今回の『アナザーストーリーズ』の担当ディレクターは、民放でも活躍する東北新社の坂部康二。1973年生まれの坂部は、MANZAIブームを体感していない。

 「目線がクールだし、世代のギャップを逆手に取ってさえいるような気がします。リアルタイムで感じていなかった彼が担当したから、MANZAIブームの読み解きが現代性を持ったのだと思います」(河瀬)

あのブームは何だったのか

 河瀬との仕事はこれが初めて。2015年5月に坂部が「いつか一緒に仕事をしたい」と河瀬にFacebookでメッセージを送ったことがきっかけで、今回のタッグが実現した。

 「MANZAIブームがそうだったように、人と人が起こす化学反応が新しいものをつくっていく。今はSNSなどが普及して人とつながりやすい環境がありますが、実際に反応を起こすには、自分から動いてみることが大事なんだと改めて感じました。
 あのメッセージがなかったら、この番組も違う作り手で、また違った内容になっていたはず。非常に面白い素材なのでそれも見てみたいですが(笑)、そうですねえ、もし自分がディレクターとして作るとしたら、きっと自分が浴びたあの強烈な光にまず迫ろうとするでしょう。そして、その光を際立たせる影の部分に目を向けると思います」(河瀬)。

 当時の光を知らない坂部はどう捉えたのか。放送の最後の3分間、「あのMANZAIブームとは何だったのか」という問いに対する、今、振り返るからこそ見える答えが描かれている。(文中敬称略)

当時アイドル並みの人気を誇っていたザ・ぼんち。二人は今もなおステージに立ち、漫才を続けている。MANZAIブームの酸いも甘いも知る二人が今も人々を笑わせ続けている理由とは