系)や『R‐1ぐらんぷり』(フジテレビ系)などのお笑いコンテストから若手がブレイクする流れが一般的になっているが、一方で、SNSの普及により、ピコ太郎やエグスプロージョンなどのようにYouTubeなどのネットから火が点くケースがあることも見逃せない。

 ここには、かつての芸人が、トーク技術や舞台での力量を磨いてのし上がっていったのに対して、さまざまな形でブレイクへの道が開ける時代となった現代ならではの状況がある。さらに、“一発屋”と呼ばれる芸人も「一発当てただけでも大したもの」と認められる風潮が広がり、一時のブームが過ぎても芸能界で生きていける環境が整ったことも起因している。大阪発以外のブレイク芸人が増えた背景のひとつには、そんな時代の流れが大きいだろう。

 さらに、NSCだけではなく、各芸能事務所がお笑い芸人の養成学校を併設しはじめていることも、要因のひとつにあげられる。ワタナベエンターテインメントのお笑い芸人養成所であるワタナベコメディスクールでは、“お笑い旋風を巻き起こす、活躍目覚ましいワタコメ卒業生に続け!”として、平野ノラやサンシャイン池崎、厚切りジェイソンなどを前面に押し出しており、“たけし、さんまに続け!”といったハードルの高さがないところも、現実的である。また、よしもとの手法でもあるが、SMAなどのように自社の劇場で若手に場数を踏ませ、現場からお笑いの時流を身をもって学ばせる事務所も増えつつある。

 今後もよしもとは、お笑い芸人の“虎の穴”として最強であり続けるだろうが、西高東低から“東西均衡”という時代の流れが進んできているのは間違いない。

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