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【社説】

沖縄全県投票 全国民が注視したい

 迷走していた沖縄県民投票はようやく、予定通り今月二十四日に全県で実施の運びとなった。安倍政権が推し進める辺野古新基地建設は是か非か-。沖縄の自己決定権の行方を全国民が注視したい。

 県民投票は新基地建設に伴う辺野古埋め立てを賛成、反対で問う形式で計画されたが、県議会は一月二十九日、「どちらでもない」を加える条例改正を行った。

 議会内の調整に反し野党自民党から造反者が出て、全会一致とならなかったのは残念だ。

 ただ、当初の二択では普天間飛行場返還も絡めた多様な意見が反映されないなどとして、投票不参加を表明していた宜野湾市、沖縄市など五市が方針転換。三割もの有権者が投票できない事態が回避されたことは歓迎したい。

 五市の市長は政権に近い関係にあるとされる。自民党国会議員が県内市町村の議員に投開票関連予算案の否決を促す資料を配っていたことも判明した。投票不参加は政権の意向に沿った判断だと批判が起きたのもうなずける。

 一方、投票実施を推進した玉城デニー知事、県政与党にも一部市町村の反発は予想できたのに対話不足で突き進んだ落ち度がある。

 条例改正は客観的必要性より政治的妥協の結果だ。市長が市民の投票権を奪えるかなど、法的検証も棚上げとなるがやむを得まい。

 条例制定を請求した市民グループ代表の若者が五市の投票参加を訴えハンガーストライキを決行。約六千五百筆の署名を集めたのも県議会を動かす契機になった。こうした思いは無駄にできない。

 この上で県民には、投開票まで新基地の必要性についていま一度考え、議論を深め、高い投票率で民意を示すよう望みたい。県には十分な判断材料の提供を望む。

 政権は昨年末来、土砂投入、新護岸の建設着手と辺野古で既成事実の積み重ねを図る。県の埋め立て承認撤回を巡っては再び法廷闘争が見込まれる。

 国策遂行に地方の意向は無関係か、住民に自己決定権はないのかがまさに問われている。三択で結果がぼやける側面はあろうが、ここで県民の意思を明らかにする意義はやはり大きい。

 知事選や国政選挙で新基地反対の民意は示されているのに、なぜまた県民投票なのか。沖縄への基地押しつけを容認してきたことが原因だと、この際全国民もきちんと理解すべきだ。投票の結果次第では、負担分散の在り方を真剣に考えてゆく必要がある。

 

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