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本多圭の「芸能ビジネス・ジャーナル」第1回

「旬が過ぎた芸人、テレビに出られない芸人をどう食わしていくかもテーマ」吉本興業代表取締役社長・大﨑洋氏

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新規事業、その狙いと展望

――タレントとの関係は意外と前近代的ですが、会社としてはかなり先進的なことを次々と打ち出しています。社長に就任してから、どんな事業を立ち上げられました?

大﨑 まず、沖縄国際映画祭と京都国際映画祭、47都道府県住みますプロジェクト(「あなたのに住みますプロジェクト」)、アジアにも住みますプロジェクト……。あと、なんやろな。ほとんど赤字やけどな(笑)。

――現段階で成功したかどうかの判断を下すのは時期尚早ですね。

大﨑 社長がやったやつがほとんど赤字というほうが、社員もやりやすいんじゃないですかね。これがぜんぶ当たっていたら、みんな黙ってしまう。陰で「社長が赤字ばかりつくって」とか言ってくれていたほうが、みんなもチャレンジしやすいし、まだ会社も潰れていないし、ええんちゃうかなと思っているんですけどね。

――その一方で、世間ではテレビ離れが進んでいます。吉本としては、今後どのような試みを考えているのでしょうか。たとえばAbemaTVAmazonNetflixなどのネット番組にも積極的に展開しています。

大﨑 吉本はそれこそ60数年間、テレビ局にぶら下がってやってきた会社です。テレビ局にぶら下がっている限りは食いっぱぐれもないし、お金をもらって日本中に芸人を宣伝してもらって、顔と名前が売れて、また劇場で回して日銭を稼いでという、すごく好循環で、すごくいい関係でやってきました。テレビというメディアに「バラエティ」というジャンルができて、漫才師の職場ができたのです。ただ昨今、いわゆるテレビ離れが進んできているなかで、ネットという新しいメディアができて、その新しいメディアに果たしてテレビの時代と同じようにバラエティというジャンルがあるのかないのか、なければどうつくっていけばいいのかを考えています。

 テレビに60数年間もお世話になって、これからもぶら下がっていこうと思いますが、新しいメディアでもチャレンジしておかないといけない。会社全体の芸人たちの死活問題ですから。その点では、会社を非上場にしたことで、いろいろとチャレンジしやすい状況にあります。なにが当たるかわからないので、とにかくバンバンかかわっていこうかなと思っております。

――古い考え方かもしれませんが、やはりテレビがメディアの王様で、ネットやVシネマ、舞台などはテレビに出られない人が活躍する二次的なフィールドという見方があります。大﨑さん自身は、メディアの関係性をどのように捉えていますか?

大﨑 僕としては、名前が売れて、テレビに出続けている人たちはいいんですが、テレビである程度活躍した後、年齢がいってお呼びがかからなくなった芸人たち、あるいは、なかなか売れなくてテレビに出られない芸人たちをどう食わしていくかが吉本という会社のテーマだと考えているんですね。

――なるほど。テレビに出られない芸人といえば、吉本はタレントなどを養成する吉本総合芸能学院(NSC)から多くの卒業生を出していますが、テレビで活躍できるのは一握り。彼らをどうするのかは考えていますか?

大﨑 縁があってウチの学校に来た子たちなので、実力の世界なのはもちろんだけど、なんとかしてあげたいという気持ちが強いです。実は、ついさっきも会議室で、テレビになかなか出られない芸人8人ぐらいを集めて、「何をしたい?」「こんなんしようか?」という会議を3時間、弁当を食いながらやっていたんです。その子たちに好きなことをさせて、それでなんとか食べていけるように、いまアイデアを練って頑張っているところです。「僕はもう43歳で子どもが2人いてるんですけど、先月の収入は3万円でした」みたいな芸人もたくさんいるんで、いろいろと話をして今日のところは全員納得して「次の会議はこうしましょう」と、前向きにやっていますよ。

――具体的には、彼らからどんな提案や意見があったんですか?

大﨑 いわゆる“漫才”ではそんなに面白くないんだけど、「僕は怪談話をすると日本一で、2年連続優勝してます」とか「アニソン(アニメソング)のDJをしたら、毎回1500~3000人集めます」とか「子どもに勉強を教えたらナンバーワンです」とか「バルーンアートができます」とか、そんなんがいっぱいいるんですよ。花月の演芸場だと、漫才が面白いか面白くないかの物差ししかないんですけど、小さい劇場でもネット上でも、彼らのスペースをつくれば何かしらの「場所」ができるので、そういうことをしようかといったことです。
(聞き手=本多圭/以下、後編に続く)

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